第二の悪役令嬢さん登場なのですが、まだ戦いは始まらないのです。
「あなたがリスティナですわね!」
金色に染まる長い髪が躍動するかのように揺れ、茶色の瞳には熱いものが宿る美少女が目の前に現れたのです。
私ことリーナはただいま仲の良いお友達、姉妹候補筆頭のお二人であるルビーちゃんとチェルシーちゃんと一緒にお昼を頂いているところです。
食堂が混在ついたという事もありましたし、気温も暖かくなっていますから中庭に隣接するテラスで頂いておりました。
私たちが楽しい時間を過ごしているとお邪魔虫さんが寄ってくるのですが、先日の騒動により昼休みに関しては近寄らなくなっていたのです。
それなのに誰かが近寄ってくる気配を感じましたので振り返るととても同じ歳とは思えない立派なプロポーションをした美少女、いや美女といっていい綺麗な少女だったのです。
あの誰も真似できない、いや、お嬢様といえばこれ!と誰もが想像する髪型、縦ロールをひっさげて歩いてくるのは悪役令嬢の一人であるミレディ・ヤクトワルトさんだったのです。
もしかしたらチェルシーちゃんに用事があるのでしょうか?
なにせチェルシーちゃんのご実家であるダグル男爵家はヤクトワルト伯爵家の庶家ですし、乙女ゲームではミレディさんの取り巻きの一人ですしね。
あ、よく見たら取り巻きさんであるAさんとBさんもご一緒のようなのです。
うん、やっぱり現実で見てもミレディさんはとてもお綺麗で美人さんなのです!
これぞ高貴なご令嬢なお嬢様!という外見なのに猪突猛進で負けず嫌いという性格がギャップ萌えを演出してまして、前世の私もミレディさんが大好きなのでした。
こんなに早く会えるなんてとってもラッキーなのですよ!やっふー!
「ねえ、あれ、ヤクトワルト伯爵令嬢じゃないの?」
「あ、本当ですね。ミレディさまです。珍しいですねテラスの方に来られるなんて」
「・・・むはー!」
「何を興奮する要素があったのよ、リスティナ?」
「私たち何かしましたでしょうか?」
「特にしてないはずだわ」
「チェルシーちゃんもルビーちゃんは何時如何なる時もきゃわいいのです!」
「だから人前で叫ばないでよ、そんなこと!」
「あわわわわわわ」
などとやり取りしていましたらもうすぐ目の前までいらしたので私たちは失礼にならない程度に立ち上がって出迎えました。
なにせ中位貴族の中でも筆頭株であるヤクトワルト伯爵家のご令嬢さんですからね、失礼があってはいけないのです。
あ、先日のレオさんは例外です、何せ男性ですからね。
「ごきげんよう、チェルシー。お久しぶりね」
「あ、はい、ミレディさま。先日もお会いしたような」
「昼間に会うのは久しぶりという意味ですわ。ところでそちらの方々は?」
「こちらは同じクラスのルビナスさんで、名菓マドリードのご令嬢です」
「あら、あなたがあのお店の」
「お初にお目にかかります、ルビナスと申しますわ、ミレディさま」
「あなたのご実家の焼き菓子は私も気に入っていてよ、ルビナス」
「ありがとうございます」
「また取り寄せさせて頂くわ。それともう一方は、桃色の髪?」
チェルシーちゃんとルビーちゃんがあいさつを終えて、次はいよいよ私ですね!と目を輝かせていましたら、ミレディさんが私を見て小首をかしげました。
その姿がまたきゃわいくて、美人なのに可愛いとか最強すぎるのです!むはー!
と私が興奮していましたらミレディさんは私に向け指さし、冒頭の台詞をおっしゃたのです。
あれ?いつの間に接触フラグを立てていたのでしょうか?
「はい、私がリスティナです。お初にお目にかかります、ミレディさま」
取り敢えず疑問は脇に置いておきまして礼節ある対応、カーテシーであいさつしておきました。
うん、なぜか私に敵を発見したかのような攻撃的な目を向けてくるミレディさんなのですが、これっぽちも心当たりがないのです。
でも、ミレディさんにそういう目で見られるのも悪くない、いや、良いですね!
