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03 女神降臨

 あれからどれぐらいの時間が経ったんだろうか・・・

 かなりの時間が経ったのだろう、日はもう落ちていて外は暗くなっている。

 明日にはお爺さんは殺されてしまう。それなのに俺はお爺さんが連れていかれる時、何も出来なかった。いや、何も出来るはずがない。俺はただの高校生だ。それ以上でも以下でもない。

 俺はこれからかどうすればいい?

 助けに行くか?でもどうやって助けるんだ、あいつの声を今思い出すだけでも足が震えてくる。こんなんじゃ助けに行ったところで殺されるのがオチだ。助けることは出来ない

 じゃあ逃げるか?どこに?それ以前にお爺さんを置いて逃げるなんて出来ない。

 ・・・・・・俺は何も出来ないのか?逃げことも、助けることも


 クソ!! いや、諦めるな。また奪われてたまるか。何か手はあるはずだ。俺がこの世界に来た意味を考えろ。何か・・・・・・

 ・・・そうだ、あの剣だ、あの剣さえ抜ければお爺さんを助けられるかもしれない。

 でも、さっきあの剣は抜けなかったじゃないか。・・・いや考えてたって始まらない。今なら誰も見てないだろう。やるしかない!


 ───────────────────────


 薄暗い部屋に男が2人。

 片方の男は体がボロボロになっている。自慢の白い髭は赤く染まり、床には赤いシミがたくさん飛び散っている。


「明日、殺される気分はどうだ?」


「別に何とも思ってないわ。それより家族の敵が目の前にいるのにそいつを殺せないことにとても気分を悪くしとる」


「つまらんな。もっと怯えてくれるものだと思ったんだが。怯えるどころか威嚇してくるとわ。まあいい。それより早く剣を抜こうとしたやつの居場所を吐け。こっちにも都合があるんだ」


 そういいながら男は、お爺さんの前に屈む。お爺さんは体中を叩かれ、蹴られながら拷問されている。お爺さんの腕と足の指の爪はもうない。骨も何本か折られている。今も体中に痛みが走っていていまにも泣き叫びそうになる。しかし、それはお爺さんのプライドが許さない。決してこの男には負けない、家族の敵であるこいつだけには。


「何をそんなに庇う。痛いだろ、苦しいだろ、早く楽になりたいだろ。だったら早く吐けよ!!」


 男は次第に声を大きくしながら言う。最後にはこの狭い拷問部屋が揺れると錯覚するぐらいの声で。


「何をそんなに焦っているんじゃ?あんなのただの伝説じゃろ」


「うるさい!! いいからさっさと言え」


 そうしないと俺が・・・

 そんなことを口にしながら男はお爺さんを蹴り飛ばす。

 肋の骨が何本か折れた気がする。呼吸が苦しくなりだし、意識が遠のいていく。


「うぐっ・・・・・・少年、頑張って逃げてくれよ・・・」


「キサマー!!」


 お爺さんの声が聞こえてしまったのか男の拷問は更にエスカレートしながら朝まで続いたがついにお爺さんが喋ることは無かった。


 ───────────────────────


「ついた・・・・・・この剣を」


 息を切らしながら俺は剣の前に立つ。この剣さえあればお爺さんを助ける事が出来る。あとは俺にこの剣が抜けるかどうか


「抜けるかどうかじゃなく抜くしかないんだよな・・・・・・よし!!」


 








 ──あれから4時間余りが経過した。手の平の皮はもうずるずるに剥けて手から剣に血が流れている。握力ももうほとんどない。今にも倒れそうな体を何とか気力でもたせている。

 自分には抜けないのではないかと何度も思った。けれどここで諦めてはダメだとその度に気を引き締め直す。しかしいくら気持ちが強くても体に限界はくるし、もうとうに体の限界は超えている。

 俺はついに力尽きて岩に倒れこんだ。そして弱音を言うように弱々しく願いを言う。女神なんていないと分かってるがすがらずにはいられない。このままじゃ自分の気持ちが折れてしまう。


「女神様、もしも本当にいるなら聞いてほしい。お爺さんを助けてやってくれ。お爺さんが助かるなら俺はどうなったっていい。頼むよ・・・助けてくれよ!!・・・だってあんまりじゃないか、家族が殺さて、それでも俺にあんなに優しくしてくれて。それなのにまたお爺さんから奪うのか。俺はあいつらを倒したい。女神様いるなら出てきて俺に力を貸してくれ!」


 そう言い終わると同時に、岩からピキっという音がした。数歩下がって岩を見てみるとヒビが入っていることに気づいた。そして気づいたその次の瞬間岩が一瞬で砕け散り中から少女が現れた。


「嘘だろ・・・マジで来てくれた」


 そして岩の中から出てきた少女は俺に向かって静かにけれど力強く俺の目を見て口を開く


「ねえ、君。君は私に誰を助けて欲しい?」








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