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乙女ゲームの世界に転生したが、悪役令嬢がチート過ぎて諦めました。でも攻略開始です!  作者: ゆうき
第1章 魔法学校入学編(ここから学園モノが始まります)
9/13

悪役令嬢とのお茶会なのです。私の攻略は始まったばかりなのです!

今回の投稿からジャンルを「ファンタジー」から「学園」に変更しました。

「お待たせしましたわ、ダンさま。それと皆さん」


おーほほほほほ、と高笑いしながら現れたのはみんな大好き悪役令嬢の一人であるミレディお姉さまです。


高貴な令嬢と言えば扇子を持っているイメージがあるのですがミレディお姉さまは持っておらず左手を頬に当てての高笑いなのです。


この時に全身が軽く上下運動するものですから躍動感ある縦ロールがうみんうみん動きまして思わずそちらに意識が行ってしまいます。


男性でしたらその時に揺れる胸部装甲に視線が集中するのでしょうが私は美少女ですからちょっとだけなのです。


いえ、ほら私たちは十二、三歳ですからほんのり膨らみ始めた蕾程度が標準なはずなのですが制服越しにも解るほど開花したモノを装備してれば誰だって視線が行くのは仕方がないのです。


前世も慎まし装備でしたし、今世は血筋の関係で満開になる事はない運命が見え隠れしていますから羨ましいと思う気持ちは無きにしもあらずなのですよ。


でもですね、私には仲の良いお友達がいますので寂しくはないのです。


「何よ、私を見て」


「ルビーちゃんとは永遠にお友達なのです」


「いきなり何言いだすのよ、訳が解らないわ」


視線がルビーちゃんの顔よりもちょっと下なのが気付いていないようなのです。


そしてその視線を少し横にずらせばチェルシーちゃんが映るのですが、何という事でしょう!既に開花が始まっているではありませんか!


おそらく二分咲きぐらいだと制服越しでも解る装備をしていますから順調に開花が進めば将来満開になる可能性も有るかもしません。


容姿が幼いのにその装備、最強なのです!


「な、何かな、リスティナちゃん?」


「順調に育っているようなので観察日記を付けようと思いまして」


「意味が解らないです」


私の妹候補の二人はそれぞれ個性的なので将来も含めて楽しみなのですよ!むはー!


あ、かなり話がそれてしまいましたが今はミレディお姉さまの事でしたね。


お姉さまを語ろうとしているのに私の意識を割くとは流石なのですよ、ルビーちゃん、チェルシーちゃん。


それで金髪縦ロールで美人なミレディお姉さまは高笑い標準という万人が想像する傲慢令嬢のイメージにピッタリな方なのですが、元々金髪縦ロールキャラが悪役なお嬢様ではなかったはずなのです。


前世が日本人である私なのですが、日本の漫画などで描かれる金髪縦ロールなお嬢様は本来主人公に時には厳しくでも優しいお姉さま役として登場していたのです。


そう、お姉さまと言えば金髪縦ロールなお嬢様なのです!


それがですよ?なぜか現在では金髪縦ロールなお嬢様と言えば我儘で傲慢な主人公を苛める悪役令嬢というようなイメージが定着しているのです。


これは許せない現象なのですよ!


今私の近くでダンさんと談笑しているミレディお姉さまは乙女ゲームでも悪役令嬢という役所が設定されておりまして私はゲームをプレイしている時も悔しくて仕方がなかったのです。


なんどクリエイターやゲーム会社に苦情のお手紙を書こうかと思っておりましたが、書き上がる前に変質者に刺されてしまいましたから投稿できなかったのです。


予定では百枚近くに達しようかというほどの内容でしたし、私の死後きっと前世の両親かお姉さまが投稿してくれたと信じております。


また少し脱線しましたね。


兎も角ですね、私はミレディお姉さまのイメージである悪役令嬢を払拭して万人から愛されるお姉さまなお嬢様に仕立て上げたいのです!


