学園モノのオープニングは入学式の日の校門前からがテンプレートだと思います。
短編小説「乙女ゲームの世界に転生したが、悪役令嬢がチート過ぎて諦めました」の連載版です。
短編の方が予想以上に評価頂いたので、連載する事にしました。
よろしければお読みください。
流れる風に身を任せると、ほのかに花の香りが感じられます。
空を見上げれば日の光りが眩しくて、思わず手を額にかざしてしまう。
耳を澄ませば誰かが囁く話し声と車輪の轍が刻む音。
視線を前へ向ければ大きく開いた門の先には石畳が続き、大きな噴水の背後にはベルサイユ宮殿のような豪華な建物が見える。
石畳、道行く人々は皆若く、そろいのマントを羽織っている。
今日は魔法使いの卵たちが通う王立魔法学校であるグリンベルト魔法学園の入学式。
桃色の花が風に吹かれて舞う、新しい生活を始めるには絶好の春日和です。
私はそんな日に、この魔法学園に入学するべく、門の前に立っています。
君はだれ?と言う誰かの声が聞こえましたので、軽く自己紹介をさせてもらいますね。
私の名前はリスティナと言いまして、愛称はリーナ、今年の春に13歳になったばかりの少女です。
髪は桃色、瞳は青、肌は日焼けとは無縁の白さ、背も同年代では低いので、守ってあげたくなる系の可愛さです。
自分で何を言ってるんだ?とツッコミが来そうなので理由を申しますが、ずばり私は母にそっくりなのです。
その母ですが、今年で30歳を迎えるのに見た目が10代半ば、私と並ぶと姉妹に見える可愛い美少女なのです。
そう、きゃわいいのです!
胸は薄いのが偶に傷ですが、そこはほら、似合っていますからOKなのです!
あ、話がそれてしまいましたね。
そんな私には秘密が沢山ありまして、やっぱり美少女には秘密が付き物なのです。
まず、その一つが私がこの国フランディル王国の侯爵ノワール家の血を引いている、ということです。
ただし私はど田舎の農村で生まれ育ちましたからただの平民でして、母が元々侯爵家でメイドをしている時に現在の当主さまとの間に、という訳なのです。
お家騒動の元になるのを危惧した母は私を身籠った時に暇をもらって田舎に引っ越し、私は田舎生まれと相成ったのです。
この母の判断は全米が涙するぐらいの大絶賛なのですが、父を自称する侯爵家当主さまはちょっとアレなので私と母が王都まで連れ戻されました。
なんでも当時、お家騒動になるから私が侯爵家血族を名乗る権利を放棄して、私たちはもう会わない、探さないと約束していたそうですが、まあ、当主さまがアレなんで、偶々私たちが見つかったので連れてきた、という訳なのです。
ご当主さまのお話では、ずっと探していたらしいですが、母は中々の策士でして、灯台下暗し、王都から1日も離れていない王族直轄領に居たのですよ。
13年間も見つけられないって、侯爵家は大丈夫なのでしょうか?
いえ、そもそも本当に探していたかも怪しいですね。
秘密の血筋、という公表できないモノを持っている私ですが、もう村に住めませんから王都で暮らしています。
母は治療魔法の達人ですからその腕を使って村でも治療院を開いておりましたし、王都でも治療院に就職して私たちは宿舎に住み込みしております。
この治療院の医院長が母の魔法学校時代の恩師らしく、当時も可愛がってくれていたそうで、二つ返事で就職決定です。
母がお願いしたのですから当然ですね。
なにせ、お母さんはきゃわいいですから!
次に私の秘密その2ですが、私は男性が若干苦手でして、リアル男子はのーさんきゅー、なのです。
どれぐらい苦手か、と言いますと、話しかけられても無視したくなるぐらいでして、村に居る当時、私に話しかけてくる男の子は少なかったのです。
嫌われてただけじゃ?と思われるかもしれませんが、そうでもありませんよ?
