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"試験問題衆"

「――クククッ、これは傑作だな!ガキ共が盛大に恐れおののいてやがる!……まぁ、流石に俺が生み出した試験問題衆センチュリオンを前にしては、机を相手にシコシコお勉強してきただけの良い子ちゃん程度では敵うはずもないがなぁ!!」


 試験問題衆センチュリオン


 それは、文人ふみひとが『赤き教典』という魔導書によって生み出した、異形の魔物達のことである――!!


 文人は社会の底辺を這いつくばりながら人生の大半を過ごしてきたあまり、その魂は澱んだ瘴気が溜まる地獄の最下層にまで到達しようとしていた。


 そのままならば、何の指向性もないまま魂ごと痕跡も残さず地獄に呑み込まれて終わるだけの存在だったのだが、文人は小説投稿サイトと職場を追放された恨みから、強く『自分を認めなかった全世界への復讐』を渇望した結果、『赤き教典』という人の道を外れた外法を扱うための魔導書を手に入れたのである。


 ……しかし、『赤き教典』は如何に驚異的な魔導書とはいえ、文人は自身の身をこんな得体の知れない脅威に晒すつもりはなかったので、彼自身がそこまで強化されているわけではない。


 ならば、この試験問題衆センチュリオンと呼ばれる人ならざる者達を生み出した魔力はどのように調達したのか?


 その答えは、文人の背後で十字架に鎖で縛り付けられている一人の少女にあった。



「……お願い、です。もう、みんなに酷い事をするのは、やめて……!!」



 その少女はショートボブと端正な顔立ちをした少女であり、顔に浮かべた気弱な表情とは裏腹に肉感的な身体つきをしていた。


 美少女、と形容していい容姿には違いないが、普通の人間と違い彼女の羽からは黒い羽らしきモノが生えていた。


 彼女の名前は、春野はるの こより。


 強力な淫魔と人間の間に生まれたハーフの少女である。


 亡くなった母である大淫魔譲りの強大な魔力を有していたのだが、本人は他者との衝突を拒む心優しい性格であったことと、現代社会ではそれほど強大な力を使う必要がなかったことから、その能力はこれまで人目につくことはなかった。


 だが、1年前のある日のこと。


 彼女は自身と親しくなったある人物を助けるためにその能力を行使した結果、その膨大な魔力に目をつけた文人によって捕えられ、試験問題衆センチュリオンを生み出すための魔力を供給するための器として酷使されていた。


 こよりは衰弱しながらも、必死に文人へと懇願する。


「お願い、です……貴方が過去にどんな酷いことを周りの人にされたとしても、受験勉強のために頑張ってきたみんなを傷つけていい理由にはなりません……どうか、こんな恐ろしい真似はやめてください……!!」


 そんな彼女の必死な様子に何かを感じ取ったのか、文人は柔和な笑みを浮かべると、





 表情を全く変えることなく、盛大に彼女の頬を叩いていた――。





 パァン……!!という音が辺りに響き渡る。


 突然の暴力に言葉も出ず、呆然としたこよりの横顔を見つめながら、先程とは打って変わった冷酷な眼差しで文人は吐き捨てるように呟く。


「……ふん、貴様もその出自から周囲の人間達に奇異なる目で見られ迫害されてきたくせに、何を良い子ちゃん面してやがる?お前も自分を見下す周囲の人間が憎くて仕方なかったはずだろう?俺がそんなお前の力をもとにその意思を実行してやってるんだ。……何を躊躇う必要がある?」


「……ち、違う。私は……!」


 唇を震わせながら、弱々しく否定の言葉を紡ぐこより。


 だが、彼女の脳裏に浮かんだのは、未熟なあまり力のコントロールが出来ず、無意識のまま周囲の人間の活力を奪って昏睡状態にしてしまい、『呪いの子』として周りから迫害され人と距離を置くようになった過去の記憶だった。


 辛い過去の記憶がフラッシュバックとして鮮明に脳裏に浮かび上がり、衰弱したこよりの精神を更に追いつめる。


 そして、こよりが更に負の感情を溜め込むほどに、『赤き教典』によって生み出された十字架型の魔導具が、彼女から生み出された大量の魔力を強制的に吸い上げる形となっていた。


 そんなこよりが苦しむ姿を見ながら、対照的に愉悦の笑みを見せる文人。


「クククッ!淫魔の出来損ないのような貴様でも少しは役に立つようだな!!俺は愛らしい少年のオ○ンチンにしか興味ないが、この調子で俺の計画が上手くいけば、手慰み程度に俺みずからの手によって貴様の純潔を散らしてやっても良いんだぞ?光栄に思うが良い!!……あぁ、淫魔の娘だから大人しい顔をして既に経験済みか?」


 下卑た笑みを浮かべながら、嘲弄するかのように文人が言葉を続ける。


「まぁ、俺もお前自身に大して興味はないから、魔力を生み出してくれれば別にビッチだろうが構わんぞ。……だからお前はその調子で、人に使い潰されるだけの生き方で無様に寿命を終えてくれや!」


 そうこよりに侮蔑の言葉を投げかけてから、もう興味は失ったといわんばかりに彼女へ背を向けて高らかに両手を天へと広げる。


「こんな俺の計画の意図も読めないような愚図とは違い、俺はこれまでの人生を払拭するかのように更なる高みへと至るんだ!!……その果てに待っているのは、俺を見下してきた世間の底辺共が全て一掃された清浄なる世界と、一切の穢れもない男の子達の綺麗な裸体、そしてそれらを俺が好きにして構わないという権利のみ……!!ペ、ペロペロペロペロペロッ!!」


 そんな狂人の戯言を間近で聞かされて絶望しながらも、自身の心を奮い立たせてこよりは一人逡巡する。


(どういう、事なの……?この人は、生み出したあの怪物達に命令して、みんなの命を奪うのが目的だった訳じゃないの?……駄目、私には分からないよ……!!)


 心が不安で押しつぶされそうになる。


 挫けてはいけない、と思いながらも、こよりの胸中に浮かんだのは別の言葉だった。


(ここは怖いよ……助けて、劫慈こうじ君……!! )

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― 新着の感想 ―
[一言] こ……こいつは確かに問題作ですね……。 センチュリオン……赤い経典……ギリッギリッですねー。
[一言] 試験問題衆wwww いつもながらネーミングが秀逸wwww >俺は愛らしい少年のオ○ンチンにしか興味ないが サラッと爆弾発言wwww >ペ、ペロペロペロペロペロッ!! 笑い方気持ち悪ッ!!…
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