表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
絶対零度系のラブコメ  作者: もこもこケーキ
7/36

7話.風呂の順番

 

 目黒(めぐろ)の歓迎会も終わり、寮にいるメンバーは各々リビングでくつろいでいた。

 珍しく今日は誰も2階の部屋に戻っていないな。新しく寮に目黒(めぐろ)が入ったから、みんなもっと目黒(めぐろ)と関わりたいのだろうか。


「そういえば、目黒(めぐろ)に自己紹介とかしなくても大丈夫なんですか?」


 正直に気になったことを俺は質問してみた。

 食事中にそういう話題にならなかったから、いったいどうしたものかと思ったのだ。 

 

「ああ。初川(はつかわ)が帰ってくる前に、みんな自己紹介は済ませてあるよ」


 片桐(かたぎり)先輩が答えてくれた。

 片桐(かたぎり)先輩はリビングに置いてあるソファーで優雅に食後のコーヒーを飲んでいる。


「あー…なるほど」

「目黒ちゃんはまだ来たばかりだし、掃除の担当とか日用品のお買い物の当番は慣れてきてから任せることになったからね?」


 片桐(かたぎり)先輩に続いて、今度は冨田(とみた)先輩が喋ってきた。

 冨田(とみた)先輩は現在、目黒(めぐろ)秋元(あきもと)にボディタッチするなどいちゃついている。ここは百合か。

 掃除とか買い物の当番はまだ目黒(めぐろ)には任せないのね。

 それより、俺は一番気になることがあった。


「あの、冨田(とみた)先輩」

「うん?なぁに?」

「…風呂の順番はどうなったんですか?」


 俺のその質問に、ほんわかとしていた空気がピキッと音を立てるように緊張が走った。


「あー、それはね…」

「そうっすね…」


 冨田(とみた)先輩と後輩の秋元(あきもと)の何とも言えない微妙な反応に、俺は察した。


「やっぱ、また俺が一番最後なんすね…」


 これまでも風呂に入る順番は、秋元(あきもと)冨田(とみた)先輩→片桐(かたぎり)先輩→俺の順番だった。

 風呂の入る順番は大事だ。特に、一番最後は風呂掃除がセットでついてくるから。

 浴槽の水滴を取ったり、排水口の髪の毛を取ったりしないといけないのだ。

 ああ…今後もずっと俺が風呂掃除をするのか。


「…あの」

目黒(めぐろ)?」 

「お風呂の順番なら、私は最後でもいい」


 目黒(めぐろ)はそう主張してきた。

 普通なら早いタイミングで入りたいはずなのに、俺たちに気を遣ってるのだろうか…。


「えっ、目黒ちゃんいいの?」

「うん」

「目黒、お前は気を遣わなくてもな…」

「だって、スグルに残り湯を堪能されそうだから」

「おい…俺はそんな変態じゃねーよ」


 目黒(めぐろ)が最後でもいいと言った理由はこれだった。

 残り湯を堪能って…そんな変態じみたこと考えたことすらなかったわ!


「そんなことしないから安心しろ」

「怪しい」

「は?」

「たまに変な目で私を見てる」

「み、見てない見てない!」


 嫌な疑惑が出そうだった。

 俺が目黒(めぐろ)を変な目で見ている問題。

 そんな目で見たことないのに…冤罪すぎる。


「うわ…先輩まじっすか」

初川(はつかわ)、お前…」


 後輩の秋元(あきもと)片桐(かたぎり)先輩もなぜか俺に対して怪しい目を向けてくる。 

 おかしい…。なぜ目黒(めぐろ)の言い分がこんなにも信用されるのか!


「ち、違うぞ!俺は何も目黒(めぐろ)のことなんか意識してない!」


 結局、風呂の順番は今までと同じだった。

 唯一変わった点は、俺の前に目黒(めぐろ)が入ること。

 やっぱり残り湯を…なんて言われそうだけど、もうどうでもいいのさ。俺は風呂掃除を頑張るだけさ。

 

「はぁ…。やっぱ俺が風呂掃除担当か」


 リビングで一人、ぼーっとしながら呟く。

 もうみんな部屋に戻ったり、風呂に入っていたりしていた。

 この寮を管理している盛田(もりた)のおばちゃんも、今は外でタバコをふかしているだろう。

 俺も部屋に戻ってようかな…って思っていると、急にリビングの中に入ってくる人物がいた。


「……」

「お、おおおおおお前、な、なにを…!?」


 バスタオルを胸から膝上ぐらいの位置に巻いた状態の目黒(めぐろ)が、俺の前に立っていた。

 顔が紅潮し髪の毛も濡れているから、ちょうど風呂上がりらしい。

 い、いったいこの状況はどういうことだ。

 目の前に風呂上がりの同級生の女子がいるこの光景…。濡れた髪の毛や、赤くなった頬が色っぽい。

 あまりの刺激の強さに、俺の心臓はバクバクいっていた。

 

「…あった」


 目黒(めぐろ)はテーブルに置いてあったものを手にしていた。どうやら、自分のスマホを取りにきただけらしい。

 目黒(めぐろ)は俺の存在などほとんど気にせずに、また浴室のある脱衣場の方に戻って行った…。


「こんな生活、心臓に悪すぎる…」


 バスタオル姿とはいえ、目黒(めぐろ)の身体のラインをはっきりと見てしまい、俺はこの日よく眠れなかったのであった…。


最後まで読んでいただきありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