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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ブサイクさんの事情

作者: 桜毛利 瑠璃

「おぉ、驚いた。中鬼(オーク)が襲ってきたかと思ったら、ブサイクさんじゃないか。ビックリさせないでくれよ……そうそう、そろそろ来てくれないかなと願っていたけど、来てくれて助かった。傷薬と魔力回復薬の在庫がヤバかったんだ。有るだけ全部買い取るぜ」


 一ヶ月振りに顔を見せた私を見るなり、中鬼(オーク)が襲ってきたかと驚いていた薬屋のオージーさんだったが、次の瞬間、手のひらを返して、嬉しそうに私の持っいる薬を要求し始めた。まぁ毎度のやり取りなんだけどね。


 私の名前は房井(フサイ)久美子(クミコ)、二十七歳。名前でお分かりな通り、黒髪黒目の元日本人の迷い人です。背中まである長い髪を頭の後ろで可愛くお団子にしているのですが、容姿はこの世界の人いわく……中鬼(オーク)だったりする。


 今まで生きてきた、日本がある世界とは別のこの世界に迷い込んで来てしまったた当初は、当然のように言葉が通じなかった。

 それでも何とか、身振り手振りで自分の名前を伝えようとしたところ、自身の容姿と相まって『ブサイクの巫女(ブサイク ミコ)』と認識されてしまっていたのよ。発音とか区切りが違うような気がしてたけど、迷い込んできてしまった当初は、そんなこと気にしている余裕がなく、意思の疎通が取れたことが、ただただ嬉しかったの。



 私がこの世界に迷い込んでしまったのは、大学を卒業した日の帰り道。突如視界が真っ白になって、次に黒い煙に包まれたと思ったら、この世界の森に居たの。


 呆然と立ち尽くすしか出来なかった私を、魔女のお婆さんが保護してくれたからひどい目には合わなかったけど、この世界には人間を見掛けると襲ってくる魔物がいるので、早々に魔女のお婆さんに保護されたのは不幸中の幸いだった。


 魔女のお婆さんに保護されたあと、当時は解っていなかったけど、町長さんやらギルド長さんが来て、お婆さんと相談した結果。言葉が解らないのでは、たくさん人が居る町では大変だろうと、魔女のお婆さんが住む魔女の森でひっそりと生活することになったの。

 とは言え、元の世界に戻れるあてもないし、この世界で生きていくために、必死に言葉や文字を覚え、回復薬等の薬作りの手伝いをしつつ、自身を魔物から守る為の方法として魔法も教わったりしてたの。

 更に幸いなことに、異世界転移特典なのか付与されたのか判らないけど、この世界の人間より筋肉的にも魔力的にも強かったおかげで、時間もたっぷりあったし、たくさん練習することが出来たのよ。


 練習すればするほど習得率も熟練度も上がるもの。三年もすれば、すっかり魔女の後継者として町の住人に一目置かれる存在になっていたらしい。


 この世界の言葉も覚えて町に行くようになった時には、魔女の後継者のブサイクさんと、町の住人達には認識されていたので、既に訂正は不可能で、泣く泣く受け入れるしかなかったりする。


 まぁ町の住人も、親しみを込めてブサイクさんと呼んでくれるので、特に辛いわけではなかったから良いのよ。



 自分の名前はブサイクさんと認めてから二年。既に高齢であった魔女のお婆さんが眠るように亡くなったり、その後、正式に魔女を襲名したりと、その他諸々色々あって今に至る。


 まぁそれは今更良いとして、傷薬とか魔力回復薬が在庫が無くなるまで売れているってことは、やっぱりなのか。

 私も実感していたことだったので確認も含めて聞いてみる事にした。


「先月は余ってるって言って買取りを渋ってたのに……何かあったの? それってまずい状況なの?」


「まずい状況かどうか判らないが、動物が魔物化しているだけじゃなく、小鬼(ゴブリン)も大量に現れているみていだぜ。でも、冒険者ギルドの方でも赤字覚悟で褒賞金を増やしてるから、そのうち終息するんじゃねえか」


 薬屋のオージーさんは、大丈夫と言うけど、あのケチな冒険者ギルドが赤字覚悟って実は相当ヤバい事が起きているんじゃないかしら。そんな事を思っているなんて、顔にも出さす、商談を始めることにした。


