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初めての魔法少女? その2

八雨:「はぁはぁ...

逃げるのに精一杯で何も思いつかない...」


糸をかわしつつ逃げまわっているけど、何度も追いつかれてそのたびにぎりぎりでかわしてきた。

また今度追いつかれたら次はかわせる自信はない。

このままいけば確実に捕まるだろう...


八雨:「あれ?そういえばなんで直線距離でこっちに向かってこないんだろう?」

ふと素朴な疑問が思い浮かぶ。


さっきから微妙に寄り道しつつこちらに向かってきている。

思えば今まで真っ直ぐ突っ込んでくれば私を捕らえられた場面はあった。

遊ばれているんだろうか?

下卑た笑みを浮かべる蜘蛛の怪物を見るとそんな気がしてくる...


八雨:「まさか、そういうことなのか?」


一つ思い当たることがある。

ちょっとした年の功かな...


八雨:「どこかに切れ味の良さそうなものは...

あれは?」


草を刈るための鎌が地面に刺さっている。

多分片付けるの忘れたんだと思うけど、今は好都合だ。


八雨:「まずは砂を振りまく!」


そうすると糸に砂がついていく。

よく目を凝らしてみる。


八雨:「やっぱりあった!

砂がくっつかない糸がある!

これを切断っと!」


その後もくっつかない糸を見つけて切っていった。

どれほど続けただろうか、徐々に蜘蛛の怪物の足が遅くなっていき、しまいには動かなくなった。


八雨:「作戦成功!」


蜘蛛の怪物は自分の張った糸にがんじがらめになって完全に身動きがとれない状況だ。

予想通り、この巣は粘着力のある糸と足場にするために粘着力のない糸があったんだ。

あの怪物は粘着力のある糸に触れないように最適なルート辿って追っていた。

けれど、私が次々と足場になる糸を切っていき構造が変化したのだ。

目で糸を追っているわけでは無いからこの変化に対応できない怪物は自らの巣にからめとられる結果となったんだ。


八雨:「動きは封じたけどどうすれば良いんだろう...」


ふと公園を眺めると野球少年が持っているバットが目に入る。


八雨:「やるしかないかぁ...」


バッドを片手に怪物に近づく。


それからバッドで怪物を殴打しまくった。

身動きの取れない相手にバッドを振りかざすのは気が引けたけど、仕方ないよね。

もはやどっちが悪党か分からない状況だったけど、何度が殴ると突然光初めて糸と一緒に光の粒子となり消えていく。


八雨:「これって初勝利?」


その場にへたり込んでしまう。

でもなんだろう、久々の達成感を感じる。


雫:「もしかして八雨ちゃんが倒したの?」

息を切らしながら走ってきたのだろうか雫ちゃんが現れる。






雫:「え?八雨ちゃん、変身せずに倒したの?!」


八雨:「うん、変身のやり方が分からなくて...」


雫:「すごい気配だったから相当な大物だったはずだけど、すごいよ八雨ちゃん!

それにすごいもの知りなんだね。

蜘蛛の巣のことなんて私は全然知らなかった...」


八雨:「たまたま知ってただけだよ。

うん、本当に偶然に。」


雫:「偶然でも良かった、八雨ちゃんが無事で。

そうだ一応変身の仕方を教えておくね...

今回みたいなことがあればせめて逃げられるようにしないとね。」


結構恥ずかしいセリフやポーズを取る感じですかね?

中身がおじさんだから精神的にキツイです。


雫:「まずペンダントを持って胸のあたりに持ってくるの。

そして変身したいと念じるだけ。

これで変身できるよ。」


八雨:「え?それだけ?」


あんなに苦労したの、最近の魔法少女の変身も昔と違って最適化されているのかな?


雫:「とりあえず、やってみてよ。」


八雨:「うん、わかった。」


言われたとおりにペンダントを握って念じてみる。

あの怪物に襲われるまでは魔法少女になりたいなんてみじんも思わなかったんだけど、自衛のためなら仕方ない。

それになんだろう、今は少し魔法少女として戦うのは悪くないような気がしている。

あんな達成感を味わったのは何十年ぶりだろうか、心からガッツポーズを取るような熱い思いはなつかしい。


雫:「きれい...」


目を開けるとそこには私をじっと見つめる雫ちゃんがいた。

そして自分の体を見回してみる。

何だろう白いドレスに白い髪の毛、日光が雪に反射して光って見えるそんな白色だ。


八雨:「あれ?また時間が止まってる。」


雫:「変身すると時間が止まるんだよ。」


なんて便利な能力でしょうか?

納期が差し迫った時にぜひとも使わせていただきたい。


八雨:「どうすれば変身をとけるの?」

なんか恥ずかしくなってきたので早く変身を解きたい...


雫:「その前に魔法を使ってみよ。

なんか呪文が浮かんでこない?

私の場合はアクアなんとかって感じだけど。」


八雨:「さっぱり何も浮かんできません...」


雫:「え?どうしてだろう...

みんな何かしら思いつくはずなのに...」


もしかしたら、ここらへんが定年魔法少女の限界なのかもしれない...


雫:「とりあえず、この状態なら身体能力があがっているから魔法が使えなくても逃げることはできるはずだよ。

変身解除は変身したとき同じ要領で変身を解くように念じてみて。」


言われた通りに念じてみると元の姿にもどるけど、時間は止まったままだ...


八雨:「あれ?時間がもどらない?

どうして?」


雫:「八雨ちゃん。

逃げて!」


雫ちゃんの視線の先にはフードを被った黒い影が...

なんだろう今まで見てきた怪物とは違い、人間の形に近い。

なのになんだろうこの重圧感は...


雫:「私が時間を稼ぐから、八雨ちゃんは逃げて!

あれは勝てない相手だから...」


少女を見捨てて逃げるという選択肢が突き付けられる...

一体どうする、私!

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