その為にもミレディお姉さまは一体どういう美少女なのかというところから始めなくてはなりません。


見た目に関しましては既に説明していますので性格の部分から行ってみましょう。


乙女ゲームの設定上では深く物事を考えず直感で判断する脳筋さんで非常に負けず嫌いとなっております。


私がゲームをプレイしていた時もそのように感じましたしこの辺りは揺るがない事実だと思うのです。


あと新しいもの好きで流行の最先端を取り入れたいと常々考えており、頻繁に行うお茶会の数はこのグリンベルト魔法学園でも随一になってしまうほどなのです。


お茶会一回あたりに掛かる費用も結構な額に行きますから乙女ゲーム終盤、ダンルートが進むとヤクトワルト伯爵家からミレディお姉さまに苦情が入るというイベントが発生しちゃうのです。


なぜかこの時主人公なヒロインもそのイベントに巻き込まれて、なぜかミレディお姉さまと早食い勝負をするという意味不明な展開を迎えるのです。


このイベントが発生して負けるとダンルートは折れますし、勝つとミレディお姉さまが退学になって邪魔されなくなるというトンデモ展開だったりするのです。


これだけで解ると思いますがミレディお姉さまは所謂色物枠として悪役令嬢の一人として設定されていて、創造の神(クリエイター)を呪いたくなるキャラクターなのです。


確かにフィクションではこの手のライバルキャラクターというのは何故か色物枠になりがちですが、それにしてもそれはないと思うのです。


それよりも身内には優しいとか甘いもの好きとかの性格設定をもっとシナリオに出して欲しかったですし、全くゲーム中に登場しなかった隠し設定である熊のぬいぐるみ収集が趣味というのを出して欲し待ったのです。


この部分がちゃんと描かれていればミレディお姉さまも平民や下級貴族から恐れられる悪役令嬢ではなく、実は乙女ちゃんなみんなに愛されるお姉さまな令嬢として活躍できたと思うのです。


さて、ここまで私が熱弁したのなら解って頂けたと思いますが、私は今回のこの早すぎる会合なお茶会を皮切りにミレディお姉さまのイメージアップ作戦を行おうと考えているのです。


そして将来、私のお姉さまになって頂くという夢を達成するのですよ!むはー!


「お待たせいたしました、お嬢様方。あちらのお席にお移りください」


「解りましたわ」


「それでは行きましょうか」


「・・・」


「ちょっと、リスティナ?」


「・・・むはー!」


「なぜこのタイミングでそうなってるのよ?訳が解らないわ、ほんと」


「と、取り敢えず連れていましょう。遅くなるとミレディさまに失礼ですし」


「そうね」





気が付くと私はチェルシーちゃんに手を握られて歩いておりまして、お茶会が開催されるテーブルの前まで来ていたのです。


先ほどまで待機所となっていたテーブルに座っていたはずなのですが不思議な事もあるものですね。


それにしてもチェルシーちゃんの手は柔らかくて暖かいのです。


思わずにぎにぎしましたら、チェルシーちゃんがこちらを向いてニコっという擬音が聞こえそうな満面な笑みを浮かべてくれました。


か、可愛過ぎて思わずどうにかなってしまいそうなほど破壊力抜群の笑みなのです!


やばい、やばすぎるのです。


これからミレディお姉さまのイメージアップ作戦を行う大事な大事なファーストアプローチが始まるのにこのまま手を繋いだままお持ち帰りしたくなってきたのです。


でもここはぐっと我慢の子なのですよ。


私はきゃわいいお母さんの娘なのですからやれるはずですし、やり遂げなくてはならないのです!むふー!