「そう? なら良いけどね……そうそう、一応傷薬と魔力回復薬は五十個ずつあるわ。他はいつも通りだけど全部買い取って貰えるかしら」


 念の為と考えて、傷薬と魔力回復薬を多目に持ってきておいてよかったわ。


「ありがてえ。正直、子供用の熱冷まし薬は過剰になっちまうけど、ブサイクさんの薬は長期保存も出来て、良く効くって好評だから全部纏めて買い取ってやるよ」


「おっ、太っ腹。男前だね」


 オージーさんは、小太りのおっさんだ。私も人のことは言えないけどね。


「よせよ。これは体格が良いって言うんだ……けどほんとに良いんか。この買取り額って相場の半分以下だぞ。こいつの効能からすると、商業ギルドに持っていけば三倍、いや四倍でも買い取って貰えるぞ」


「うーん。儲けるとかそう言うのは、私にはどうでも良いのよ。だって、私一人が慎ましく生きていけるだけの稼ぎがあればそれで十分だし、それに薬作りは、私みたいな不審者を受け入れてくれた町のみんなへ、少しでも恩返しになるしね」


 そう言いつつも、私は知っている。風邪薬や熱冷まし薬をオージーは町の住人にタダ同然で売っているってことを。


「そう言われちゃあ、仕方がねぇけど……そう言えばブサイクさんが住んでる魔女の森は、大丈夫か?」


「まぁ、少し増えてる気がするね。でも見掛けたら直ぐに殲滅してるから被害は皆無だよ」


「まぁ、ブサイクさんなら中鬼(オーク)どころか大鬼(オーガー)が大挙して襲ってきた所で返り討ちにしちまいそうだからな」


 私は日課として、魔女の森を散歩しつつ魔物退治もしているの。元々この世界の人間より強いのに、毎日魔物退治をしているおかげで、そこいらの冒険者なんぞより、よっぽど強かったりする。しかも、ある経緯で入手した思い通りに変形させることが出来る武器もあったりするしね。


「町の全てと言われちゃ無茶だけど、北東部の守りだけなら私に任せとけば良いよ」


「無理と言わないところが何となく怖いが、何でも一人でやろうとするなよ。困ったことになるようなら、町の住人を頼れよ。この町の住人は、ブサイクさんの事を不審者だなんて誰も思ってないんだからな」


 見た目は小太りのおっさんでだけど、オージーさんは、ほんと良い人だ。優しいし、思い遣りもある。直接的には言われてないけど、心配してくれてることもわかるしね。でも残念な事に、子供が二人居る、奥さんラブな既婚者なんだよね。


 取り敢えず、


「ありがとう。でも私は中鬼(オーク)じゃないよ……」


 いつものこととは言え、顔を見せた瞬間に言われた事を根に持っている私であった。






 私の収入源は薬だけではなく、冒険者ギルドで魔物や鬼から得られる魔石を売ると言うものもある。

 一般の冒険者の様に、依頼内容に則って、積極的に大物を狙って狩っている訳では無いので、買取り単価は安かったりする。

 だけど、塵も積もればそれなりになるので、三ヶ月に一度纏めて売るようにしている。まぁ日本で言う、ちょっとしたボーナスの気分なんだけどね。そのボーナスで、贅沢品をちょっと買った後、一月分の食材を買い漁って、のんびり魔女の森にある家に帰るのが私のいつもの行動なんだけど、あまりにも驚愕的すぎてつい叫んでしまった。


「これってどう言うことなの!」


 買取り単価が上がったせいで、長蛇の列になっていた買取り受付で順番待ちして、魔石を提出したら、魔女の森産の魔石は買取り不可だと。

 理由を聞いても「規則です」としか答えない。私の剣幕に受け付けさんは涙目になっているが、理由も判らず三ヶ月に一度の楽しみを奪われる訳にもいかないので、上司に会わせて貰うことにした。


 別室で待つこと三時間……そりゃ、上司と言えば役職持ちだろうから忙しいだろうし、アポも取っていないから、面会する時間も空かないのだろうけど。待たせ過ぎじゃないか。


 当初の思いでは、無茶苦茶な理由であろうが話が聞ければ「ハイそうですか」と大人しく従うつもりだった。


 私のような不審者を受け入れてくれた町に、迷惑を掛けたくないからなんだけど。でも、これとそれとは話しが別だ。これ以上待たされたら食材が買えなくなるし、そろそろ怒った振りして文句を言いに行っても良いかしら。でも遅いと文句を言いに行くには、時間が経ちすぎているような気もするし、どうしよう。


 そんな事を考えていると、扉が開き誰かが入ってきた。


 やっと上司が来たのかと思い、入ってきた人を見ると、四つ星ランクの冒険者チームの面々だった。


 四つ星ランクと言えば、飛び抜けた実力を持っているか、又は、誰にでも人生に一度はあると言われているワンチャンス的な場面で、功績を上げられる運を持っているかのどちらかだ。


 そして運だけで四つ星ランクに上がった者は、殆どの場合即引退する。なぜなら冒険者ギルドから一生涯、少なくない年金が貰えるし、幾つかの権利と資格を得ることが出来るからだ。当然義務も発生するけど。


