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乙女ゲームの世界に転生したが、悪役令嬢がチート過ぎて諦めました。でも攻略開始です!  作者: ゆうき
第1章 魔法学校入学編(ここから学園モノが始まります)
7/13

本物の獅子は圧倒的だったのです。でも、勝者は私です!

グリンベルト魔法学園で初めての体育の授業は中々波乱含みの物となりました。


魔法学校とはいえ体力測定などを行う最初の授業で波乱が起きるとは誰も想像していなかったでしょうが、とある人物が絡むことでそれは起きてしまったのです。


その人物とはヤクトワルト伯爵子息である次男坊レオさんなのです。


おや?体育なら獅子公のダン・ダンデライオンさんでは?と想像していたかと思いますが、私も実はダンさん絡みでイベントが発生するとは思っていたのです。


乙女ゲームでも実際にダンさんとのファーストコンタクトはここでして、リズム合わせの成績次第で会話イベントが発生するのです。


ここで失敗しても次回以降の授業で良い成績を出せば発生しちゃうのですけどね。


さて、ではどういう事が起きたかと申しますと、少し時間を遡って再現いたしましょう。


それは私たちの初デートお邪魔虫さん付きがあった日の翌日の朝、教室にチェルシーちゃんが登校したときから始まったのです。





「「チェルシーさんおはようございます」」


「はい、おはようございます、ルビナスさん、リスティナさん。今日の授業楽しみですね」


「確かにあの服を着て運動するとどうなるか楽しみですわね」


「私も楽しみです。お二人の可愛い運動着姿が見れちゃいますから!むはー!」


「・・・朝からこの調子なのよ、この子」


「そ、そうですか」


「おい、チェルシー」


「あ、お、おはようございます、レオ様」


「話がある、ちょっと来い」


「え?今からですか?すぐに授業が始まりますが・・・」


「授業なんてどうでもいい、こい」


早朝からお邪魔虫さんがチェルシーちゃんに集ってきて、どこかへ連れ出そうとしているのです。


この方はチェルシーちゃんの実家であるダグル男爵家の主家筋であるヤクトワルト伯爵家の人ですからチェルシーさんに命令口調なのは分かります。


分かりますが婦女子を、可愛い美少女であるチェルシーちゃんを強引にどこかへ連れて行こうなどと愚行を働くのは許せません。


ここはガツンとやるしかないようですね。


「ちょっとお待ち」


「おはようございます、チェルシーさん」


「おはようございます、ラビリオ様」


「おや、どうかされましたか?顔色が優れないようですが」


「いえ、その・・・」


お邪魔虫さんを排除しようとしたら別のお邪魔虫さんが割り込んできました。


むぅ、図ったようなタイミングで出てくるとは実はストーカーだったのですね、ラビリオさんは。


「あなたはなぜ不満そうな顔してるのよ?」


「何でもありませんよ?」


「ラビリオ様。今から私がチェルシーに用事がありますのでもうよろしいですか?」


「そうなのですか、チェルシーさん?」


「そ、その・・・」


「ふむ、どうやらチェルシーさんは用事がなさそうですね」


「・・・失礼ですがこれは当家に関する事です、ラビリオ様には関係ないのではありませんか?」


「まさか、この学び舎で貴族位を持ち出すのですか?学校側が平等と言っていますよ」


「それは学校側の建前です。いくらラビリオ様でも当国の貴族制度を否定される謂れはございません」


なぜでしょう、ラビリオさんがチェルシーちゃんの危機に登場した主人公ぽい事をしてますね、謎なのです。


あ、今のうちにチェルシーちゃんを回収しておきましょう。


ラビリオさんがちょうどよいデコイになってくれてますからね。


はい、回収完了なのです。


チェルシーちゃん、しーですよ、しー。


声を出したらばれちゃいますからね。


こくこく頷くチェルシーちゃんもきゃわいくて、どうにかなっちゃいそうなのです!