「あなたの事は色々聞いてましてよ」
「そ、そうなのですか!ありがとうございます!とてもうれしいです!私もミレディさまの事は色々知ってます!お会いできてとても光栄なのです!やっふー!」
「な、なに、この反応!一体この娘はなんですの!?」
「あ、あなたちょっと!ミレディさまに失礼よ!」
「ミレディさまにもこの反応なのですか!?リスティナちゃん落ち着いて!」
あ、思わずうれしすぎて猫が剥がれちゃいましたね、反省なのです。
それにしてもやっぱりミレディさん、否、ミレディさまは良いですね!
美人なのに可愛い仕草とかギャップ萌えを備えているとか、もう、これはお姉さまになって頂くしかありませんね!
「ミレディさま」
「何かしら?」
「私のお姉さまになって下さいまし。そして私の事はぜひリーナとお呼びください!私はミレディお姉さまとお呼びしますね!」
「え?」
「うわあああああ!?リスティナ、あなたという娘は!」
「え、妹じゃなくて、姉?そ、そんな場合ではありませんでした!リスティナちゃん、落ち着こうね、ね?」
私の言葉に唖然とするミレディお姉さまもとてもきゃわいいのです!
折角早期に出会えたこのチャンス、ぜひモノにするのですよ!むふー!
なぜかとても注目を集める事になってしまった本日の昼食会ですが、私をなぜか暴走した獣の如く抑えてくるルビーちゃんとチェルシーちゃんによって時間がなくなちゃいました。
結局ミレディお姉さまがどのような要件で私たちに会いに来たのか解らず仕舞いでして、放課後に再度顔合わせを兼ねてお伺いする事になったのです。
私とチェルシーちゃんが呼ばれたのですが、チェルシーちゃんが不安そうにしてましたからルビーちゃんも同行する事になりまして、三人でお邪魔する予定なのです。
ミレディお姉さまは身内にはとても優しいという設定がありますし、チェルシーさんが不安がる意味がちょっと解りません。
でもルビーちゃんもお友達ですから私たちだけでお呼ばれしてルビーちゃんを除け者にしたくありませんから、同行は願ったりかなったりなのです。
ところで二人して私を見つつ困った顔をしているのはどういう事なのでしょうか?
困った時の表情もとてもきゃわいいので、もしかしたら私へのご褒美かもしれません。
いえ、これは絶対ご褒美なのですよ!むはー!
「ねえ、リスティナ」
「なんですか、ルビナスさん。今は授業中ですよ」
「くっ、あなたがそれを言うの?」
「ルビーちゃん、落ち着いて。ちょっと声が大きくなってますよ」
「ありがとうチェルシー。またこの娘の策にはまるところだったわ」
さて、もうお気付きだと思いますが、私たちの関係性は先日の騒動、チェルシーちゃんとお昼をご一緒する券争奪戦以降かなり良好になっているのです。
ルビーちゃんはお友達に対しては地をさらけ出して話すようで、貴族であるチェルシーちゃんに対してもそれは変わらないようなのです。
チェルシーちゃんを呼び捨てでチェルシーと呼び、私をリスティナと呼び捨てで呼ぶのですが、折角ですからリーナと呼んでほしいのです。
それを言いましたら恥ずかしがって呼んでくれないとか本当にルビーちゃんは正統派ツンデレさんなのです。
そしてチェルシーちゃんは丁寧な口調こそ変わりませんが、私たちをリスティナちゃん、ルビーちゃんとちゃん付けで呼ぶようになったのです。
かなり好感度が上がったお陰なのでしょうね、抱き着くとまだ恥ずかしそうにしますが嫌がっていないようですし、私のテンションが上がるとよく抱き着かさせてもらってるのです。
あの時の泣きそうな表情で抱き着いてきたチェルシーちゃんはかなり可愛かったのですが、恥ずかしそうに抱き着かれるチェルシーちゃんも最高なのです!
これほどまでに好感度が上がっている二人ですが、まだ妹としての自覚が足りないようでして、私をお姉ちゃんと呼んでくれません。
まだ出会って一週間も経っていませんから仕方がないのかもしれないですね。
よし、もっと仲良くなって姉妹の関係になっちゃいますよ!むはー!