 なので、四つ星ランクは、冒険者が目指す目標の一つでもある。


 そんな厚待遇を甘受できるのに、引退しない冒険者は、更に上を目指す強者達である。


 因みに私は昇格することに、なんのメリットを感じていないので、魔物討伐に行くことが出来る二つ星ランクのままにしていたりする。



 話しを戻して。


 思ってもいない面々の登場に呆気に取られていると、チームリーダーのレオンさんが話し掛けてきた。


「おっ、久し振り。元気そうで何よりだ。もしかしてブサイクさんも召集されたのか、それならどんな任務でも楽勝だな」


 私の顔を見るなり、楽観的な発言をしているレオンさんに会ったのは、二年くらい前。山に薬の触媒になる鉱石を掘りに行った時だ。


 必要量以上の大きさの鉱石の塊が得られて、ホクホクな気分で家に帰ろうとしたら、大鬼(オーガー)と戦闘中のレオンさん達が森から転がり出てきたのだ。

 どうやら森の中では戦いづらいから、開けた場所まで引っ張ってきたようだった。


 私はちょっとした広場の真ん中に居たので、戦闘の邪魔にならないように、距離を置こうとしていたの。


 だと言うのにレオンさんは、私の方をチラリと見たとたん「ヤバい!挟まれた。服着た中鬼(オーク)が居やがった」なんて叫びやがったんだ。


 余りにも不当な叫び声を聞いて腹が立ったので、直前まで鉱石採取していたツルハシで大鬼を瞬殺してから説教してやったの。


 人間の女を見て、中鬼(オーク)と見間違えるなんて最低だと。まぁ初見では殆どの人に間違われるのだけどね。


 私が怪物を倒すと(マレ)にある事が起こるの。


 それは、討伐した相手が煙を発して消えてしまうってことなんだけど、今回はその現象が起こってしまい。

 大鬼(オーガー)討伐の証を得る事が出来なくなってしまった事を、今度は私が謝ったりと言う経緯があったりする。




 そんな過去の回想をしている間に、続々と四つ星ランクのチームが部屋に入ってきた。そして口々に「おっ、ブサイクさんじゃん。おひさー」とか「その節はお世話になりました」とか「ブサイクさんが居るなら安心だ」とか……この部屋に集まった四つ星ランクの奴等は、みんな偶然私が助けたことがあったり、採取中に邪魔してきた(レオンさん達含む)面々だった。


 珍しく知り合いに囲まれた状況になったので、この部屋に居る理由も忘れて世間話に花を咲かせていたら、ザビエル冒険者ギルド長が入室してきた。


 その事を切っ掛けに、慌てていたが整然と各チームリーダーを先頭にして整列していく。その様を見て、私は受付さんの上司を待っている手前、退室する訳にもいかないので、取り敢えず一番後ろの壁ぎわに立つことにした。


 整列し終わった所で、ギルド長から召集の理由と、任務内容の説明が始まった。説明の内容は。


 この大陸に、大魔王が現れたらしく教会から勇者が選定されて、現役の五つ星ランク以上のチームが討伐に向かったそうだ。


 そして、大魔王に呼応したらしい中魔王が、小魔王を引き連れて隣国との国境に現れて暴れていると言う。


 なので、隣国の冒険者と共闘して、速やかに殲滅すると言うことだった。


 その説明を聞いた私には、みんなが死なないようにと祈ることしか出来なかった。





はずなのに。


 どうしてコウナッタ。


 私の目の前では、中魔王……じゃなくて、大魔王が慈愛の笑みを浮かべて立っている。



 その頃、四つ星ランクのみんなは、それぞれ小魔王を相手に一進一退の攻防を続けていたりする。腹ただしい事に、小魔王が現れる度に

「ここは任せておけ!俺達が何とかするから先に行け!倒したら応援に駆け付ける」


 とか何とか言って一チームずつ抜けていき、最後まで残っていたレオンさんのチームも、先程小魔王との戦いに入っていった。


 私がレオンさん達より強いのは確かだけど、私は一人だよ。チーム組んでないんだよ。しかも女だよ。なんで「ブサイクさんは先に行け。雑魚は俺達に任せろ」って、どこのヒロイックファンタジーなんですか。


 ここで私が「ありがとう。みんなの犠牲を無駄にしないわ。中魔王は私が絶対に倒すから、それまで耐えていて」とでも言わなければならないのか。


 ほんと嫌になる、そもそもあの買取り受付見習いが悪い。私を部屋に案内した後に、中魔王討伐事案で忙しくしている上司に声が掛けられず、後回しにしたから巻き込まれてしまったんだ。