「・・・やってる事は褒めるけど、あなたもあれよね」


どうしました、ルビーちゃん?


ああ、チェルシーちゃんだけ構ってたから拗ねちゃいました?


仕方ないですねー、ちゃんとルビーちゃんも可愛がってあげますからね!


朝から両手に花なんてついてますよ、やっふー!


などと楽しんでいる間もラビリオさんとレオさんのやり取りが続いているのですが、ここで新たなるお邪魔虫さんが参加したのです。


しかも予想外の人物、絶対に絡んで来ないであろう方でした。


「朝から何を騒いでるんだ?」


「ダン様、おはようございます」


「おや、ダンさんですか。今日は遅いですね」


「おはようさん。で、何を言いあってるんだ?」


「ラビリオ様が当国の貴族制度に物申されましたので」


「話をすり替えないで下さい。私はあなたが無理やりチェルシーさんを、婦女子に命令していた事に問題定義しているのですよ」


「庶家が主家に従うのは当然ではありませんか。これは当国では当たり前の事なのです」


「ああ、ごちゃごちゃうるさい。お互いの主義主張が違うって事だろ?だったら勝負して決めればいい」


「「は?」」


なんとこのクラスで一番位が高い貴族であるダンデライオン伯爵家嫡子のダンさんが割り込んで仲裁?混乱?を呼び込みました。


あ、そうそうダンさんの家が一番貴族位が高いと言った理由なのですが、本来であれば公爵家の三男さんが一番となります。


ただしダンデライオン家は正式にはダンデライオン南方辺境伯爵家、フランディル王国の南部一帯を治める大領主なのです。


それに引き換えこの国の公爵家は領地を拝領されない貴族ですから、血筋だけは王族に連なりますが実質的には伯爵家と変わらない扱いなのです。


この辺りは前世の知識と混ざってややこしいのですが、この国では階級の高い方から国王、侯爵、辺境伯、公爵、伯爵、子爵、男爵という順位になるのです。


これは神聖ランディン帝国から続く貴族階級制度なので、正当後継を称しているこの国ではそのまま採用しているそうなのです。


ここまで説明しましたが、正直どうでも良かったですね。


それよりも目の前で発生しているイベントの方が重要なのです。


なにせチェルシーちゃんに係る話ですからね!


「今日は体育の授業があるだろ?そこで決着を付ければいい。そして勝った方がダグル男爵令嬢の交際申し込み権を得る。どうだ?」


「な!?なぜ交際の話になっているのですか!」


「こ、こ、交際!?」


「え、えええええ!?」


「あれ?違ったのか?俺はてっきり二人で令嬢に交際を申し込んでいて喧嘩していると思ったんだが」


「「「違います!」」」


「「え?」」


「二人はチェルシーちゃんに相応しくありません!そして誰にも渡しませんよ!」


「リ、リスティスさん!?」


「あなた、またややこしくなる事を」


「だってルビーちゃん、片方はヘタレでもう片方は最低なんだよ?チェルシーちゃんみたいなきゃわいい娘さんに相応しくないのです!」


「誰がヘタレですか、リスティナさん!」


「へ、平民の分際で私を最低だと!」


「あ、ラビリオさんは自分がヘタレだという自覚があったのですね。あとレオさんはその発言だけで最低と言われても仕方がないと思いますよ?」


「こ、この平民風情が!」


流石にちょっとやり過ぎた感はありましたが、ここはチェルシーちゃんを賭けた戦いなので引けないのですよ!


レオさんは私が平民だからと婦女子とか関係なしに殴りかかってきましたが、これは反撃しちゃってよいのでしょうか?