良く男の子と遊んでましたし、幼女の頃など男の子相手にちゃんばら三昧で、よくさんどばっくにしておりました。
私が遊びに誘うと首を横に振る男の子は皆無なのです。
中には目に涙を溜めるほど感動に打ち震える子がいたぐらいですから。
おそらく男の子特融の恥ずかしさで私に話しかけられなかったのでしょうね。
ちなみに大人の男性からは可愛がられましたよ、母に似てましたし。
お母さんはきゃわいいので、私も可愛かったのです!
この話をするとみんなから、どこが男性が苦手なの?と聞かれますが、苦手なのは苦手なのです。
だって、男の子と話すより、女の子と話してる方が私は楽しいのです。
それが証拠だと思います。
これに関連する私の秘密その3ですが、私は可愛い娘さんが大好きなのです。
そう、私は百合なのです!
百合と言いましても、結婚したい、恋人になりたい、という訳ではないですよ?
私がしたいのは、可愛い女の子、綺麗な女の子を愛でたいのです。
出来ましたら私のお姉さまになって欲しいのです。
可愛い美少女、綺麗な美少女と同じ時を同じ目線で、そして私が甘えて過ごしたいのです。
可愛いお姉さまが居たら、もう、私は何も必要ありません。
可愛いは正義なのです!
さて、最後の私の秘密その4ですが、これは大した事のない秘密。
ちょっとこの世界が乙女ゲームと呼ばれる世界の中で、私はそのゲームのヘビーユーザーだった転生者というだけなのです。
今日、私が魔法学園に入学する事でゲームがスタートするとかそんな程度の秘密なのです。
ヒロイン役に転生したとかどうでもよい秘密なのです。
だって、私、攻略対象の美少年たちに興味ありませんから!
私が興味ある、心惹かれるのは、可愛い子だらけの女生徒だけなのです。
その中でも悪役令嬢である3人の美少女だけなのです。
特に悪役令嬢の1人である私と血を分けたお姉さまであるロザリア・ノワール侯爵令嬢、愛称ローズさまだけなのです。
その美少女たちにお姉さまになって頂きたいのです!
「私はここに宣言します!卒業するまでにお姉さまを百人作ります!だって可愛いは正義ですから!」
「「「「「「「はい?」」」」」」」」
私が嵌っていた乙女ゲーム「乙女たちのロンド~愛は戦いの中でしか輝かない~」では、主人公のヒロインが魔法学園の校門前で宣言した直後にオープニングムービーが流れまして、そこまでがゲームのオープニングになります。
ちなみにゲームのヒロインの宣言は「今日から私がんばります!そしてお母さんみたいに治療魔法科でトップを目指します!」となっておりまして、それを入学式に向かう同級生たちが目撃しているのです。
そしてムービー終了後に悪役令嬢の一人であるローズお姉さまが登場してヒロインを無表情で見ている、という流れになってります。
ですが今ローズお姉さまはトレードマークである黒薔薇刺繍の灰色の扇子で口元を隠そうともせず、唖然とした表情で私を見ております。
そんな表情も可愛いです、ローズお姉さま!
あ、私が見ている事に気が付いたのか、デフォルトの無表情に戻られて歩き出しました。
他のご令嬢やご子息方はまだ唖然としております。
さあ、私の野望、宣言通りにまずはローズお姉さまから攻略開始です!
「ご一緒してもよろしいですか?」
「・・・」
「あの、ローズおね」
「そう呼ぶ事は許されておりませんよ」
ああ、ダメだしされました、お姉さまと呼ぶ事を。
とても、とても私は悲しいです。
「なぜ、嬉しそうな表情をしてるのですか?」
え?顔に出てました?悲しそうな表情をしているはずですが、ゲームでも無情にも拒否されてそうでしたし。
でも、仕方ないですよね。
前世でも大好きで慕っていたお姉さまと同じ声で私に話しかけてくれたのですから。
例えその声が拒絶の色を含んでいようと、その声が聞けただけではぁはぁしちゃいます。
それにちゃんと私には解っているんですからね!
お姉さまの心の中では私に声を掛けられて、妹に声を掛けられて、喜んでいるはずなのです。
だって、可愛い妹に声を掛けられて嫌なはずがない、いえ、むしろ感涙にむせるはずですから!