 何故かと言えば、ギルド長の最後の説明で、魔王が現れたなんて一般人に知られたら無用の混乱を起こすから、友人知人親兄弟であろうとも絶対に話してはいけない。これは四つ星ランクの義務の一つであるだなんて言うから。

 そうなると、あの場に居合わせた二つ星ランクの私はどうしたら良いのかしらと聞くしかないよね。一応ギルド員だし。


 ギルド長は、なんでブサイクの巫女魔女(ミコマジョ)がここに居るんだと怒っていたけど、居る経緯から原因を説明して、なんで買取り不可なんだと逆に詰め寄ったら、私に今支払ったら魔王討伐の予算が足りなくなるとのことだった。


 魔王関連の内容では確かに、迂闊に話せないし、上司が受付さんに知らせていないことは理解した。

 今日でなければ、私が冒険者ギルドに来たときに説明することも出来たらしい。タイミングが悪かっただけみたいだ。


 一応納得したので、ここで聞いた内容は一切口外しないと約束して退室しようとしたの。


 だけど今度は四つ星ランクの面々が、小魔王なら何とかしてみせるけど、中魔王は絶対無理と泣き付いてきて、最終的にギルド長が強権を発して特例で私の参加が決まってしまった。


 その後、私に対する成功報酬をどうするのかで揉めそうになったけど、金も名誉も名声も要らない私としては、私が参加した事を口外しないし、記録にも残さない。中魔王は、全チームが一丸となって討伐したことにすること。そして魔王災害で被災した人達に食料などの物資と一時金の贈与をすることとした。


 経緯はともかく、参加することになったのなら、全力で応じるのが日本人の気質。


 行く手を阻む様に現れた数百は居る雑魚どもに対して、広範囲土魔法で小さな針を生み出すことで対応した。


 なんせ、その針を踏んでしまえば、足の裏に激痛が走るわけで、そんな状態になれば走れないし、攻撃しようとしても踏ん張る事も出来ない。雑魚以下の魔物なんて四つ星ランクの敵にもならない。各自淡々と止めを刺していくだけですむ。


 近くに居る魔物には、そんな嫌がらせ魔法を使いまくり、中遠距離にいる魔物には、空気を分子毎に仕分けただけで行動不能に陥らせていた。


 魔物と言えども息をする生き物。これは魔女の森で、魔物退治をしている時に気が付いた経験からなの。


 結果、ある場所では窒素と酸素のみとなっているので、過呼吸を起こしているし、またある場所では窒素と二酸化炭素のみとなっているので、窒息してのたうち回っているし、またある場所では窒素と水素のみとなり、魔物の自前の皮が擦れて静電気でも起こそうなら小さな爆発を起こしてパニックになりながら、これまた窒息している。


 とは言え。大気圧のせいで、長時間空気を仕分けることが出来ないから、殺生能力に欠けるけど、遅延的嫌がらせには申し分無い。


 そんな遅延や嫌がらせ魔法を駆使しているのは、基本目立たない様にする為だったりする。


 雑魚とは言え、一撃で一掃するような殲滅魔法を、使える事がバレたら後が怖い。


 私の基本方針は、ひっそりと目立たず生きていくこと。


 この世界の結婚適齢期は、十五歳から二十歳まで、既に二十七歳の私は逝き遅れも良いところ。

 魔物が人間を襲う世界だから、未亡人も多く再婚ってこともありふれたりするけど、再婚できるような人達は、容姿端麗な人達くらい。自身を省みた所で年増の中鬼(オーク)を迎え入れたいなんて酔狂な人なんて居るわけがない。


 だからそんな夢は、とうの昔に捨てているし。下手に目立つ事をして、国に目を付けられたら面倒な事になりかねない。


 なので、ひっそりと生きる為には、目立ってはいけないから、嫌がらせ魔法を駆使して、支援に特化するだけだったりする。


 そんな嫌がらせ魔法を駆使していても、どうしても怪我はするし肉体的の疲労は貯まる。だけど、既に知れわたっている私の十八番である傷薬や疲労回復薬で、その都度、強制的に戦線復帰させてる。


 そんな事をしているから、鬼!悪魔!ブサイクさん!と罵られているが、目の前で知り合いが死んだり、再起不能になるのは嫌なので、怪我の治療は最優先で行っている。


 多少の怪我なら直ぐに治せる私がいるから、何だかんだ罵りながらも安心して戦えるようだ。


 怪我人が居なけれは、私も前線にでて、強大な一撃(肉体的意味での)を炸裂させて援護している。


 傷薬で追い付けないような怪我をされても、私のオリジナル治療魔法で治すつもりだ。こと治療に関しては、幾らでも誤魔化せるから出し惜しみしないつもりだよ。


 それでも精神的な疲労は、薬や魔法では回復出来ないので、夜は出来るだけ睡眠が取れるように、詳細は省くけど大鬼(オーガー)の一撃を受けてもビクともしない土魔法の物理結界で対応してたりする。



 まぁ。この手の物理結界の弊害と言えば、朝一から魔物に囲まれているってことだけど、戦場でたっぷり寝られてリフレッシュ出来てるから問題ないよね?




