04 ナーリーという名の少女
岩の中から出てきた少女もとい女神様は目が合うなり誰を助けて欲しいか尋ねてきた。さすが女神様。
というか自分で言っていてあれだが俺自身本当に来てくれるなんて思ってなかったし来てくれるとしても女神様って言うぐらいだからもっと大人っぽい感じなのだと思っていたが、実際に出てきたのはとても大人とは思えない感じの少女で青髪ショートカット、蒼目の同い年ぐらいな子。なんか期待してたのと違う。いや、そんな罰当たりな事考えちゃダメだ。せっかく来てくれたんだから。早くお爺さんを助けて貰わないと。
「女神様、お願いします。お爺さんを助けて下さい!」
「訂正と疑問がいくつかあるが聞いてもいいか?」
見た目通りの可愛い声で女神様が質問してきた。言い方は可愛くないが。それにしても質問されるなんて思ってもなかったのでちゃんと答えられるか分からないが失礼の無いように答えよう。
「大丈夫ですよ」
「では、まず訂正から。私は女神などではない。ただここで封印されてただけだ」
「・・・・・・はい?」
「だから、私は女神ではない」
いやいやいやいや、ちょっと待ってくれ。初っ端から意味不明な訂正が来たぞ。女神様じゃないってどういう事だよ。ていうか本当に女神様じゃないならなんで封印されてんだよ。
あれ、俺これダメな封印解いたやつかな?やっちゃったパターンなやつかな?
いや、もう知らねー。どうでもいいや。とりあえずお爺さんが助かるならなんでもいい。
「女神様じゃないんですね」
「納得したか? 続いて疑問を解くために質問をいくつかする
まず今はいつで、ここはどこだ? あと、敬語じゃなくていいぞ。見た感じ同い年ぐらいだからな」
「そうですか。じゃあタメ語で。えっと質問だよね。いつなのかはちょっと分かんない。場所は多分君が封印された場所と変わってないはず」
「そうか。じゃあ次のの質問だ。私に助けて欲しい人の名前と特徴を言ってくれ」
「助けて欲しいのはお爺さんで魔王軍に捕まってる。身長は多分君と一緒ぐらいでヒゲが長い白髪の人だ。名前は・・・・・・」
あれ? 名前何だっけ? そう言えば俺聞いてないや。自己紹介ぐらいしとくんだった。しょうがないな。
「名前分かんない」
「は?」
「いやだから名前は分かんない」
「・・・・・・お前は名前も分からない人の為にそんな手になるまでこの剣を抜いていたのか? 意味がわからない」
「む?いいだろ、別に。それより名前わかんないと不味いのかよ?」
「いや、そんなことはない、個人的な興味で知りたかっただけだ。特徴さえ分かればどうにかなる。ただ名前の分からない人のことにそんなに必死になるやつを私は他に知らないからな」
確かに一理ある。普通は名前も知らない奴のためにこんなに頑張らないからな。 じゃあなんで俺はこんなにお爺さんを助けたいんだ? まあそんなことも気にならないらいにお爺さんのことを思ってたって訳だ。
なんかこれだけ聞くと俺とお爺さんが、いけない関係みたいだな。断じて違うけど。
「それでどうやって助けてくれるんだよ。なんか特別な力でヒュンってやるのか?」
「いや、私にそんな力はない。私はこう見えて武闘派だからな。剣を振るうことしか出来ない」
「へー、なるほどな」
「なあ、君の名前何ていうんだ? ちなみに俺の名前は井田友也な。気軽に友也って読んでくれ」
「唐突に何だい君は。それに変な名前だな。まあ名乗られたからには名乗っておこう。私の名前はナーリー・リール。呼び方は君の好きなようにしてくれ」
「あっ、そう?じゃあナーリーで。ていうか名前で呼んでくれないのね」
「それでは自己紹介も終わった事だし、そろそろお爺さんを助けに行くとしようか。お爺さんはどこにいるのかな?」
「・・・・・・多分あの塔だと思う」
俺はナーリーの後ろ、つまり岩があった場所の反対側には100mを軽く超える塔を指さしながら答える。
実を言うとあの塔、俺がこの世界に来た時からずっと見えていた。この町の家の多くが2階建てなので町のどこからでも見るとこができる。しかし、俺は今初めてあの塔を認識している。見えていたのに今までそこに無いものとして扱っていた。まるで何かに妨害されてたみたいに。
「──あの塔、魔法で守られてるな」
「え?今、魔法で守られてるって言ったのか?」
「ああ、確かに言ったぞ。あの塔には気配遮断の魔法がかかっている。つまり普通のやつにはあの塔は見えてもあの塔を認識することは出来ない」
なるほど。それなら俺が気に止めなかったことに納得がいく。だけど、この世界で初めて見る魔法が気配遮断とか地味すぎませんかね。
しかし、納得がいくのと同時にまた疑問が一つ浮かぶ。
「何で今俺はその魔法にかかってないんだ?」
「それは私が近くにいるからだろう。私にはこういう下級な魔法は効かないからな。君は私と近くにいるから魔法に掛かりにくくなっているんだろう」
「へー、お前って、凄いんだな」
俺が褒めるとそうだろうと言いたげにナーリーが腰に手を当てながらドヤ顔をしてきた。可愛い。
「では、必要な情報も揃ったことだし今度こそ助けに行くとしよう」
「なあ、それって俺もついて行っていいのか?」
「構わんが君、戦えるのか?」
「いや、だけどじっとなんかしていられない。それにこの剣を持ってく」
俺はさっきまで全力で、抜こうとしていた剣を持ちながら言う。この剣、岩が砕けた時にそのまま抜けたのだ。この剣があれば俺も戦えそうな気になる。そんな気にさせてくれる剣だ。さっきまであんなに怖かったのに、この剣と女神もといナーリーさえいれば何も怖く感じない気がする。
「なるほど、足でまといにはなるなよ。何かあっても助けてやらないからな」
「おう! よろしくな」