「まずは誘って頂いたお礼からでいいのかしら?」


「そうですね、相手は上位者ですから着席する前に挨拶と礼をした方が良いです。でも主催であるミレディさまがお声を掛けてくれるまでここで待機になります」


「ふぅ。教育は受けていたけどミレディさまほどの貴族の方のお茶会は初めてだから緊張感が半端ないわ」


「私もミレディさま以外のお茶会の席では同じような物ですよ。これは中々慣れないと思います」


「そうよね。そんなお茶会でも緊張しないリスティナが逆にうらやましいわ、ってリスティナ?」


「リスティナちゃん?」


「えっと、なんでしょう?」


「えらく静かだからまだどっかに意識を飛ばしてるのかと思ってね」


「ミレディさんとのお茶会をどう乗り切ろうか考えつつチェルシーちゃんの手の柔らかさを堪能していたのです」


「ええ!?も、もう大丈夫だったら手を離そうね、リスティナちゃん」


「ダメなのです。もっとこの柔ら暖かい貴重なる物を堪能するのです!」


「ちょ、ちょっとリスティナちゃん、恥ずかしいですよ」


「それは今度にしておきなさいよ。今からお茶会なのよ?手を繋いで参加なんて聞いた事ないわ」


「むぅ、仕方ないのです。今度二十四時間くらい堪能する事にするのです」


「丸一日!?」


「そうね、そうしなさい。私が許すわ」


「やっふー!」


「ええ!?許可しちゃうのですか、ルビーちゃん!?」


「でも、そんなに良いの、チェルシーの手は?」


「凄いのですよ、チェルシーちゃんの手は!病みつきになる柔ら暖かさなのです!」


「そう。じゃあ、私もその時は」


「ええ!?」


「お待たせしましたわ、チェルシー。どうぞ席に付きなさいな」


私たちがチェルシーちゃんの手の素晴らしさについて語っている間に最終準備が整ったようでしてミレディお姉さまからお声が掛かったのです。


その声を受けてダグル男爵令嬢であるチェルシーちゃんから挨拶するのです。


「ありがとうございます、ミレディさま。本日はお招き頂きまして感謝いたします。同席する二人を紹介させて頂きますね。友人のルビナスさんとリスティナさんです」


「ルビナスと申しますわ、ミレディさま。姓はありませんからルビナスとお呼びください」


「リスティナと申します、ミレディさん。ルビナスさんと同じく姓はありません」


ちゃんと情操教育を受けていますよ、という意味を込めてカーテシーをしてからの挨拶なのですが、この時の相手への様付けとさん付けの違いに注目しますね。


様付けもさん付けも共に敬称になるのですが、様と付ける事によって相手に敬意以上の尊敬を込めてますよ、という意味になるのです。


だからチェルシーちゃんは宗家であるミレディお姉さまに様付けで呼びますし、ルビーちゃんはお得意様ですから様付けにしているのです。


じゃあ平民である私がなぜ様付けをしないかと言えば、この魔法学校は貴族院を兼ねているとはいえ平民も通う学校ですから名目上階級の違いを言ってはならない事になっているのです。


これが学外であれば私もミレディお姉さまに様付けした方が良いのですが、学内でのお茶会ですから正式な挨拶の場合、さん付けの方が正しくなるのです。


ただし、あくまでも名目上の表向き。


ミレディお姉さまの取り巻き令嬢であるAさんとBさんが生意気な平民ね、という視線を向けてきます。


「ミレディさまになんと無礼な」


「そうですわ。弁えた方がよろしくてよ」


視線だけじゃなく苦言を呈してきましたね。


うん、改めてAさんとBさんを見ましても、いかにも貴族の令嬢さんですよ、と言った風貌ですね。


乙女ゲーム上のCGでは顔に影ができていましたのでどちらがAさんかBさんか判りませんでしたが、きつそうな表情という共通点以外は全く別人なのです。


「アルレアさんもベネットさんもそこまでにしておきなさい。一応ここは学内でしてよ」


Aさんがアルレアさんで、Bさんがベネットさんですか、そのままですね!


「ミレディさまがそうおっしゃるなら」


「寛大ですわね、流石ミレディさまです」


しかも流石は取り巻き令嬢さんなのです、見事な連携なのですよ!