 そんなこんなで、出立から三日で中魔王の本拠地と言うか、中心地にたどり着いたのである。


 そして、中魔王の取り巻きである小魔王達は、それぞれ四つ星ランクのチームで相手をしている時私は、単独で四つ足ついているのに、私の倍はある牛型の中魔王のお膝元までたどり着いてしまった。


 普通こんな時って、お互いの認識とか確認の意味も込めて、名乗りあったりするんだろうけど。(チュウ)でも魔王と呼ばれる存在だから、知能が低いだなんてことは有り得ない。


 名乗りなんて、そんな無駄な事をして、相手に戦いの準備なんてさせてあげるものか。


 全速力で走りながら私は、牛型の中魔王の目の前で風魔法の補助を得ながら五メートルの高さまで大ジャンプ。

 そして手持ちの武器を十六トンハンマーに変形させて頭に叩きつけたの。


 この思い通りに変形できる武器の入手経路を話すと、長くなるから省くけど。私が見たことが有って、しっかりしたイメージが出来てかつ魔力が足りれば、盾でも鞭でも何にでも変形できるの。


 但し、一部でも私の身体に触れてないといけないし、触れているとは言っても、有線式ロケットみたいな特殊な機能は持たせられないから、遠距離攻撃は出来ない。

 そりゃあ、野球のバットに変形させて別に準備したボールを打てば飛んでいくから出来ないわけではないけどね。


 牛型の中魔王は、どう考えてみてもタフって言うか頑丈そうだったので、最大の物理攻撃を選択したの。


 この攻撃が、まったく効かないなら御手上げだし、多少でも効くなら次の攻撃に繋げる事が出来る。


 そう踏んでの奇襲攻撃だったのだけど、あっさりと牛型の中魔王の頭は潰れてしまった。


 もしかして人違い……いや、中魔王違いだったのかと思い、武器を元に戻して、距離をとった瞬間に、禍々しい煙が牛型の中魔王から噴き出しはじめた。



 失敗したと思った時には時既に遅く、即応出来ずに中魔王の変体を許してしまった。


 牛型の中魔王は、二足歩行の巨大な牛……所謂(イワユル)、ミノタウロスに変体していたの。これで、こいつが中魔王だとはっきりと認識できた。なんせこんな存在感を見せる魔物が、雑魚であるわけが無いからだ。


 牛型モードの時は三メートルだった体長が、ミノタウロスモードは六メートルくらいに倍増している。


 私の身体より数倍は太い手足。どんな斬撃を当てた所で傷一つ付かなそうなアザ黒い表皮。これぞ、ザ・魔王って感じだ。

 でも、こいつは中魔王だから大魔王とは、もっととんでもない存在なんだろう。


 とは言え。目の前に居ない大魔王のことなんてどうでも良い。この中魔王を倒さなければ、私が死ぬことになるからだ。


 それにしても、この中魔王が、暴れだしたら人間が何人集まろうが手の出しようがないだろう。町だろうが国だろうが壊滅するしか無いだろう。


 四つ星ランクの面々が泣き付いて来たのも頷ける、まだ(リキ)を入れていない、ただそこに居るだけでも圧倒的な(パワー)を感じる。


 初めからこの姿で現れていたら、見敵即斬なんて出来ずに躊躇(チュウチョ)してまい私はあっさり殺されていただろう。


 ほんと良かったわ。私の目の前で産まれてくれて。


 今、正にミノタウロスモードの中魔王が、全身に力を込めようとした瞬間。


「泥沼!」


 私は、中魔王の足元と言う狭い範囲にのみ、私の得意な嫌がらせ魔法の一つで、土と水の混合魔法の『泥沼』を仕掛けた。


 この魔法は、敵の集団の足元に広範囲でしかけて、行動遅延させる魔法だ。普通なら(スネ)くらいの深さにしかならない。でも普通のサイズの相手なら少なくとも走ることも俊敏に動くことも出来なくなるので、嫌がらせには最適だったりする。


