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受験戦争

 本来ならばあり得ないはずの、予期せぬ敵の出現。


 にも関わらず、劫慈こうじに動揺の色は全く見られない。


 それどころか彼は、これもまた想定の範囲内とでも言うかのように、ジッ……と眼前の敵を見据える。


「試験開始時間前に国語や英語の科目が襲い掛かってくるような異常事態なんだ。……なら、更に前倒しで2日目の科目がこの場に出てきたとしても何ら不思議じゃないね」


「そ、そんな!?落ち着き払っている場合じゃないだろう!劫慈君は英語しか出来ないなら、今度こそ圧倒的に不利じゃないか!!」


 浪人生が激しく狼狽する。


 勉強してきたとはいえ、自分は文系の人間であり、理系は不得意としていた。


 ましてや、こんな異常な事態である以上、得意科目であったとしても到底十全を発揮出来るとは思えない。


 ここまで来て、万事休すかと思われたが……。


「へへっ、心配すんなよお兄さん!」


「し、しかし劫慈君!このままだと確実に僕らがコイツにやられちゃうよ!?」


 浪人生がそう叫ぶのと同時に、生物型の試験問題衆センチュリオンが2人のもとへと襲い掛かってくる――!!


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 絶体絶命と思われた……そのときである!!


 突如、一陣の風が吹き抜けたかと思うと、生物型の試験問題衆が瞬時に細切れになっていた。


 そして、旋風の先に佇んでいたのは白衣を着た一人の青年だった。



「死の解剖医、四季しき 疾風はやて……推参!!」



 四季、と名乗った青年の姿を見て、浪人生が驚きの声を上げる。


「は、はぅあ!?な、なんという戦場の死神たる風格を放っている人物なんだッ!!……でも、あれだけ瞬時に解剖して見せるだけの実力の持ち主なら、確かに生物の科目なんてお茶の子さいさいに違いないな……!!」


 そうしている間にも、死の解剖医たる青年は残りの試験問題衆センチュリオン達を瞬く間に解体していく。


 新たに出てきた数学型らしき試験問題衆達も、まだ控えていた智のコスプレ♡アイドル:ちえりをはじめとする劫慈の仲間達によって、駆逐されるのみとなっていた。


 そして、そんな彼らの奮戦ぶりが与えた影響は、当然の如く敵側だけではなかった。


「す、凄い……けど、皆に頼ってばかりじゃいられない!!――僕だって、やれば出来るんだぁ~~~ッ!!」


 劫慈達による快進撃に鼓舞されたのか、そのように雄叫びを上げながら、これまで及び腰だった浪人生が自身の身を顧みずに敵の軍勢へと突撃していく――!!


「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!」


 それを皮切りに、それまで逃げまどっていた大多数の受験生達も、死闘を繰り広げる凱慈や浪人生達を応援するかのように――あるいは、これまで受験戦争を勝ち抜くために鍛えてきた自分の実力を試すときだとばかりに、果敢に立ち向かう事を決意する。


「今まで僕は、受験戦争は一人で勝ち抜くものだと思い込んでいた。……だが、今は違う!横に仲間がいる事の頼もしさを噛み締めながら、明日も共に生きていくために!――試験問題衆(お前達)を、ここで倒すッ!!」


「名門大学行って、良い男ゲットするというウチの野望を食い止めるなんて、誰にも出来ないんだぞなもし!」


「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!緊張による睡眠不足ながらも、母ちゃんが深夜に作ってくれた夜食のおかげで元気いっぱいな俺の拳を喰らいやがれッ!!!!」


 劫慈達の的確かつ圧倒的な連撃、受験生達による怒涛の勢いと凄まじい物量に任せた猛威。


 このような彼らの猛攻撃は、人知を超えたはずの脅威である試験問題衆センチュリオン達をも鎧袖一触する事に成功していた――。



『ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!』



 受験生達による闘争が続く中、その最中にいる浪人生が息を切らしながら、劫慈へと呼びかける。


「劫慈君、君の口ぶりだと、元凶は別の場所にいるんだろう!?――だったら!ここは僕達に任せて、先に行ってくれ~~~!!」


 浪人生に続くように、敵に立ち向かっていた劫慈の仲間達や受験生達が、劫慈の顔を見て無言のまま強く頷く。


 試験問題衆センチュリオン達の数はまだまだ膨大であり、これらすべてを解答するにはまだまだ時間がかかる事は間違いない。


 そう判断した劫慈は、


「みんな、すまない……いや、恩に着るぜ!!」


 と答えながら、颯爽と駆け出していく――!!

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― 新着の感想 ―
[一言] これがホントの受験戦争、ってね(ウィンクばちこん)。
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