「兎も角席に着きなさい。折角の茶と菓子が勿体ないですわ」


「ありがとうございます、ミレディさま」


これでやっと席に着ける訳ですが、やっぱり貴族等の上流階級の仕来りといいますか、作法というのは面倒なのですよ。


座るときの順番も階位の高い人からとなりますし、自分で勝手に座らずに従事さんに席を引いてもらって押してもらいながら座るのです。


そして着席しましたら主催に対して座りながら目礼ないし一礼するまでが流れになります。


うん、私が前世で教育を受けたテーブルマナーとこの辺りは一緒ですね。


一連の動作をミレディお姉さまを含めた方たち全員が注目していましたが、特に表情の変化が見られませんでしたから問題はないようなのです。


安堵の表情をしないように軽く笑みを浮かべつつ全体的にテーブル上を眺めて確認しておきます。


この時に注視すると視線がばれてマナーの悪さが目立ちますので俯瞰するように見るのがコツなのです。


テーブル上には焼き菓子を中心に果物が置かれ、テーセットなのどの食器類は各席の前に用意されております。


食事会ではありませんからシルバー類は最低限、果物用のナイフとフォークのみで手洗い用のボールとナプキンが完備されています。


お茶や並べてある菓子や果物の配膳はすべて従事さんたちが行いますので、この方たちは給仕も兼ねている使用人、メイドさんたちという事になるようです。


通常でしたらそれぞれに役割が決められているはずですが、ヤクトワルト伯爵家ではなんでもできる使用人な従事さんのようですね。


隙もほとんどないですから戦うメイドさんでもあるかもしれないのです。


「全員揃いましたしお茶をお願いするわ」


「かしこまりました」


ヤクトワルト伯爵家では主が合図して物事を全て進めるのが慣例のようでして、指示が出てから次のステップに移行するようなのです。


この辺りは私が関係するノワール侯爵家とは違いますね。


あの家は主の合図を待たずともタイミングさえ間違わなければある程度自主的に行動する従事さんたちなのでした。


家の方針や歴史の違いなのでしょうがどっちが優れているとは言えませんが、中々興味深いところなのです。


まさか私がそんな事に注目しているとはこの場の誰も思っていないようでして、お茶が入るまで静かにしています。


一杯目は主催が用意したお茶を振る舞い、二杯目からは銘柄やミルクなどを指定するようですね。


給仕さんからは特に聞かれませんでしたからそういうお茶会なのでしょう。


新しい物好きで流行に敏感なミレディお姉さまだからこその流儀なのかもしれないのです。


全員の用意が出来た辺りでミレディお姉さまから口に付け、カップを置いたら私たちも飲み始めます。


うん、やっぱり面倒なのですよ、テーブルマナーは。


「にがっ」


そしてそんなマナーとか関係ねぇ、とばかりにミレディお姉さまと同時に飲み始めたダンさんがお茶の渋みが気に入らなかったようなのです。


一応上位貴族に当たるはずのダンデライオン辺境伯家の嫡子さんがそれでは流石に良くないと思うのですよ。





「これって先日の店でも飲んだのと同じですわね」


「そうですね、たしかグリーンティとかいう」


「あら、チェルシーたちは飲んだ事があるのかしら?」


「はい。先日下町の店で」


「そう」


あ、ルビーちゃんとチェルシーちゃんがやっちゃったのですよ。


新しい物好きなミレディお姉さまですから驚かせようと用意した珍しい当方のお茶である緑茶だったのに、すでに飲んだことありましたとばらしちゃったのです。


落胆するミレディお姉さまを見てルビーちゃんとチェルシーちゃんが顔を青ざめてしまったのです。


その前にですよ?ダンさんもAさんもBさんもですが渋みが気に入らなかったようでして、それが顔に出すぎなのです。


ダンさんの場合は表情だけではなく口にも出してますが。


「流石ミレディさんですね。良い茶葉を使ってます」


「「「「「え?」」」」」


前世が日本人である私にはなじみのある渋みですから気にならないですし、本当に良い茶葉を使っているのでしょう渋みが口当たり良いのです。


ただやっぱり慣れていない人には厳しいかもしれませんね。


「チェルシーさん」


なのでチェルシーちゃんからその解決方法を伝授してもらいましょう。


「え?あ、そうですね。すみません、ミルクを頂けますか?」