「それでね、リスティナ」
「・・・」
「リスティナ?」
「あ、はい、なんですか、ルビーちゃん?」
「また意識が飛んでたのね、なにを想像してたのやら。あ、そっちはいいわ、怖いし」
「私たち三人の幸せな関係について、です」
「だからいいってば!」
「落ち着いてルビーちゃん。声、声」
「ふぅ。ねえ、リスティナ。あなたミレディさまと会ったことがあるの?」
「あ、私もそれが気になってました」
「直接お会いするのは今日が初めてなのです」
「そうは見えなかったのだけれど」
「リスティナちゃんは確かにそうでしたね。でも、ミレディさまは本当に初対面という感じでした」
「ただちょっと知っているというだけなのです。ミレディさまは美人さんですからチェックしていたのですよ」
「「・・・・」」
「私のお知り合いさんにちょっと調べてもらった程度ですよ?」
「知り合い?まさか、黒蛇?」
「そ、そこまでしたのですか?」
「いえいえ、違いますよ」
「そ、そう。それにしても一体何の用事なのかしら?」
「たぶん、リスティナちゃんに用事があるのだと」
「リスティナに?」
「実は・・・」
どうやらミレディお姉さまは私に用事があるらしく、チェルシーちゃんがそう予想する理由を話してくれたのです。
先日チェルシーちゃんがミレディお姉さまと夕食を共にした時に私の事を色々聞かれたらしく、それだけではなく取り巻き令嬢さんのAさんとBさんからも色々話にでたそうなのです。
あ、そうそう、チェルシーちゃんは夕食だけはミレディお姉さまと偶に取るようでして、私たちと食事せずにいない日はそういう事らしいのです。
食事を共にする事は強制ではないらしく、どうやら乙女ゲームの設定と違って現実ではチェルシーちゃんは取り巻きという訳ではないようなのです。
それにしてもチェルシーちゃんがうらやましいのです。
あのミレディお姉さまと交流があって食事を一緒にできるなんて、とてもうらやましいのです!
「あ、あの、リスティナちゃん、怒ってしまいました?」
「え?チェルシーちゃんに怒るとかそんなのあり得ないですよ」
「よ、よかった。ほら、勝手にリスティナちゃんの事話しちゃったから」
「怒ってない割にはちょっと睨んでたわよね?」
「チェルシーちゃんがうらやましかっただけなのです。ミレディお姉さまと食事ができるなんて、きー、くやしい!なのです!」
「はい、そこ、いつもの三人。そろそろ静かにしてくれないか?」
「「「すみません」」」
思わず大きな声を出しちゃいましたね、反省です。
あれ?でも今の叱られ方だと随分前からばれちゃってました?
うん、みんなの視線が集まってますね。
これも仕方がないのです。
だって、ここには美少女が三人も集まってるのですから注目を集めるのは当たり前なのですよ!
「では、次のところをリスティナさんに読んでもらいましょうか」
「あ、はい」
それでは、お、ま、ち、か、ね!のミレディお姉さまとの会合、お茶会の時間がやってきたのです!
場所は放課後でも解放されている食堂のテラスでして用意はミレディお姉さまお付きの従事さんたちがやってくれるそうなのです。
一体どんなおもてなしをして頂けるのか楽しみで仕方ありませんし、ミレディお姉さまを間近でお茶を楽しめるだなんてもう誰得ではなく私得ですよね!
などと盛り上がっておりましたがお邪魔虫さんが近寄ってきたのです。
なんでしょう、このパターンは。
私のテンションが上がると湧いて出てくるとかそろそろ本格的に駆除をしないといけないのでしょうか?
