会場到着
1月16日・共通テスト会場
現在この場所には、受験戦争を勝ち抜くために多くの受験達が集結していた。
「あ~、本当緊張する……数学未だに自信ないんだよな~……」
「そんなことないって!亮太はあれだけ勉強したんだから、絶対に私と一緒の大学に行けるはずだよ!!」
この2人の学生だけでなく、内外問わず会場は鬼気迫る表情をした受験生達でひしめき合っていた。
そんな緊張した様子の彼ら彼女らを、試験会場の屋上から睥睨する一つの影があった。
その人物は40代くらいと思われる一人の冴えない中年男性だった。
彼の名前は、這瑠 文人。
文人はこれまで塾講師でバイトをする傍ら、小説投稿サイトで活動していた人物であった。
だが文人は、普段の実生活での鬱屈を晴らすかのように、小説投稿サイトで規約違反な行為を繰り返したり、塾の女生徒にセクハラまがいの言動を繰り返した結果、ついに小説投稿サイトと職場の双方から追放される羽目になったのである。
――ゆえに文人はサイトだけではなく、自分を認めず否定してきたこの世界の全てを憎む。
「クククッ、たかが受験程度で人生の一大事のように一喜一憂している糞ガキ共め……お前らはしょうもない存在だが、この俺の偉大なる計画のための踏み台程度には利用してやるぞ……!!」
この共通テスト会場の水面下で、這瑠 文人という狂人によるおぞましい野望が進行しようとしていた――!!
共通テスト開始30分前。
受験生達が今か今かと待ち受けている中、異変は突如起こった。
あろうことか、会場内に突如異形のモノ達が出現したのだ。
その異形達はみな人型をしているモノの顔はなく、全身には何か文章のようなモノが浮き上がっていた。
「ジョボボボボッ……!!」
「イ~~~ングリッシュッシュ!」
耳障りな哄笑を上げながら、異形のモノ達がジリジリ……!と受験生達へとにじり寄ってくる――!!
「な、何だコイツ等……!?身体に試験問題みたいなのが書かれているぞ?」
「も、もしかして、これが今年の共通テスト試験なのかよ!?」
「待ってよ!そんなはずがない!!だって、最初は『地理歴史・公民』の時間のはずよ!?……なのにコイツ等の中に、昼からの国語や英語にしか思えない問題が書かれている奴も混じってる!何より、まだ、試験開始時間にすらなっていないのに、こんな事が起こっているなんて絶対に異常よ!!」
受験生達の間に、とてつもない混乱が広がる。
だが、彼らは突然の乱入者を相手にどのように対処すれば良いのか分からない。
そう悩んでいる間にも、危機は着実に訪れようとしていた――。