 だが今回は、中魔王の足元のみと言う、限定的狭い範囲を指定したので、深さだけなら十メートルは余裕であるだろう。


 ミノタウロスモードの中魔王は、その巨大さ故に体重が数十トンはあるに違いない。だから重量を支える為に、あんなに足が太いのだから。


 そして、作用反作用の力学の通り、身体を支え力を込める地面が無ければ、逃げることなぞ出来ずに泥沼に自由落下よりは遅い速度だが沈んでいくしかない。


 とは言え、両腕は自由だから、身体が全て沈み込む前に、地面に掴まることが出来る。だが、其だけだ。産まれたばかりで、(リキ)を入れようとした瞬間に、身体が地面に沈み込むだなんて状況を、想定することは私だって出来ない。よほどパニックに陥っているのであろう、あんなに大口を開けているのだから。


 ミノタウロスモードの中魔王の表皮が傷付きそうも無いなら、狙うのは体内。でも六メートルの高さがある場所を狙うのは、どう考えても困難でしかない。


 でも今は、目線の先で弱点に違いない大口を開けているのだから、あとは簡単だ。


 元に戻した武器を長槍に換えて、私は身体ごと突っ込みただ真っ直ぐに突き刺した。


 魔王とは言え生物だ。喉の裏にある中枢神経が破壊されれば、身体(シンタイ)のコントロールが出来なくなるのは当然の結末。


 一瞬、身震いしたあと、動くこともなく泥沼に沈んでいった。


 長槍から元の武器である、メリケンサックに戻しながら、泥沼を元の地面に戻した。中魔王が沈んだ分、溢れて出ていた泥が小山となって、まるでお墓の様だ。


 戦いなんて言うのは、相手に(チカラ)を出させず、何もさせずに完封すれば良いだけだ。


 永久に眠れ、中魔王よ。





 だ、なんて中二病を(コジ)らしたみたく格好つけてた私が悪いのか? なんとこれってフラグだった!



 中魔王を倒した私は、小魔王と戦っている四つ星ランクの面々を援護しようと、お墓に背を向けて歩き出した瞬間に、殺気を感じて慌てて身を横に投げ出していたの。


 そしたら、私がさっきまでいた場所を一条の光が走っていって、その先の地面が大爆発を起こしていた。


 私は、急いで立ち上がり、中魔王のお墓を見れば、頂上で禍々しい煙りを纏った金髪碧眼で細マッチョのイケメンが素っ裸で、アソコ共々立っていた。


 意味が分からなすぎて今度は、私がパニックに陥っていたらしい。


 気が付いたら、「なんで、裸なのよ服を着なさい!服を!」とか叫んでいたから。


 私の叫び声を聞いて、イケメンは礼儀正しく一礼してきた。


「先程から服なぞ着ていなかいのだが……まぁ良い。そなたの前で失礼した」


 次の瞬間、周りに漂っていた禍々しい煙が、イケメンを包み、見たことがあるような黄金の輝きを持つ全身鎧となったから、尚更私は、パニックに陥ってしまった。



「ふむ。そなたの知識にある、最高の鎧を基本にして創ってみたが、こんな感じでよいか? なるほど。装備しない時は置物になるのか。と言うことは、部品一つ一つの意匠に意味があるのか。しかも身体の動きをまったく阻害しないとは。装備して良し。芸術品として見て良し。これは素晴らしい」


 今、私の知識にあるって言ったよね。


 イケメンが語っている中で、聞き逃せないワードがあったおかげで、私は思考を再起動することが出来た。私は改めて黄金の輝きを放つ全身鎧を装着したイケメンを見ながら、思考を進めようとした時。


「母よ、ようやく余のことを見たか」


「はあぃぃィ!?」


 このイケメンは、いきなり何を言い出す。私は日本がある世界でも、この世界でも、子供どころか彼氏だって出来たためしがない、非の打ち所のない完璧な処女だぞ。


 そんな私が母な訳がないじゃないか。そ、そうか、これは私の精神を揺さぶる攻撃か。ヤバい、ヤバいぞ。イケメンに耐性の無い私にとって、最悪最強の攻撃じゃないか。早々に何とかしなければなるまい。


「私は、子供を産んだことどころか、男とド同衾(ドウキン)したことさえない……なので断言できる。イケメ……じゃなくて、お前は絶対に私の子供じゃないぞ」


 そう胸を張って、ドヤ顔してやったけど。純粋な心情としては、男と同衾したことないって自分で言っておいてアレだけと、悲しいやら情けないやら恥ずかしいやら。でもこうして口に出して否定することによって精神攻撃から身を守ることが出来ると、魔女のお婆さんから聞いていたので、恥ずかしいけど仕方が無いと思い込むしかなかった。