「さあ、行きましょう、ルビーちゃん、チェルシーちゃん!」
「なんであなたはそうテンション高いのよ。普通ヤクトワルト伯爵令嬢であるミレディさまにお誘いを受けたら戦々恐々でしょ、平民だったら」
「そ、そうですよね。私も実家関係で交流がなければ緊張していたと思います」
「何を言ってるのですか、ありえません。だってミレディさまですよ?ミレディさま。あの美貌なのに深く考えないで直観で即行動で走りきるまるでどこかの脳筋さんと同じような性格とか最高なのです!」
「リスティナ、それ恐れ多くも貶してるでしょ!?」
「そんな事ないのです。だってギャップがあって萌えるじゃないですか。美人なのに可愛いとか最強なのですよ!」
「でも、確かにちょっとそういう傾向が」
「チェルシーもリスティナに似てきたわね」
「ええ!?」
「おい、なんだか騒がしいな」
「あ、ダンさま。申し訳ありません、耳障りでしたか?」
「いや、楽しそうでいいんじゃねえか?ところでミレディがどうとか言ってたようだが?」
「私たちミレディさまにお茶会に誘われていまして、これから向かうところですわ、ダンさま」
「え?お前たちもか?」
「「「え?」」」
なんとびっくりなのですが、どうやらお邪魔虫さん、げふん、ダンさまもお茶会に誘われているようなのです。
女の子、しかも美女と美少女だけの花園にですよ?
そこに美少年とはいえ男性が参加するなんてどういうことなのでしょうね?
ミレディお姉さまとダンさまだけならお二人は婚約関係ですから解るのですが、私たちも参加するお茶会に呼ばれているというのはちょっと考えられないですね。
いえ、もしかしたら元々ダンさまが誘われていたお茶会に私たちを急遽参加させた?という事なのでしょうか。
理由は解らないですが、どうやら私たちが楽しむだけの時間ではなくなったのは確定しちゃいましたね。
「ますます行きたくなくなったな。行かないと後でうるさいから行くけどよ」
「む、ダンさまはミレディさまに誘われてうれしくないのですか?私はすごくうれしいですよ!」
「ミレディはちょっと直情すぎるというかめんどくさいというか。あ、ミレディは言うなよ?」
「も、もちろんですわ」
「はい」
「ダンさまとミレディさまは性格がにてらっしゃいますから同族嫌悪ですか?」
「おい!どういう意味だ、それは!」
「ちょ、ちょっとリスティナ!何を言ってるのよ!あやまりなさい!」
「あわわわわわわ」
「とてもお二人はお似合いだと言ったのですよ。流石婚約関係にあるお二人なのです」
「「「え?」」」
あれ?三人とも信じられないみたいな表情されてますね。
ダンさんの場合は俺とは似てねえよ!的な誰得ツンデレ風味なのでしょうが、流石ですね男のツンデレが気持ち悪いと理解していてそのような反応をしていないのです。
ルビーちゃんとチェルシーちゃんは私が二人を祝福しているような発言について驚いているのでしょうね。
私の言動や行動だけを見ていれば、女の子なのに女性好き、所謂百合だと思われているでしょうからね、それは分かるのです。
でもですね、私は別に女の子と結婚したいとか恋人になりたいとかそういう感情は一切ありませんから、お似合いの男女だったら祝福ぐらいはするのです。
私はただ可愛い娘さんが、美しい女の人が、そう、美少女や美人が大好きなだけなのです!
だって可愛いは正義なのですから!
「桃色嬢ちゃんはミレディに狙われてるからびっくりしたぞ」
あ、違ったようですね。
しかし狙われているですか、ふむ。
こ、これは、すでにミレディお姉さまフラグが立っていたという事ですね!やっふー!
「どういう事でしょうか?」
「ああ、ほらこの間レオをやっただろ?それでミレディが興味持ったらしくてな、色々聞かれたんだよ」
「あれはダンさまが、いえ、なんでもありませんわ」
「私も色々聞かれましたが、危害を加えるような雰囲気には見えませんでしたが」
「そりゃあチェルシー嬢は身内だからな。ミレディはああ見えても身内には優しい」
「それでしたらダンさまの杞憂ではありませんか?狙われているなどというのは」
「いや、あのミレディの顔は獲物を見つけた時のものだったな」
「ど、どんな表情だったのですか!とてもドヤ顔でしたか!?それとも!」
「なんで桃色嬢ちゃんは嬉しそうにしてるんだよ!」
「あ、ダンさま。この娘はちょっと病気なのですわ。ですからあまり気にされない方が」
「病気!?」
「あははははは」
「あまり深く考えますと巻き込まれてしまいますわよ、ダンさまも」
「巻き込まれる?よく分からないが、まあいい。じゃあそろそろ行くか。遅くなるとそれだけでミレディの機嫌が悪くなる」
「「はい、ダンさま」」
そうかぁ、そうなのかぁ、私、ミレディお姉さまに狙われちゃってるのですか。
まさか何もしていないのにフラグが立つとは思っていませんでしたから、ちょっと驚いているのですよ。
乙女ゲームだとダンさんとある程度イベントを熟さないとミレディお姉さまとの出会いイベントは発生しませんでしたから、どうやってお知り合いになろうかと考えていましたが本当にラッキーなのです!