取り敢えず防御魔法で防げばよいですかね、えい。


「おっと、流石に手を出すのはまずいだろ、レオ伯爵子息」


「ぐっ、何をなさるのですかダン様。なぜ平民を守るのですか?この平民の女は明らかに貴族に盾突きましたよ!」


む、防御魔法に反応する前にダンさんが腕を掴んじゃいましたね。


そういえばこの人脳筋なのですが、婦女子には優しいという設定がありました。


まさかこのタイミングで助けられるとは思いませんでしたし、これはダンさんへの印象を変えた方が良さそうなのです。


「だから勝負で決着を付けろって。じゃあ、そういう事で体育の授業で勝負だな。これは楽しみだぜ」


「は?ダンさんも参加されるのですか?」


「おう、御子には負けねえぜ?あとそっちの桃色嬢ちゃんにもな」


ダンさんは爽やかな笑みで勝負に参戦表明して、ついでに私まで参加する事になりました。


どうしてこうなったのでしょう?






「リスティナさん、大丈夫ですか?」


さて問題の体育の授業時間となったのですが、私の目の前には困り顔の天使さんが、違いました、心配そうな表情の美少女、チェルシーちゃんがいます。


とても可愛いので写真に撮って永久保存したくなりましたが、この世界にはカメラがありませんので脳内保存でとどめておきました。


これでいつでも再生(もうそう)可能なのですよ!むはー!


「そうよ、リスティナ。いろんな意味であなた大丈夫なの?」


なおルビーちゃんは呆れ顔なのでした。


呆れ顔でもきゃわいいルビーちゃんは最高なのです!


「大丈夫?と聞かれましても何の事だか分かりません」


「その勝負の事ですよ。無理してませんか?」


「私は貴族に平然と暴言を吐くあなたの頭を心配しているのよ、勘違いしないでね」


何気にルビーちゃんの言葉も暴言だと思うのですが、私は可愛い美少女からの言葉はちゃんと受け止める良い子なのです。


そして流石ツンデレさんなルビーちゃんですね、勘違いしないでよ、頂きました!やっふー!


「特に問題ありませんよ。それよりもやり過ぎないように気を付ける方が大変なのです」


「そ、そうなのですか?」


「うーん、チェルシーさん。リスティナの事だから正直ダン様しか相手にならないと思うわ」


「え?でも相手は男の子ですよ?」


「そういう意味では大丈夫だわ。リスティナが言う通りやり過ぎないかが不安なぐらい」


「そ、そうですか。それにしても変な事になりましたね」


「そうね。あのままレオさんに連れていかれるよりはマシだと思うけど、交際権?については正直ダン様の思考もリスティナレベルで信じられないわ」


「そ、そうですね、正直助かりました。その件に関してはラビリオ様とダン様には感謝してます」


「私レベルでなんて酷いのです、ルビーちゃん。私は脳筋ではないのです。あと交際権ではなく、お昼ご飯を一緒に取れる権なのです」


「脳筋ってなによ?まあ、良いわ。どうせリスティナかダン様が勝つでしょうから」


「もちろん勝っちゃいますよ!だって可愛いチェルシーちゃんの為ですからね!お邪魔虫さんたちはまとめて駆除なのです!むふー!」


「無理はしないでくださいね」


「レオさんは解るけど、ラビリオ様を害虫呼ばわりは続けるのね」


「ルビナスさん・・・リスティナさんみたいになってきましたね」


「うっ・・・ショックだわ」


「私とルビーちゃんは仲良しなのです!そしてチェルシーちゃんを害虫から守る同盟でもあるのです!」


「お願いだから私を巻き込まないでよ?」


それは巻き込めって事ですね、分かってますよルビーちゃん!