それにしてもローズお姉さまの声は本当に美しくて、脳が溶けるほど甘い。
これだけでご飯3杯は行けます!むはー!
ああ、この時間帯に登校して正解でした。
朝からローズお姉さまと会話ができたのですから!
今日はきっと良い事があるに決まっています。
この後ゲームでしたら選択肢が出て、勇気を出してローズお姉さまを追い掛けて入学式に向かうのについて行くか、しばらく悲しみに胸を痛めて立ち尽くしてから一人寂しく入学式に向かうのか選ぶところです。
ですが、私はその選択肢ではなく、幻の第3の選択肢であるローズお姉さまと楽しく入学式へ向かうを選択します!
「さあ、私と一緒に行きま、あれ?」
気が付けばローズお姉さまはすでにこの場におらず、それどころか他のお嬢様方も居ませんでした。
どうやら妄想に浸り過ぎて、かなり時間が経っていたようです。
私に声を掛けただけで時空の中に封じ込めるというチート能力を持っているだなんて、さすがは最強の悪役令嬢です。
むう、やっぱりローズお姉さまは強敵なのです!
グリンベルト魔法学園は貴族院を兼ねた魔法学校ですが、入学式はどこでも一緒のようで、私の前世で体験したお嬢様学校の入学式とほぼ変わりませんでした。
ただ、その規模があまりにも大きい、大きすぎるのですが。
国中から才能のある子供を集め、貴族の血族がこの学園に集まってくるのですから生徒数が半端ない数になります。
それを一つの場所に、一つの建物の中に集めようとするとその会場だけでもかなりの大きさです。
貴族の血族、時期によっては王家の血族が通う場所なのですから設備も装飾もそれはそれは豪華になります。
また、魔法学校というぐらいですから至る所に魔法装置が使われており、贅沢な仕上がりになっています。
宮殿の中で学び、成長していく、と考えたら確かに凄いのかもしれません。
でも、所詮は人がやる事ですから中身はほとんど一緒のようです。
そんな入学式に参加した私は、なぜか今年度の入学式に最後の入場となってしまい、本来なら王族が最後のはずが私になってしまいましたら、大いに目立ちました。
遅刻寸前で飛び込んだだけなんですけどね!
なお、王族と言うのはゲームでの攻略対象の一人であるこの国の第二王子であるシャルル・フランディル殿下です。
この方、銀髪青眼に華奢な体躯と線の細い若君でして光魔法とレイピアによる剣術の達人という絵に描いた様な王子様なのです。
常に笑みを浮かべ、民の覚えも良く、市街へ頻繁に下っては平民とも交流しているなんて設定を持っております。
魔法といい、見た目といい、人気といい、まさにメインを張るにふさわしい美少年なのですが、王位継承権第一位の第一王子に対してコンプレックスを持っていて闇を抱えていたりします。
ゲームではこの辺りを考慮してイベントの選択肢を選んでいけば、彼からの愛が手に入いります。
ただし、交流を始める為にはステータスでレベルが20以上、教養と礼儀作法、剣術のパラメーターが高くないとフラグすら発生しないというとても攻略が難しい相手。
ちゃんとステータスをクリアすればシャルル王子からお茶会への招待状が届くのですが、当然のように彼の婚約者である悪役令嬢ロザリア様が付いてくるというご褒美がまっています。
あ、王子ルートのゲームクリアを目指すのであればロザリア様が最大障害になりますからここの選択肢次第では、その後一切交流できないという事もあるほど難易度の高くなっております。
ですが、まあ、私は王子には一切興味がなくクリアしなくてもいいので、ルートだけ突入してローズお姉さまとお茶を楽しむ時間をゲット!の為にがんばるだけですけどね。
そんな興味の欠片もない王子さまの話を長々としている理由ですが、入学式会場に急いで飛び込んでしまったので、入場してすぐだったシャルル殿下と至近距離で出遭ってしまったのです。
ですが王子が居ようと全く気にせず隣に居たローズお姉さまを見つけて思わず頬を染めてしまったから何やら勘違いさせたようでして、声を掛けられてしまったのですよ。
無視しても良かったのですが、さすがに相手は王族ですからそれも出来ず、軽く会話をしておきました。
「慌てていたようだけど、まだ式は始まっていないよ」
「・・・はふー」
「大丈夫かい?」
「あ、ちょっと静かにしてもらえます?じっくりローズさまを愛でたいですから」