ダンさまとのイベントは見る分には楽しいのですが、どう考えても体験するのはノーサンキューだったのです。
長距離走対決とか魔物狩り対決とか早食い大食い対決とか豆移し対決とか誰もやりたくないのですよ。
ですからそんなイベントを回避してもミレディお姉さまと知り合いになれるなんて、もう今日は嬉しすぎて眠れないかもしれないのです!やっふー!
あ、ちなみにミレディお姉さまもダンさんと同じ勝負を挑んでくる方でしたので、現実でもやりあう事になっちゃうのでしょうか?
いくらミレディお姉さまと一緒に居れるからと言ってもあれらの勝負をするとなると流石に。
「今から楽しみで仕方がないのです!むはー!」
「そ、そんなにミレディとお茶会が楽しみなのか?」
「ですからダンさま。リスティナの事は深く考えては」
「あははははは」
「ダン様、お嬢様方、どうぞこちらに」
テラスに付くとまだミレディお姉さまたちは到着していませんでしたがお茶会の準備だけはされているようでした。
このような場合はお茶会の席へ先に着くのではなく、主催が到着するまで別室で待機などして時間を調節するのがマナーなのです。
ですから少し離れた席に待機所が用意されてそちらに席を勧められました。
ただ婚約者がいるダンさんと同じテーブルに着くわけにはいきませんので私たちは別テーブルなのですけどね。
貴族といいますか高貴な身分な方たちの醜聞に触るような事はタブーですから当然と言えば当然の処置なのです。
その辺りは当たり前のように従事さんたちを含め全員理解していますから誰も文句を言わずに座りました。
そもそも伯爵令嬢のお茶会で文句を言う剛の者はいないと思いますけどね。
あ、ダンさんは爵位が上位ですから言える立場なのですが。
「流石ヤクトワルト伯爵家が用意する給仕ね、無駄のない鮮麗された動きだわ」
「ヤクトワルト家でもミレディさまはお茶に拘りがおありですから」
「確か白の派閥に所属されてますよね、ミレディさまは」
「リスティナちゃんはそんな事まで知っているのですか?」
さて、ここで出てきた派閥という話題なのですが、政治的な派閥ではなく流行を取り仕切る女流派閥になりましてこの国には大きく3つの派閥が存在するのです。
今私が言った白の派閥というのは王妃さまが主催する派閥でしてここ数年は現王太子妃さまが主導で流行を作られているそうなのです。
その白の派閥は王族でありながら革新派な流行を生み出す気質があり、東国出身である王太子妃は東国の物をどんどん取り入れているのです。
私には馴染みある物ですがこの国では珍しい着物風のデザインのドレスですとか陶磁器や和菓子風味の菓子などを発信させているのです。
他の派閥には黒と青がありまして、黒の派閥は分かりやすくて私が関係するノワール侯爵家が取り仕切る派閥なのです。
現在主導しているのはノワール伯爵夫人であるアデレードさまで、黒の派閥の特徴である伝統をベースに新しいモノを作っていくという流行を発信しております。
実はルビーちゃんの実家である王家御用達の菓子店マドリードは黒の派閥が発信源でして、皇太后さまが当時気に入ったから王家御用達になったという経緯があるのです。
現在では派閥に関係なく販売されていますが昔は黒の派閥でしか入手できなかったそうなのです。
他の派閥にも定着したのは今から十数年ほど前で、当時このグリンベルト魔法学園で学年違いですが交流のあった王太子妃とアデレードさまがきっかけだったそうなのです。
最後の青の派閥については詳しく知らないのですが母曰く日和見のどっちつかずの派閥だそうなのです。
白は王族ですし、黒は最大派閥ですから残りの青がそうなっても仕方がないと思うのです。
後余談ですが政治的な派閥でも白、黒、青と色で派閥を示しておりまして流行の派閥と一緒だったりするのです。