さてさて、今回の勝負に付いてですが明らかにダンさんが有利すぎて勝負にならない、という意見が約二名から控え目ながらも出ましたので多少変則的な物になりました。


その方法とはダンさん対ラビリオさんとレオさん対私、という変則タッグマッチです。


ラビリオさんとレオさんのペアの成績をどうカウントするかで少し揉めましたが、脳筋さんであるダンさんが二人いっぺんに相手すると豪語しましたので単純に成績を足して一つの成績となりました。


ラビリオさんとレオさんのペアが勝利した場合、二人の成績を比べて優劣を付けるとなっております。


この方法だとタイムアタック競技は勝負できないので、それ以外の成績で決めようになりました。


これらの勝負方法が決定したときにレオさんが嫌な笑みを浮かべていたので、彼が仕掛けたルール決めだったようですね。


ただ私というジョーカーがいますので、レオさんの思い通りには行かないのですけどね。


なお私の扱いですが、どうせチェルシーさんと食事をご一緒するので参加してるだけみたいな感じで見られています。


一応勝負ですから私が勝利した場合はお邪魔虫さん三人組は除外して食事を楽しむというルールをねじ込みました。


ダンさんを含めた男性陣は私を軽く見て了承してくれましたが、私の思い通りに事が運んでいるので、とてもご機嫌状態なのです。


さあ、私の実力を見せてあげますよ!


「・・・リスティナはやり過ぎないようにしなさいよ」


「負けられない戦いがそこにはあるのです!」


「本当にやり過ぎないでよ!」


それでは勝負開始なのです!


「ちょっと、返事しなさいよ!」


開始ったら開始なのです!むふー!


「ぐっ、また無視されたわ」


「ルビナスさん、気にしちゃだめです」


「そ、そうね」





まずは反射神経を図る競技なのですが、教師の方々が投げるボールをひたすら避けるという物なのです。


最初のうちは正面だけ飛んでくるのですが時間が経つと横から後ろからと死角を突いた厭らしい物に進化していくそうなのです。


一つでもボールが当たるとそこで終了となり、最終的には百個のボールが投げられる競技。


ほとんどの生徒が十個も避けれないとても難易度の高い競技の一つとされています。


なお、魔法の使用は全面禁止となっておりますので、女子や大柄な男子は不利なものとなっております。


では、軽くいきましょうか。


「球速は大した事がないのですね。火魔法程度なのですか」


「ねえ、やり過ぎないって言わなかった?」


「別にやり過ぎてないですよ?冒険者の方だったらこれぐらい当たり前に避けちゃいますし」


「私と会話しながら見てない方向から飛んでくるボールを避けるのは絶対普通じゃないわ」


「先生方が優しいから分かりやすいのです。だって気配を消さずに投げてますよ?」


「気配なんて普通読めないわよ!」


「あ、終わりましたね」


「全部避けてしまいましたね」


「そうね、ある意味予想通りだわ。認めたくないけど」


「私のようにしていればルビナスさんもチェルシーさんも全部避けれますよ、頑張ってください」


「絶対無理よ!」


「む、無理だと思うなぁ」


そうですか?私はこれと似たようなことを幼少期に、冒険者ギルドの先輩方にしてもらってましたから大丈夫だと思うのです。





次に私たちがやってきたのは遠投に関する競技でボールをどれだけ遠くに投げられるかという物です。


凄く単純で分かりやすい競技ですから解説は必要なさそうですね。


「リスティナさん、遠投とかもコツが有ったりするのですか?」


「腕の力だけで投げない事ですね。全身のバネを使って投げれば女の子でも結構距離がでますよ」


「ちなみにこれもよくやってたの?」


「冒険者に遠投はほとんど必要ありませんからね、無いですよ。ただ石投げとかの練習はよくやってました。すごく便利なのですよ、石投げ。手頃な物がその辺に落ちてますから」


「中距離用ですか。でもそれでしたら魔法で済んでしまいませんか?」


「魔法が使えない時に便利ですし、呪文の詠唱するよりも投げた方が早いですよ」


「リスティナの場合詠唱しないじゃない」


実際に魔法を詠唱破棄して使えるようになってからは石投げは使ってませんね。


ですが本当に便利なんですけどね、狩りの時とか。


あと遠投が必要ないと言ったのは弓で射た方が遥かに距離が出ますから冒険者たちは遠投技術なんて磨かないのです。


コツは前世知識から披露させていただきました。


うん、やっぱり魔法なしではあまり飛びませんね。


それにしてもこれを測定して、何の役に立たせるつもりなのでしょうか?