「はい?何と言ったのかな?」
「・・・」
「お声が掛かっていますよ」
「はう!やっぱりそのお声は反則なのです!」
「リスティナ」
「あ、はい、なんでしょうか、ロザリア様」
「シャルル殿下からお声が掛かっていますよ、大事ないか、と」
「はい、私は大丈夫です」
「そ、そうか、それなら良いんだけど、君はロザリア嬢と知り合いなのかい?」
「はい、母が以前ノワール侯爵家で従事していた関係で一度だけですが」
「シャルル様、そろそろお時間が」
「ああ、そうだね、ロザリア。君も席に着いた方が良いだろうね」
「お気遣いありがとうございました」
本当にローズお姉さまは美しくて甘美な声をお持ちです。
横に付属品が無ければもっとその恩恵を得られたのに、とても残念でした。
そんなやり取りでローズお姉さまの声が聞けたものですから、入学式が始まってつまら長い話も聞き流しつつ脳内でローズお姉さまの声をヘビーローテーションしてやり過ごしました。
なんど脳内再生してもローズお姉さまの声は最高なのです!むはー!
何故か周りから視線を感じますが、そんな事も気にならないほど、集中してました。
国教である十字聖教の教皇さまの祝詞とか、王太子殿下の祝いの言葉とか、この国最高の魔法使いである宮廷魔術師のおじいちゃんの蘊蓄とかどうでもいい話ですよね。
でも、嘗てフランディルの宝石と謳われた王太子妃さまのお言葉は聞き逃せませんし、見逃しません。
この王太子妃さまはゲームでも一度しか登場しないキャラクターで、王子ルートをクリアしたエンディングの王子との結婚式でのみイラストが拝見できます。
その御姿は私の母にも勝るとも劣らない美少女フェイスでして、王太子妃さまを見たいがために何度も王子ルートをクリアする猛者がいるほどでした。
もちろん、その猛者とは前世の私です。
だって、可愛いは正義ですから!
そして今世でその御姿を生で見たいし、声もしっかり聞きたいからこっそりと無詠唱で視力と聴力を強化する魔法を掛けておきました。
ああ、やっぱり可愛いです王太子妃さま。
それに声もとても良いです。
王太子妃さま、きゃわいいです!むはー!
あ、次は学園長の話ですか、もう魔法は切っていいですね。
テンプレートな入学式が終わり、本日の行事予定も終了しました。
この後は寄宿舎に戻って明日から始まる授業の準備をする事になります。
この魔法学園は全寮制になっておりまして、王族だろうが王都在住だろうが関係なく在学中は滞在する事になります。
ですが放課後などは学園外に出ても門限までに戻れば問題ないため、夕食は家族と取るという人もいるそうです。
休校日は週に1日ありまして、長期休暇は夏と冬、年度変更の春に少しあるとの事。
そういえばこの世界の日時計算の方法なのですが、前世と似たような感じで1年は360日で、1ヶ月は30日、1週間は6日、1日は24時間、1時間は60分となってます。
曜日は太陽の日、大地の日、海の日、星の日、月の日となっており、これが60回巡ると1年が過ぎます。
また季節は3ヶ月周期で変わり、日本のように四季が存在していて、1年の始めが1月からというところもが前世と同じ。
ただし、1月から春が始まりますので、この辺りの感覚になれるのがとても大変だったのです。
全てが地球と完全に一緒だと計算とかが面倒なので助かりますが、おそらく神さまがその辺りを調節して時間のずれを無くしているのだと思います。
本日は休校日である月の日で、太陽の日である明日から授業開始、とカリキュラムが組まれています。
とはいえ、明日は初日ですからオリエンテーションだけになると思いますので、そこでクラス発表や自己紹介、授業内容の説明などが行われるはずです。
この学園では選択科目を選び、1日に3科目だけ受けることになります。
1科目に付き1時間半ですから、午前中に2科目、昼休みを挟んで午後から1科目、クラスでのホームルームが終われば放課後。
寄宿舎の門限は20時とかなり緩い物になっているのですが、夕食の時間が17時から19時までなので、外食をしない限り遅くとも18時過ぎには皆戻ってくるはずです。
私も基本的には寄宿舎、男女別に各3館存在する寮なのですが、18時までに戻るつもりでいます。
だって夕食を逃したくないですからね!
