正義?
今私が立たされている状況を誰かに説明していただきたい。昨日、父から理事長の娘だと聞かされたばかりなのに、実際学校に来て見ると理事長の娘だと言う人がいる。
「もしもしお父様。昨日の話は本当ですよね。私に姉妹はおりませんよね。」
「急にどうしたんだ?もちろんいないぞ。」
嘘…
「ごきげんよう。美空さん」
初めて声をかけられた。近くで見ても美しい…
彼女、藤堂麗奈さんは何かを考えたあと美空さんに話しかけた!
まずい、言ってなかった。彼女は人から話しかけられるのが苦手なんだ!
俺はどうすれば…
「は?何、私に話しかけてるの?何様のつもり?」
「何か揉めているようでしたので。」
「あんたには関係ないでしょ。」
「さっきから、何を威張っているのかしら。」
「あ、あんた、誰に向かっていってるのよ!」
「あなたこそ。」
「私は理事長の娘よ。あなたなんて…」
「簡単に辞めさせられる?なら、やってみては?」
「っ!」
「あまり嘘はいけませんよ。」
「あなた…もしかして!」
藤堂麗奈は微笑み、その場をさった。そして二度と美空鈴をみることはなかった。
「美空さん学校やめたんだって。」
「理事長の娘じゃなかったんでしょう?」
「藤堂さんが理事長の娘で、美空さんを辞めさせたって話も…」
その日から、藤堂さんの噂でもちきりになった。藤堂さん本人はいつもと変わらず、周囲と仲がいいみたいで少しホッとした。そして、藤堂さんは学校を守った正義の女神と呼ばれるようになったのだ。
その日は風の気持ちいい春のこと。俺は田んぼ道を走っていた。とても急いでいた。前など見ていなかった。ぶつかった時、甘い桃の香りがした。その時初めて見たあなたの姿はとても美しかった…