実はそっちの方が気になる競技でした。





次はどれだけ重い物が持てるかという競技でして鉄の塊を持ち上げるという単純な競技なのです。


小さな物から大きな物まで重さ別にたくさん塊が用意されておりまして、徐々に重さを上げていくいう競技。


これ、どう考えても女の子には不利な競技ですね。


「これ、女子にさせてもほとんど持ち上げれないわね」


「そ、そうですね。私はこれで限界です」


「私はラビリオさん越えさえできれば問題ないですね」


「ちょっとリスティナ。あなたやり過ぎてないの、それで?」


「これぐらい平気ですよ?院だと子供を抱っこしたりしますからまだまだ余裕ですね」


「あー、うん。あの怪力は魔法なしだったのね」


「す、すごいですね、リスティナさん。男の子より力持ちだなんて」


全身金属鎧の大人を引きずった経験があるぐらいですから、まだまだ余裕なのです。


あ、これで最後ですか、うんしょ。


「え?うそ、全部行けたの?」


「もっと重くても大丈夫なのですよ。これだと大人より軽いですからね」


「リスティナさんの腕って私より細いのに、なぜ持ち上げられるのでしょう?」


「これ、ダン様にも勝っちゃいそうね」


流石に魔法なしだと厳しいと思ってたのですが、上限が高くないのでもしかしたら勝てちゃうかもしれないのです。


今回の勝負ではチェルシーさんが掛かってますので何とか勝つつもりでいましたが、このままだとダンさんのルートに突入しそうで考えものですね。


どうしましょうか?




さてそんな調子でどんどん競技を消化して行ったのですが、どうやら私の身体能力は予想以上に高かったようでして、ほとんどの競技で最高得点をたたき出してしまいました。


ちらっとお邪魔虫さん三人組の成績を覗いたのですが、ダンさんはぶっちぎりで最高得点を叩きだしまくり、ラビリオさんとレオさんペアは芳しくないようです。


「ふん!さて、こんなものか」


「くっ、流石は獅子公と渾名される男ですね、ダンさんは」


「ここまでとは。計算が完全に狂ったな、どうするか?」


などと完全にダンさん圧勝ムードなのです。


ラビリオさんは文系な人ですから運動神経は壊滅的ですし、レオさんは完全に名前負けして自称軍師タイプの人のようですね。


そんな二人の成績を足しても勝てそうにないぐらい、ダンさんの身体能力は圧倒的なのです。


このままだとダンさんにロックオンされて非常に面倒な事になりそうなのですよ。


本当にどうしましょうか?