「チェルシー?」


「このお茶は東方から輸入された物ですよね、ミレディさま」


「ええ。先日紹介頂きましたわ」


「それをこのようにミルクを混ぜますと。ミレディさまにも入れて差し上げて」


「かしこまりました」


「ホワイトにしたら風味が散りますわよ。え?渋みがまろやかになった?」


「まあ、とても美味しいですわ!」


「凄いですわね」


「お、これなら飲めるな。もう一杯同じようにして入れてくれ」


下町のお店でも渋みが受けずに困っていたようですから私がオーレな緑茶を提案してみたら人気が出始めたのです。


おそらくですが、これなら白の派閥でも広まりやすくなると思うのですよ。


それをミレディお姉さまも感じているようでして真剣な表情をしているのです。


「チェルシー。この飲み方はどこで入手しましたの?」


「下町にある茶屋で知りました」


「下町なのですね。では庶民は既に知っているのかしら?」


「人気が出始めたばかりの新しいお店のようですからそれほど浸透していないかと思います。それにこの場で頂いたこちらの方が美味しいです」


「茶葉とミルクの違いかしらね。研究してみる価値はありそうだわ」


「早速手配します、お嬢様」


「ええ、宜しくお願いするわ。ところでその店は何という店なのかしら?」


「東方佳人という名で東方出身の方が経営されておりました。ミルクを混ぜて飲む方法は最近始めたばかりで故郷にはない飲み方だそうです」


「それは良い情報だわ。早速広めましょう」


うん、上手くいったようですね。


これでミレディお姉さまのイメージも良くなるはずなのですよ。


何せ今まではミレディお姉さまの新しい物好きは受け入れられにくい物ばかりでしたから、流行の一つ、しかも良い物を発信したとなればイメージ払しょくの切欠になるのです。


その証拠にダンさんをはじめ、AさんやBさんも笑みを浮かべて飲んでますし、楽しそうに会話しているのですよ。


その光景を見てミレディお姉さまも満更ではない様子なので、高笑いこそしませんが嬉しそうにしているのです。


綺麗過ぎる美人さんが楽しそうに笑みを浮かべている様子はもう、たまらないのです!むはー!


「ところでチェルシー」


「何でしょう、ミレディさま」


「あなた、下町に行ったりするのですね」


「えっと、先日買い物に出かけまして、その時に立ち寄りました」


「チェルシーさんが下町で買い物?」


「何を買われたのですか?」


「そ、それは」


「ああ、チェルシー嬢はそっちの菓子屋の嬢ちゃんと桃髪嬢ちゃんと一緒に魔法服を買いに行ってたようだぞ」


「「「え?」」」


「そのついでに寄った店か。これ以外にもあるのか、美味いものが?」


「あの店は東方の茶と菓子を出す店ですからグリーンティに合う菓子はございましたわ」


「へえ。ルビナス嬢のところでは出さないのか?」


「出さないと思いますわ。当店では焼き菓子の厨房しかございませんので難しいと思いますもの」


「なるほど」


「ダ、ダンさま?」


「なんだ、ミレディ?」


「随分チェルシーたちと仲が良いですわね」


「この間言った程度だぞ?それ以上なんもねえよ」


「そ、そうですか」


「あ、そうだ、リスティナ嬢」


「何でしょう、ダンさん」


「あの店長は手ごわ過ぎるぞ。紹介状だけじゃなく直接紹介してくれよ」


「ちょ、直接!?」


「んー、私が同行しても変わりませんよ。それよりも欲しい装備の素材は聞きました?」


「一応聞いたけど」


「だったら簡単ですよ。ダンさん自ら取りに行って納品してみてください。ダンさんだったら何度か足を運べば作ってくれると思いますよ」


「ほう、そうか!じゃ、早速行ってくるわ!」


言うや否やダンさんは立ち上がっちゃいましたけど、私たち全員唖然とその光景を見てます。


なんせお茶会で退出する場合は主催に断りを入れてからが常識ですからその破天荒ぶりに驚くばかりなのですよ。


「ちょ、ちょっと、ダンさま!?」


「ああ、すまんミレディ。茶美味かったぜ。こういうのだったらいつでも誘ってくれ」


「ほ、本当ですの?」


「ああ。じゃ、行くわ」


うんうん、二人の仲が進展したようですから私もうれしいのです。


恋する乙女を応援するのも美少女の役目なのですよ!





