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初めての魔法少女? その1

色々と衝撃的な展開におじさん頭がついていきません...


雫:「いったんベンチに座って落ち着いて話す?」


悲報、定年後のおじさん女子小学生に気を使われる...


八雨:「う、うん...」

彼女の提案に乗って一旦落ち着こう...


八雨:「どっこい正一郎っと。」


つい癖でじじ臭いことを言ってしまった...

これはバレたか?

おそるおそる雫ちゃんの方を見ると案の定訝しむような表情だ。


雫:「八雨ちゃんってもしかして...」


駄目だやっぱりバレたかも?


雫:「この町に引っ越してきたばかり?」


八雨:「うん、ほんの数日前に引っ越してきたんだ。」


雫:「やっぱり、八雨ちゃん見たことがないなって思ってたんだ。

だから私に...」

急に不安そうな表情を浮かべる。


八雨:「どうしたの?」


雫:「ううん、何でもないよ。

そうだ、魔法少女の話の続きをしよ。」


雫:「さっきの怪物は止まった時間の中で人を襲うの。」


八雨:「もしかして人を食べるの?!」


雫:「う~ん直接は食べないよ。

代わりにやる気とか夢を食べちゃうの。

例えばピアニストになりたい人がピアノを見るだけで嫌気がするようになったりするんだ...」


たしかにそんな事件が頻発すればさすがに警察が動き出すだろう...

少なくとも不思議生物に襲われて人が食べられましたなんてニュースは聞いたことはない。


雫:「それでそんな怪物たちを止めることができるのが私たち魔法少女なの。

八雨ちゃんが持っているそのペンダントが魔法少女の証なの。」


八雨:「これは落とし物なんだけど、拾っただけで魔法少女にされたの?」


なんだろう、前に新手の詐欺で見たような...

確か食べ物を送って、後で法外な額の請求をするあれのような...


雫:「魔法少女を辞めるには二つの方法があってね、一つはペンダントを壊すこと。

そして二つ目は誰かに魔法少女を引き継がせることだよ。

多分、八雨ちゃんは無意識に魔法少女を引き継いだんだよ。」


あの天使のような少女、やっていることはまるで悪魔だな。

悪魔は天使の顔をして現れるとはよく言ったものだ。


八雨:「それじゃあ、このペンダントを壊せば...」


雫:「ちょっと待って、それはやめた方が良いよ。

ペンダントが壊れるとペンダントに込められた夢ややる気が無くなっちゃうんだ。」


八雨:「夢とかやる気とか特に無いと思うけど...」


定年後特に目的もなく生きていくつもりだった私に夢ややる気なんてそもそもないはずだ。

夢ややる気を持つにはもう全てが遅すぎたんだ...


雫:「今は分からなくてもきっと後で後悔するかもしれないから壊すのは絶対にダメ!

誰か引き継いでくれる人を探そうよ!」


八雨:「でも誰かに押し付けるのか...

あまり気が進まないような...

そうだ、魔法少女になることで良いことってあるの?」


今まで聞いた話では人知れず戦わされてとくにメリットというメリットはなさそうな感じだ。

けれどメリットがあるなら押し付けるこちらとしても気が楽になる。


雫:「う~ん私は誰かが襲われて無気力になるのはもう嫌なんだ。

だから戦ってきたけど、自分のために良いことは特にないかも...」

思いつめた表情をしながらつぶやく。


なんてしっかりしたお子さんだ...

こんな子がいるのに誰かに押し付けてドロップアウトはしづらいよな。

でもこのままじゃ年金手続きができないよな...

そもそもおじさんが魔法少女なんてイレギュラーな自体は即刻是正すべきだろう。

うん、自分のためじゃなく世界の法則を乱さない慎重な判断だ。


八雨:「やっぱり私が魔法少女なんて無理だよ。」


雫:「私も代わりの魔法少女探しに協力するよ。」

少し寂しそうな顔を見せたと思うとすぐに切り替える。


八雨:「そんな、そこまでしてもらうなんて悪いよ...」


自分のことなのに何から何まで頼るわけにはいかない。

もし自分が他人任せにできる人間ならこの年まで仕事だけの人間になりはしなかっただろう。


雫:「うん、わかったよ。

でもなにか困ったらまた声をかけてね。

それに私がいたらかえって邪魔しちゃうもんね...」


八雨:「ん?どうしたの?」


雫:「なんでもないよ。

とにかく何かあったらまた声をかけてね。」

そう言って彼女は帰路についたみたいだ。


八雨:「最近の子はしっかりしてるなぁ。

まぁ色々あったけど解決策は見つかったしそろそろ私も帰ろうかな。」





八雨:「うう、さすがに良心が痛む...」


色々な騒動があった次の日、公園に向かい代わりの魔法少女候補を探すといういかがわしい勧誘活動に勤しんでいる。

自分で解決すると意気込んでいたがさっそく暗礁に乗り上げている。

そもそも子供に声をかけること自体、罪悪感を感じるのに、見方によっては騙すような真似をして子供に嫌な役目を押し付けるのだから気が進まないのも無理はない。


八雨:「あ、あの!」

思い切って子供たちに話しかける。


八雨:「あれ、また止まってる?!」


辺りを見回す、どうやら怪物はいないみたいだ。

まさか前回のように上からと思って上空を見てみると...


八雨:「八本足のおじさん?」


足が八本生えたおじさんが空を歩いている。

同じシニア世代として空を歩くおじさんに敬意を払いつつもう一度よく見てみると何か光るものが見える。


八雨:「あれは?糸?」


良く見るとそこら中に糸が張り巡らされている。

ちょっと様子見に石を投げてみると、くっついたまま外れない。

もしかしてあのおじさんは蜘蛛なのかな?

もう一度おじさんの方に目を向けると、ばっちりこっちを見ている。


蜘蛛:「みぃつけた。」


そうだ、蜘蛛は確か巣に虫がぶつかった振動を感知できるとかそんな能力があったような。


八雨:「ひ!」


すごい勢いで蜘蛛が空中を走りこちらに向かってくる。

逃げようにも糸に引っかからないようにかわして逃げているから徐々に距離を詰められてしまう。


八雨:「やっぱりもう駄目だ...」


捕まったら夢ややる気を奪われるらしいけど、自分にはそんなものは無いしもういいかな...


雫:「う~ん私は誰かが襲われて無気力になるのはもう嫌なんだ。」


ふとあの時の雫ちゃんの顔が思い浮かぶ。

きっと悲しむだろうな...

あの子の性格なら助けられなかったこと自体を後悔させてしまうかもしれない。


八雨:「情けないぞ、八雲!

あの日の残業に比べたらこの程度で心を折ってどうする!」


向かってきた蜘蛛を寸でのところでかわし、逃げる。

なにかあるはずだ、無くても見つけるしかないんだ!

納期を前に何度絶望してもあきらめずに解決策を見つけてきたじゃないか!


八雨:「団塊世代の底力を見せてやる!」

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