「あ、チェルシーさんも今からこの競技ですか?」


「はい」


「くそっ、どうしたら・・・おい、チェルシー」


「何でしょうか、レオ様?」


「こんな勝負やめだ。放課後にでも俺のところに来い」


「何をおっしゃっているのですか、レオさん?いきなり約束を破るだなんて、許されると思っているのですか?」


「あなたには関係ないでしょう、元々!」


「チェルシーさんが嫌がっているではありませんか」


「関係ない!おい、チェルシー。主家の俺の言う通りにするんだ!」


私が悩んでいる間になぜかレオさんが切れちゃっておかしな事になってますね。


確かにこの勝負に勝とうが負けようが別の機会にチェルシーちゃんを確保すればレオさんの思惑は達成できますからね。


ダンさんだけでも面倒なのに、レオさんがもっと面倒な事を言い出したのです。


「あ、ルビーちゃん。チェルシーちゃんを確保しておいてくださいね」


「やっぱり巻き込まれたわね。でも、友達の為だから良いわよ」


「すみません、ルビナスさん」


「良いのよ、友達なんだから」


ダンさんは我関せずで競技に集中してますし、今のうちにレオさんを排除しちゃいますか。


「盛り上がっているところすみません」


「なんだ、平民」


「あなたも下がっていてください、リスティナさん。彼の事は僕に任せてチェルシーさんの側にいてあげてください」


「本当に盛り上がってましたね。ところでレオさん。チェルシーさんにどのようなご用事なのですか?」


「む?平民には関係ない事だ、あっちに行ってろ」


「ですからリスティナさんはチェルシーさんの」


「用事もないのに婦女子を無理やり連れて行こうとするのはおかしいと思うのですが。いくら主家と庶家の関係といいましても」


「また僕を無視ですか」


「おい、平民いい加減にしろよ?いくらここが出自に関係ない場所だからと貴族に盾突くなら容赦しないぞ!」


「私の予想なのですが、昨日の件で聞きたい事が、いえ、紹介しろと言いたいのでは?」


「・・・だったらどうした?」


「でしたらチェルシーさんに聞いても意味がありませんよ」


「なぜだ?俺は見たのだぞ?あいつがあの袋を持って歩いているのを」


「確かに購入されましたけどね、チェルシーさんは。でも、意味がないのですよ」


「なぜ平民のお前が分かるんだ!」


「なるほど、彼は新緑魔法具店に用事があるのか」


いつ見かけたのか知りませんが、店長さんのお店で購入したら他では出していない袋に入れて渡されますからね。


知っている人なら店長さんの店でチェルシーちゃんが買い物をしたと分かるはずなのです。


「くっ、だからどうした!あいつが買えたんだ。だったら俺でも買えるだろ!」


「無理だと思いますよ、レオさんみたいなタイプの方はなおさら」


「なんだと!」


「確かにあのエルフなら断りそうですね」


「なぜあなたがそのような事を!」


「僕も一緒に居ましたからね、その場に」


「なっ!?ではあなたも購入したのか!」


「いえ、買えませんでしたよ。紹介があっても無理でしたね」


「私は紹介してませんよ、ラビリオさん」


「う、そうでしたね。やっぱり何とかなりませんか?」


「私の紹介があっても無理だと思いますよ。店長さんは我侭さんですからね」


「ま、まて、平民。今なんて言った?」


「私の紹介があってもラビリオさんは神官ですから売ってもらえない、と言いましたが」


「なぜ平民のお前が新緑魔法具店を紹介できるのだ!」


「おいおい、うるさいぞ、お前ら。でも、気になる事を言ってたな、今」


む、レオさんを排除している途中なのにダンさんが混ざってきましたね。


空気を読んで競技に集中していてくれれば良かったのですが、流石脳筋さんなのです。


「で、リスティナ嬢があの店とコネもってるのか?」


「はい。店長さんとは仲良いですよ」


「へぇ」


「おい、平民!俺を紹介しろ!」


「嫌ですよ、レオさんは」


「なんだと!」


「じゃ、俺を紹介してくれよ。俺もあの店の武具が欲しいんだ」


「んー、ダンさんなら買えちゃいそうなのですよね。条件次第で紹介しますよ」


「分かった、飲むから紹介してくれ」


「じゃあ紹介状でも書きますね」


「おい、平民!なぜ俺はダメでダンは良いのだ!」


ダンさんは本当に買えそうなんですよね、店長さんは彼みたいなタイプが嫌いじゃないみたいですから。