「嵐のように去っていったわね」


「そ、そうですね」


唖然としたままだった私たちと恋する乙女モードに入っていたミレディお姉さまの中で一番最初に復帰したのはルビーちゃんとチェルシーちゃんでした。


多分二人はこういう突飛な行動をする人物に慣れているのでしょう、だからこそ復旧が早かったのです。


しかしどんな人なのでしょうね、身近な突飛行動を取る方って。


それはさておきまして、従事さんたちも通常復帰してお茶のお代わりなんかも給仕し始めましたから、ここからがやっとちゃんとしたお茶会が始まりますね。


今までは何と言いますか、ダンさんの所為で雰囲気が完全に壊れちゃいましたから。


「ミレディさま?」


「え、何かしら、アルレアさん?」


「いえ、そろそろ本題に入りませんか?」


「そうですわね」


む?なんでしょう、急に雰囲気がぴりっとし始めましたね。


ダンさんの破壊活動で弛緩してしまった分余計にそう感じちゃいます。


「チェルシーに聞きたいのだけれど」


「は、はい」


「レオに強引に連れて行かれそうになったのは本当なのかしら?」


「そ、その」


「レオの話ではそうではないとの事だけれど、ダンさまはそうだとおっしゃったわ」


「その・・・」


ああ、あの時の件なのですね。


レオさん、まさか言い逃れをしちゃったのですかね?


ちゃんと真実を話してくれてたら、こんな呼び出しのような目にチェルシーちゃんが合わなくて済んだのです。


マジ、許すまじ偽獅子さんなのですよ!


あ、でもそのお陰でこうしてお茶会に誘われているのですから感謝すべき?


むむむむむ。


「ミレディさま、私が話してもよろしいですか?」


「ルビナスはその場に居たのでしたね」


「はい。チェルシーさんの立場では何も言えないと思いますし、私が代わりに」


「宜しくってよ。この場限りの話として聞きますわ」


「ご配慮に感謝致しますわ。私の目から見たところですが、レオさまはチェルシーさんの返事を待たずに腕を取られました。それと主家と庶家の関係も持ち出されておりました」


「そうですの。それでしたらレオの言い分はおかしいですわね。彼はそちらのリスティナが邪魔をするから腕を取ったと言いましたし」


なんと私の所為にしてましたか。


いや確かに邪魔をしようとしましたが、実際はお邪魔虫さんであるラビリオさんが間に入ったのですよ?


「間に入られたのはラビリオ様ですわ」


「御子さまがですか。なぜラビリオ様が間に入りますの?」


「同じクラスですし、あの方は平等主義者でいらっしゃいますから」


いえ、あれはラビリオさんがチェルシーちゃんを狙っているからだと思うのです。


ラビリオさんには勿体ないですからチェルシーちゃんは渡さないのですよ!


「そうですの。確かにあの方ならしそうですわね。ところでなぜリスティナが出てきますの?」


「そ、それは・・・」


「チェルシー?」


「そ、その・・・」


あれ?なぜか私に関してはノーコメントですよ!


そしてなぜか私に全員の、しかも従事さんたちまで含め全員の視線が集まっているのです。


どういう事なんでしょうね?


あ、この焼き菓子美味しいのです。


お土産に包んで貰えないでしょうか?


院の子たちや母にも食べさせて上げたいのです。


「リスティナと言いましたね?」


「はい、なんでしょう、ミレディさん」


「ズバリ聞きますが、レオと何かありましたの?」


何かと聞かれてもざっくりしすぎて解りませんが、流石ミレディお姉さまなのです、ド直球なのですよ!


