9話.好きな人
「スグル、私好きな人ができた」
学校の休み時間。
俺の後ろの席にいる目黒に肩をつんつんされたので振り返ると、目黒にそう言われた。
あまりの突然の告白に、俺の頭は真っ白になっていただろう。
目黒に好きな人か…まじか。
「爆死爆死…でござる」
目黒の発言を耳にしていたのか、右の席にいる吉田がほくそ笑みながら呟いていた。
こいつ…この前のことはちゃんと和解したのに、なんて性格悪いやつなんだ。
「お、おお、そうか。そ、それはよかったな…」
「画像がある。見てみる?」
目黒が自分のスマホを操作して、俺に見せようとしてくる。
「…いや、いい」
「スグル?」
ぶっきらぼうに俺が答えてしまったせいか。
目黒は首を傾げていた。
首を傾げる姿もなんだか可愛く見える。
「怒ってるの?」
「別に怒ってはないが…」
「態度が冷たく見える」
「別に…お前の気にしすぎだろ」
「…わかった。じゃあ、吉田に見せる」
「ござぁ!?」
予想外の急展開だった。
吉田も目黒に急に話し掛けられたせいか、ビックリした反応を見せる。
まずい、このままだと目黒が吉田に好きな人を教えるのだろう。
別にまずいことはないのだが…なんか嫌な気分を覚えたのだ。
「そ、それなら俺が見る!」
間一髪のところで、俺は目黒からスマホを奪い取った。
画面に写っていたのは…明らかに人間ではなく二次元のキャラクターだった。
勇者みたいな格好しているキャラだな…。
「なんだこれ…アニメキャラ?」
「この前、アニメやってて見たときカッコ良かった」
なんだよそっちのことかよ…。
俺は思わず項垂れてしまった。
好きな人ができたって聞いたから、てっきり実在する人間のことだと思うだろ。
やっぱこの美少女様は何を考えているかわからない…。
「これのどこが好きなんだよ」
「わかんない」
「わかんないってお前な…」
「でも…ちょっとスグルに似てる」
「えっ」
目黒の好きなキャラ。そして、俺に似てるって言ってきたこと。
なんだか無駄に変な期待をしてきた。
も、もしかして、それは遠回しで俺のことを…。
「頼りなさそうなところが」
「ディスってんじゃねーか…」
その後、このアニメのことを俺は詳しくなった。
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