 そんな心情を他所に、ドヤ顔を続けていたのだが、イケメンは。


「そう。余を産んだ親は、そなたではない。では一つ問う。子供から見れば自分を強く育ててくれた女は、母だと思うと余は考えるが、間違っておるか」


 確かに、産みの親と育ての親とか言うしね。育ての親を母と呼んでも問題ないか。


「確かに、そう言う事なら、その女は母だね」


「ならば、そなたは余の母だ。余をここまで育ててくれて感謝する」


 そう言いながらイケメンは、慈愛の笑みを浮かべている。


 いや、なに、それじゃあ意味がさっぱりわからん。なんで私が母なんだ。こんなイケメンを育てた記憶なんぞまったくないぞ。


 まったく意味が解らなくて苛々していたのだが、イケメンは別の意味に捉えたらしい。


「母よ、余はまだ母が望む域まで達してなかったようだ。戦いなんて言うのは、相手に(チカラ)を出させず、何もさせずに完封すれば良いだけだと言うのに、背後から最高のタイミングで、余の最高速の魔法を放ったのに、そなたには避けられてしまった。余には未だ母が必要だ。余を見捨てないで欲しい」


 うわっ、なんで私の中二思想を知ってるんだ……まさか、このイケメンは元は牛型の中魔王なのか。それなら、強引な考えだけどなんとなくイケメンが私を母呼ばわりする理由が解る。解るが、はっきり言って、どうすれば良いんだ。考える時間が欲しい。


「一応、確認したいのだけど良いかな」


「母が私を見捨てないと言うなら」


「見捨てる、見捨てないは一旦置いといて。もしかして、私は貴方とここで初めて逢ったわけじゃないよね」


「そうだ。母との初懐石は五年前になる。余がまだ幼生体と言われる状態の頃だ。とある森の中で著しく大きい魔力溜まりが出来ていた。その魔力に惹かれて余がその場所に訪れた時、そなたが突然現れて余を踏み潰し魔素体に戻されてしまった。だが本来は長く戦い魔素を消費しながら経験を貯めて徐々に強くなり、それでも倒されてしまったら暫く地中で力を貯め、肉体を進化させて復活するはずだったのだが、魔素をまったく消費することなく、そなたに一瞬で倒されてしまった。だがそのおかげで進化が速まったのだ……」



 イケメンさんの話が長くなったので纏めます。



 幼生体:この世界に着たばかりの私に踏まれて魔素へ(五年前)


 魔物1:私を助けてくれた、ある冒険者によって真っ二つにされて魔素へ(四年前)


 魔物2:私のショートソードで切り裂かれ魔素へ(三年半前)


 小鬼:私のショートスピアに貫かれて魔素へ(三年前)


 中鬼:私が練習を兼ねて放った風魔法に切り裂かれて魔素へ(二年半前)


 大鬼:私のツルハシに叩かれて魔素へ(二年前)


 竜型:私が実験を兼ねて放った光線魔法(実は風魔法の応用)に焼かれて魔素へ(半年前)


 牛型:十六トンハンマーに叩かれて魔素へ(少し前)


 ミノタウロス型:私の思考を読み取り、強いと思っている姿に特殊進化 長槍で中枢神経を貫かれて魔素へ(今さっき)


 そして今の姿である。


 人型(イケメン):大魔王に覚醒して、更に深く私の思考を読み取り特殊進化した。


 そして知ってしまった驚愕の事実。


 わたしのかんがえた、さいきょうのヒーローのすがたと、のうりょくをもっているらしい。



 と、言うことは。魔王の今の姿は、私の黒歴史そのもの……ってこと。



 そりゃあ、私だって王子様の夢くらい見たことあるよ。金髪碧眼の細マッチョで、黄金の鎧を着て私のピンチに飛んで現れて、光速のパンチを放ち、よく解らない能力で敵を爆発させるって。流石にカボチャパンツを夢見たりはしなかったけど。この程度のこと大なり小なり、女の子なら一度は夢見たことがあるよね。クレヨンで王子様を書いたことあるよね。


 お願い、あるって言って!




 ……イケメン魔王の話からすると、私は育ての親どころか、私の妄想が産み出した姿なのだから、実は産みの親でもあるって事なのか。


 なら仕方あるまい認めよう。このイケメンが私の子だと。一見青年に見えるけど、実際は産まれてまだ五歳のお子様なんだから。


 今からでも遅くない、ちゃんと躾を施せば、私の黒歴史をそのまま世に放たずに済むはずだ。


 でも私は耐えられるのか。そんな夢は捨てた筈だが、自分の理想の容姿を持つ子供を普通に育てるだけなんて……逆光源氏計画の発動? いやこの考えは不味い。私の黒歴史にまた一頁追加されてしまいそうだ。