「同じクラスで先日の体育の授業で勝負したぐらいでしょうか」


「あなたに随分と敵意を向けておりましたわ」


「そうなのですか?特に何かした覚えはありませんが。反撃もしませんでしたし」


「反撃?まさか女性に暴力を振るおうとしたのですか、レオは?」


「いえ、当たりませんでしたから問題なかったかと」


「そういう問題ではないと思いますわ」


本当に問題なかったと思うのですよ。


防御魔法にすら当たりませんでしたし、余裕で回避できたのですから。


ゴブリンの方がマシな攻撃だと当たる方が逆に大変なのです。


「多分、ゴブリン扱いじゃないかぁ、レオさまが怒ってるのは」


「そうね、絶対そうよね」


考え事をしていたのでチェルシーちゃんとルビーちゃんの呟きは聞こえませんでした。


何を呟いたのでしょうね?


「まあ、レオの事は良いですわ。ダンさまにお灸を据えてもらったのですし」


お灸が自宅謹慎で停学処分とか流石は上位貴族さんなのです。


「そ、それで本題なのですが」


え?レオさん絡みが本題じゃなかったのですか?


思わず首をかしげてしまいましたが、チェルシーちゃんとルビーちゃんだけじゃなく、AさんBさんも不思議そうにしてますね。


「あなた、ダンさまとどういう関係ですの?」


「え?ただのクラスメイトですが」


「嘘おっしゃいな!ダンさまが楽しそうにあなたの事を語ってましてよ!」


「はぁ」


「なんですか、その返事は!キリキリ答えなさい!」


「そう言われましても・・・あ、そういう事ですか」


うふふ、何という事でしょう。


真っ赤な顔をして激おこぷんぷんなミレディお姉さまですが、とても可愛い事でぷんぷん状態なのですよ。


不思議過ぎてすぐに思いつきませんでしたし、真っ赤な顔をしているミレディお姉さまも可愛いので見惚れていましたから中々考え至りませんでした。


何てことはないのです。


ダンさんが私の事を楽しそうに話すものですから、ミレディお姉さまは嫉妬しちゃったのですね。


やっぱり隠れ乙女ちゃんであるミレディお姉さまなのです。


きゃ、きゃわい過ぎなのです!


「私、男性が苦手ですからダンさんに興味ないのです。ですからミレディさんを押しのけてとか全然考えてないのです。ですから大好きなダンさんを取ったりしないのですよ」


「なっ!?なななななななな」


「うふふ、やっぱりミレディさんは可愛いのですよ!美人さんなのに可愛いとか最強なのです!」


「か、可愛い!?」


「ぜひ、私のお姉さまになって欲しいのです。そして私の事はリーナって呼んでくださいね?」


「お、お姉さま!?」


「はっ!?ちょっとリスティナ、あなた本当に何を言い出すのよ!?」


「リスティナちゃんは妹じゃなくてお姉ちゃんが欲しかったの!?」


「ちょ、ちょっと、チェルシーまで何おかしくなってるのよ!?」


「あ、この際だからルビーちゃんもチェルシーちゃんも私の事はリーナお姉ちゃんって呼んでね」


「呼ばないわよ!」


「ええ!?どっちなのですか!?私は妹なのですか!?それともお姉ちゃんなのですか!?」


「な、何なのよ、この娘は!?」


「ミレディさま、このリスティナについては深く考えてはいけません!深みに嵌りますわ!」


「何ですか、それは!」


「私は男性がちょっと苦手な可愛い美少女と美しい美少女が大好きなどこにでもいる子なのです。至って普通の美少女なのですよ」


「「「「「「絶対に普通じゃない!」」」」」」


何故か総突っ込み、従事さんたちからも頂いちゃいましたね。


本当に何故でしょうね?

お読みくださってありがとうございました。


ファンタジー系の乙女ゲームのライバルキャラである悪役令嬢さんが金髪縦ロール装備率の高さに思わず(

でもマミられた人のように実はお姉さんキャラだという事も忘れてはいけないと思うのです!

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