ただし軍務関係の派閥もありますからそちらは赤の派閥と言われており、ダンデライオン辺境伯家やヤクトワルト伯爵家は赤の派閥に所属してるのです。
ですからミレディお姉さまが白の派閥というのは珍しい事なので、私が知っている事にチェルシーちゃんは相当驚いていたのです。
乙女ゲームの設定ではミレディお姉さまは流行に敏感で新しいモノ好きと設定されていますから、政治的な事よりも自身の趣味で派閥を選んだという事なのですよ。
「お母さんはもともと黒の派閥の関係者だったのです。今は無所属なので関係ないのですよ」
「え?リスティナも貴族なの?」
「でも自己紹介ではたしか」
「母があの孤児院の出身でノワール侯爵家で給仕をしていた事があったという事での関係者なのです。ですから私は農村生まれの平民なのです」
「あ、あそこは昔侯爵家が管理していた施設だったわね。なるほど、それで黒蛇会との繋がりが」
「そのような事を私たちに話して大丈夫なのですか、リスティナちゃん?」
「お友達のチェルシーちゃんとルビーちゃんですから問題ないのです!」
「・・・恥ずかしい事言わないでよ、まったく」
「うふふ。うれしいです、リスティナちゃん」
「それに母はこの魔法学園でも有名人ですから隠しても意味がないのですよ」
「「え?」」
「言ってなかったですか?私の母はグリンベルト魔法学園の卒業生なのですよ。王太子さまや王太子妃さま、それにノワール家ご当主さまや侯爵夫人さまとご学友だったのです」
「「えええ!?」」
「年かさの先生方にエスティナという卒業生の事を聞けば知っていると思うのです」
「え?じゃあかなり優秀だったの?」
「聞いた事がありますね、その名前は」
「治療魔法で優秀な成績を修めたそうなのです」
「・・・まさか。確かリスティナちゃんはお母さまと似ているのですよね?」
「そうなのです!お母さんはとってもぷりてぃなのです!」
「じゃあ、やっぱり」
「チェルシーは知ってるの?」
「校門近くに植えられている樹の花にちなんで桜の聖女と呼ばれていた方ですね、リスティナちゃんのお母さまは」
「え?それってすごい有名人よね?だって平民の私でも知ってるもの。十数年前の戦役で幾多の命を救ったとかいう学生の治療魔法使いという事で」
そうなのです、お母さんはとっても有名人さんだったのですよ。
今話に出ていただけではなくもっと色々と逸話をつくちゃった美少女でして、未だにファンが大勢いるのです。
ですから下町にある治療魔法院は治療魔法師が増えて孤児院の子たちが手伝ってくれるに、前よりも利用者が増えて大変だったりするのです。
それにしても母が桜の聖女とかぴったりで、まさにヒロインにふさわしい可愛い称号なのです!
お母さんがヒロインの乙女ゲームがあったら私は絶対に購入してヘビーユーザーになっていた自信があるのですよ。
なぜ、前世のメーカーは出さなかったのでしょうね?未だにそれが残念で仕方ありません。
抗議と要望の手紙はどうやって送ればよいのでしょうか?
もし出せるなら今からでも出して、そしてソフトとハードをぜひこっちの世界にも送ってもらうのです!
そうしたらぷりてぃなお母さんを四六時中ずっと操作して堪能できるのですよ?
そう考えただけでもはぁはぁしちゃいますよね!むはー!
「あ、また意識が飛んでるわね」
「唐突ですね、いつも」
「そうね。でも、こういう場合は女の子の事を考えているのだけは理解したわ。したくなかったけど」
「あははははは」
お読みくださってありがとうございました。
ローズお姉さまに続く第二のライバルキャラな悪役令嬢さんがやっと登場です。
しかしリーナにとっては攻略対象の一人なのでワクワクしながらアップしております!