 でも見た目は大人、頭脳は子供……最高のシチュエーションだよね。


 いやまだダメだ、妄想を爆発させてしまった自分自身を、抑えなければならない。そう、イケメン魔王が私に求めているのは、愛情では無く強さだからだ。


 なんせ、先程の攻撃を避けなければ、私は死んでいたはずだもの。でも、もしかしてって事がある可能性もあるし。


「一応、聞くけど。貴方が私に求めることはなに?」



「そんなもの、(チカラ)以外に何があると言うんだ。母よ。余を見捨てないで欲しい。余と戦い、更なる余の成長の糧になって欲しいぞ」


 うわっ。これって別の意味で、魔王からは逃げられないってことじゃん。しかも、いくら倒しても強くなって復活して、そして付きまとってくるなんて最悪じゃないか。


 考えろ、考えるんだ私。何が最善なのかを。でもその前に、何となく引っ掛かることがあったので時間稼ぎを兼ねて聞いてみた。



「力が欲しいことは解ったけど。貴方は力を得て何をするの?」









 長い長い長考の後、ポツリと。


「何もしない」


 あんた魔王でしょ。何もしないって事は無いでしょ。って思っていたのだけど。どうやら前提条件から違っていたらしい。


 結論。このイケメン魔王は、魔王では無かった。


 強い相手を求めてこの地に来たのだが、残念な事に本物の中魔王は弱かったらしい。体当りの一撃で消滅してしまった。せっかく来たのに何も得られず、次は何と戦おうかと考えていたら、偶然にも私が現れたらしい。


 因みに、小魔王達は中魔王があっさり殺られて逃げ出した所で、私達に出くわしたらしい。


 話を戻して、私が引っ掛かっていたのは、このイケメンから、禍々しい煙を出していたのに関わらず、本人からは悪意を感じなかったからだ。


 そりゃあ、殺気は今もバンバン感じるけど、怨みつらみとかそんな負の感情は一切感じないってこと。これならなんとかなるかもしれない。


「わかったわ。私は貴方の母となりましょう。なので、貴方が最強の戦士となれるよう(ミチビ)きましょう」


「余を最強の戦士に導いてくれるのか。ならば余はまだまだ強くなれる、なんと嬉しきことだ」


「貴方の母として、試練を与えます。更に強くなる為には、心技体の三つを鍛えなければなりません。貴方は(チカラ)が有っても、精神や技術がまるで足りていません。これは私の思考を読み取った貴方なら説明は要りませんよね。この世界には、大魔王や勇者、怪物と呼ばれる存在がたくさんいます。それらを、不意の一撃ではなく技術のみで倒してください。そうすれば貴方は更に強くなれるでしょう。手始めに大魔王と戦いなさい」


 私の言っていることは、その場限りの一時的なただの逃げだ。それは自覚している。しているけど、これは私が生き延びる為の最善なの。お願い納得して。


「ふむ。余は、母に直接鍛えてもらいたかったのだが、母がそうしたら良いと言うのなら、その試練を受けよう」


 よし。誘導成功。やった!


「だが、余から一つ願いがある」


 なんだろう。でも了承以外の選択肢なんてないよね。


「今この場で戦う以外で、私に出来ることなら」


「ならば母から余に、名前を授けて欲しいぞ」


「はひ?」


「名前と言うものは、個人を表し、親が付けるものなのだろ。そなたは余の母なのだから、母から授かるのはとうぜんだろう」


 くぅっ。確かに正論だ。

よしわかった。私が立派な名前を付けてやろう。


 そうだ。牛の魔王だから牛魔王(ギュウマオウ)とか、ミノタウロスだったからミノとか。


 いやいや、()(テイ)を表すとも言うから却下だ。悪者の名前は付けちゃいけない。慎重に名付けなければなるまい。


 それなら……。


 私は、私が考えた最高の名前を与え、その意味も伝えた。


 すると満足したのか、ひとつ頷き。両腕を背中側に伸ばし、走り去っていった。





 ひとまず、目前にあったピンチを脱することが出来た私だが、これからどうしよう。


 逃げる?(何処へ) 隠れる?(何処へ) でも絶対的なお約束として魔王からは逃げられないのは当たり前。


 ほんとうにどうしよう。








 

 恋愛小説を書きたかったのに、まさかの……。

 作者がヘタレと思いしりました。



 ブサイクさんが強い理由は、未熟とは言え魔王ばかりを倒していたからです。


 この後、イケメン魔王から逃げる為にブサイクさんは旅にでます。


 そして、旅路の果てに魔女の森に帰ってきたのですが、魔女の森は魔○の森にと名を変えていました。


 再び合い見舞える魔女と魔○。戦いの果てに手に入れるものは……。



 恋愛小説になればいいな(o^ O^)シ彡☆

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