でもレオさんみたいな如何にも貴族ってタイプの人は絶対に買えませんし、入店すらできないと思うのです。


「くっ、この!避けるな!」


「へぇ、良い身のこなししてるじゃないか」


「え?これぐらいならゴブリンの方が鋭いですよ?」


「お、俺をゴブリンと一緒にする、な!止まれ、平民!」


「実戦経験済みか、リスティナ嬢は。面白いな」


「あ、私男性が苦手ですからあまり近寄って来ないでくださいね」


「そうは見えないがな。で、それが条件か?」


「・・・本当に何者だリスティナは」


「それも有りなのですが、今回はレオさんをどうにかして貰う事にします。チェルシーさんに今後近寄らないようにして下さい。それが条件なのです」


「な、貴様!平民の分際で貴族の問題に口を出す、な!ええい、いい加減止まれ、この!」


「よし、それで手を打とう。おい、レオ伯爵子息」


「くっ、この!」


「リスティナ嬢にも多少問題はあるだろうがお前の行いは貴族らしからない。よって辺境伯嫡子の名においてお前を断ずる」


「なっ!?なぜ平民如きに従うのだ、ダン!」


「ほう?伯爵家風情が辺境伯家嫡子の俺を呼び捨てか。お前の言う貴族の流儀に反するんじゃないか?不敬罪も追加だな」


「くっ、それは!」


「取り敢えず眠っとけ」


あ、ダンさんが殴っちゃいましたね。


見事に顎を掠めるパンチでしたし綺麗に落ちちゃったようですね、レオさんは。


「さて。俺はこいつを運んでくる。御子、もう勝負はいいよな?」


「・・・ええ。彼がチェルシーさんに近寄らないのであれば僕もいう事はありません」


「その辺は任せてくれ。たく、あの家は面倒なやつが多すぎるぞ」


などと言ってレオさんを引き摺ってダンさんが退場なのです。


乙女ゲームでも思いましたが、ダンさんは豪快過ぎなのですよ。


そして昔の青春モノのようなイベントが多かったのですが、今回のこれもそれっぽかったですからね。


男性には全く興味ありませんが、ダンルートのイベントはなんだか昔の青春ドラマを見ているようで中々楽しかったのです。


それはさておき、面倒なお邪魔虫さんはこれで駆除完了なのですよ!やっふー!


「リスティナさん!」


「あ、チェルシーちゃん。もう安心してくださいね。ダンさんがうまひゃあああああ」


「もう、心配掛けさせないでください!」


「本当よ。リスティナの動きを見てたら当たりそうにないとは思ったけど、ハラハラしたわ」


「そ、そうですね。本当にリスティナさんは何者ですか?」


ああ、私は今とても幸せなのです。


とても可愛い、私の天使な妹候補ちゃんに抱き着かれているのですから。


柔らかいし良い匂いがしますし、もう、本当にはぁはぁしちゃいますよ!むはー!


「心配したんだかひゃああああああ」


「ちょ、ちょっとリスティナ!あなた何やってるのよ!」


「チェルシーさんとリスティナさんが」


「うう、本当にチェルシーちゃんはきゃわいいのです!良い匂いがするのです!柔らかいのです!」


「ちょっと、リスティナさん、は、放して下さい!」


「嫌ですー。もう放さないのですよー!さあ、このままお部屋に行きましょうね。授業なんて受ける必要ないのですよ!むはー!」


「あ、ダメだ、これ。リスティナが暴走してる」


「暴走!?」


「ひゃああ!?ルビナスさん、助けて下さい!」


「そうなったら中々止まらないからあきらめた方が良いわよ。・・・これで本当の意味で友達になれたわ、チェルシー」


「どうしたのですか、ルビナスさん!顔色が悪いですよ!そ、それに抜け出せないです!?」


「さあ、チェルシーちゃん。これからは私の事をリーナお姉ちゃんと呼んでね」


「ええ!?あ、ダメ、全然抜け出せない!ルビナスさん、ルビナスさん、ルビーちゃーん!」


その後十分にチェルシーちゃん成分を堪能した私は、その日一日とても幸せな気分で過ごしたのでした。


やっぱりきゃわいいは最高なのです!







なおレオさんの処遇なのですが、しばらく自宅謹慎の停学処分となったそうなのです。


上位貴族さんの権力って恐ろしいですねー。

お読みくださってありがとうございました。


バトル展開を期待させておいてあれですが、この話はヒロインが無茶をやる話ですので(

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