折角無料で食事が提供されているのに、食べないなんて罰が当たっちゃいます。
そして私は現在、寮の自室に居るのですが、私たち平民は二人部屋となっておりまして、ただいま同室の少女がやってくるのを待っているところなのです。
ゲーム通りだと、王都に店を構える商家のお嬢様で、なんと王族御用達の菓子屋の娘さんなのです。
ちょっときつめな性格と言動というテンプレートなツンデレキャラなのですが、早く会いたくて仕方ありません。
だって、これから卒業するまでの3年間生活を共にする美少女ですからね。
しかも、可愛い容姿なのにツンデレさんなので、とても楽しみなのです!
あ、寄宿舎の寮は全部で6棟ありまして、学年度につき2つずつ、王侯貴族も平民も同じ建屋の中で生活します。
これは王侯貴族が平民と触れ合う事で民の考えを学び、平民は王侯貴族への対応を学ぶ、という建前で運用されているようです。
なぜ建前かと言えば、王族や上級貴族の方たちは最上階である4階、下級中級貴族は3階、平民は2階、1階は食堂と大浴場と別れていて、最上階は各部屋に食堂と浴室が付いているからなのです。
これでは王族や上級貴族が平民と触れ合う機会が極端に少なくなりますので、あくまでも建前だと予想できちゃいます。
正直言いますと、私たち平民が王族たちと触れ合うなんて恐れ多い、と言いますか、面倒な事にしかならないので、この振り分けについては大賛成なのです。
しかも最上階は完全に個室ですから、ローズお姉さまと仲良くなったあかつきには、と考えるだけではぁはぁしちゃいます!
「あら、あなたが同室の人ね」
「・・・」
「ちょっと、聞いてますの?」
「・・・むはー!」
「ひっ、何、この娘」
「あ、ようこそいらしゃいました。私はリスティナと言います。ぜひ、リーナと呼んでくださいね。3年間よろしくお願いします」
「え、ええ、こちらこそ。私はルビナスよ。王都で菓子店を営んでいる家の娘ですけど、マドリードという店は聞いた事ないかしら?」
「王都でも人気の甘味処にして王家御用達ですよね。先日ルビナスさんの所の焼き菓子を頂きました。とても美味しかったです」
「あら、お客様だったのね」
「いえいえ。私が購入した訳ではなく、お世話になっている方が入学祝として振る舞ってくれました。私の家では高くて買えませんから」
「ふーん、そうなんだ」
さて、ここまでの会話をご覧になればもうお分かりと思いますが、ゲームと同じくルームメイトはルビナスさん、愛称ルビーちゃんでした。
情熱的な炎を思わせる真っ赤な髪色と茶色でくりくりおめめを持つ、幼女と間違われるほどの背丈な可愛い美少女なのです、ルビーちゃんは。
そのルビーちゃんは最初は丁寧な対応をしてくれるのですが、ヒロインが貧乏人の平民と解ると態度を変えて見下してくるのです。
現在も私を見下した目で下から見上げてくるのですが、それが、もう、とても可愛いのでどうにかなっちゃいそうなのです。
ルビーちゃんはきゃわいいのです!
「ねえ、ルビナスさん。お願いがあるのですけど」
「何、リスティナさん?」
「私をリーナお姉ちゃんって呼んでくれないかな?私はルビーちゃんって呼ぶから」
「はいぃ!?あなた、いきなり何を言い出すの!?」
「だって、ルビーちゃん、とってもきゃわいいんですもの。もう、お持ち帰りしたいぐらい」
「ひぃぃ!?何、この娘、ちょっと、いえすごく怖い!」
「あ、でもお持ち帰りしなくても今日から3年間一緒だから問題ないね。やっふー!」
「だ、だれか、だれか助けてええええええええ」
ああ、怯えた表情のルビーちゃんも可愛くて仕方がないのです!
