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02 残酷な世界

「さあ、入ってくれ」


「お邪魔します」


 靴は脱がないで玄関を入ってかいくお爺さんにならって俺も脱がないで入るが靴のまま家に入るのはちょっと新鮮だった


「腹すいてるか?ちょっとそこに座って待っておってくれ。今なんか出すから」


「あ、ありがとうございます」


 俺はお爺さんに言われた通り席について部屋を見渡した。

 決して狭くはなく大人5人は余裕で暮らせるぐらいの大きめの家だけど、見た感じ暮らしてるのはお爺さんは一人で暮らしてるみたいだ。家族とかいないのかな?


「こんなのしかないが温まるぞ」


 お爺さんは木の皿にシチュー?をよそって持ってきてくれた。


「美味そー。いただきます」


「どうだ?上手いか」


「・・・・・・めっちゃくちゃ美味しいです」


「そうだろう、そうだろう。いっぱい食え」


 お世辞なんかじゃ無くて本当に美味しい。シチューよりもコクがあるしなんと言ってもこの肉がいい味を出してる。あっちの世界で店を出したら行列が絶えない店になるな。元の世界に戻った時のために今度作り方を教わろう。そんなことを考えながら食べていたら、ふとさっきの疑問を思い出し聞いてみることにした。


「お爺さんはここに一人で暮らしてるんですか?」


「今は一人で暮らしてるよ。前までは家族と一緒に住んでたんじゃがな・・・・・・・・・殺されたんじゃよ、魔王軍によってな」


  一瞬何を言ってるのか理解出来なかった。

 殺した、殺されたとは元の世界ではテレビや漫画でよく聞いた言葉だけどこの場でのこの言葉は重く初めて聞いた言葉のように感じた。お爺さんは続けて重い表情で話を続ける。


「ただ殺されたんじゃない。妻は釘で体中を刺されて蜂の巣にされ、娘は裸にされながら町中を引きまわしたあと衰弱死するまで磔にされた。娘の婚約者も殺された。目の前で娘が死ぬところを見せさせられ続け最後には生きたまま腹を切り開かれて殺された。妻たちが何をしたと思う?たった1日税金を納めるのが遅れただけ。たったそれだけの事でこの殺され方はないじゃろ・・・その時わしは何をしていたと思う?趣味の釣りの大会に出てたんじゃよ。滑稽じゃろ。家族がこんな目にってるのにわしといえば・・・笑ってくれて構わんよ・・・」


「笑うなんてそんな・・・」


 冗談でも笑える話ではない。俺は異世界召喚って事で少し浮かれていたのかもしれない。魔王には魔王と呼ばれるだけの行いがある。ここはゲームの世界ではない。こういう事がこの世界ではあるんだ。俺はこういう世界でこれから生きていくんだと今までの甘い考えを改めた。


「すまんな。こんな暗い話をして」


「いえ、こちらこそつらいことを思い出させてしまってすいません」


「さあ、食べてくれ。お代わりもあるぞ」


「・・・はい、いただきます」


 俺がシチューもどきを再び食べようとしようとすると聞いたことの無いようなドス黒い声が響いた。


「おい!出てこい!反逆者め」


 声をした方を覗いてみると屈強な男と連れ添いの人が10人ぐらいいた。


「来てしまったか・・・ここにいなさい。何があっても出てくるんじゃないぞ」


 そう言うとお爺さんは何かを覚悟したような顔で玄関に向かっていった。


「何のようですかな?」


「貴様、分かってるんだろうが。あの剣は誰も触ってはいけないことを。抜こうとした奴はどこに行った?今ならそいつの居場所を教えて謝れば同じ人間のよしみで水に流してやらんこともないぞ」


「ふん!お断りじゃ。人の誇りを忘れ魔王軍に寝返るやつに頭を下げるなど考えただけでも反吐がでる。生きたまま家畜の餌になった方が100倍マシじゃわい。」


「ほう。貴様反抗するか。ならばいい。その願い叶えてやる。貴様は明日死ぬことが確定した」


 ヤバイと思い行動を起こそうとするが体がいうことを聞かず動く事ができない。今気づいたが手足が震えてしまって立っている事すら厳しくなっている。助けなければいけないと思いながらも体がそれを拒否する。行けば死んでしまうと本能で分かってしまっているから。


「連れてく前に一つ教えてやる。お前の家族を殺したのは俺だ。だから殺される時に、お前の家族と同じようにいい悲鳴を聞かせてくれよな、俺は悲鳴が大好きなんだ。」


「お前はーー!!」


「おっと危ない。おいお前ら早く連れていけ」


 お爺さんが掴みかかろうとするも軽々避けられる。このままじゃ本当にお爺さんが殺される。俺は震える足を叩いて必死に動かそうとする。


「動け、動け、動け、動けよ!クソ!!」


 震えは止まらない。心では分かってるのに体が拒否する。そんな自分が情けなくて悔しかった。俺はただお爺さんが連れていかれるのを見てることしか出来なかった。



「何のために俺は・・・この世界に」

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