私はお姉さまが欲しいのですが、ルビーちゃんだけは妹にしたい美少女、いえ美幼女だったのです!
これから3年間が、とても楽しみなのです!むはー!
自室で色々していましたら夕方になりましたので食堂へ移動しました。
食堂なのですが、一度に100人程度の人数が食事がとれるように作られているらしく、大きく別けて2種類のテーブルが存在します。
6人席と言いますか、長方形テーブルに椅子が6つ用意されている安価そうな物。
もう1つは丸テーブルで椅子が3つから4つ用意されている高価そうな物。
平民用と貴族用ですね、ありがとうございました。
こんな事をするぐらいなら元々別々の食堂にすれば良いのでは?と疑問に思うのですが、やっぱり建前があるのでそうはいかなかったのでしょうね。
さておき、この食堂を利用するにあたってのルール、平民用と貴族用の席分けのような暗黙のルールではなく、ちゃんとしたルールをご説明いたします。
利用時間は早朝6時から8時まで、昼は開いておらず、夕方が17時から19時まで。
メニューは無料である日替わり定食と有料である様々な料理。
日替わりメニューはカウンターで受け取って返却までがセルフサービスで、有料の料理は給仕の方が配膳してくれるのです。
平民の場合一部を除いて全員無料の日替わりサービスを頼むので、やはりここでも差がでちゃうのですが、これは仕方ないですね。
平民である私は食事に銀貨1枚なんて出してられません。
幾ら王都の物価が高いとはいえ、下町で食事すれば銅貨10枚あれば大人だってお腹いっぱいになりますからね!
あ、先ほど言った平民でも一部を除いてという方ですが、私の横に座っているルビーちゃんは有料のメニューなので、注文したのは良いですが、貴族様優先ですからまだ運ばれてきていません。
「んー、やっぱり美味しい。さすが王立魔法学園ですね、無料でこの味を提供できるのですから。しかも魚ですよ、魚。塩漬けではなさそうですから態々冷凍魔法の道具を利用してるのでしょうか?どう思います、ルビナスさん」
「知らないわよ、そんな事!それに、なんで私があなたと一緒に食事しないといけないのよ?あと、まだ料理が運ばれてきてない私の前でなんてことを言い出してるのよ!」
「ルビナスさんとルームメイトですから当然だと思いますよ、一緒に食事するのは。あと、先に食べて良いと言ったのはルビリアさんですし。最後に、食事時に騒ぐなんて行儀が悪いですよ?」
「当然でもないし、社交辞令を真に受けないでちょうだい!あと、騒ぐ事になったのはあなたの所為よ!それともう私に話しかけないで貰えないかしら?」
「あ、デザートも甘くて美味しい」
「聞きなさいよ!」
「お待たせいたしました」
「随分待ったわよ!」
「ひぃぃ、申し訳ありません!」
「給仕さんに当たったらダメですよ。そんなにお腹がぺこちゃんだったのですか?」
「全部、あなたの所為よ!」
ルビーちゃんはなぜこんなにぷんぷん状態なのでしょうか?
私としてはそんなルビーちゃんも可愛いからご褒美ですけど!
折角ルームメイトになったのですから親睦を深めようとお食事誘ったのに、怒っている理由が解りません。
嬉しすぎて騒いじゃうのは解りますけどね、最初は遠慮してましたけど、私が腕を取ったら大人しくついてきてくれたから。
ああ、ちゃんと移動する時に、ルビーちゃんがあまりにも嬉しすぎて騒ぐものですから沈黙の魔法を使っておきました、だってレディが騒いで移動とか外聞が良くないですからね!
こんな気遣いの出来る同室の同級生と食事、しかも可愛い美少女と食事できるのに、何が不満なんでしょうね?
私は可愛いルビーちゃんと食事が出来て、はっぴーすぎてはぁはぁしちゃうぐらいなのですが、本当に不思議なのです。
あ、まだ騒いでますし、このままだと貴族さまたちへの心象が良くないですから沈黙の魔法を使っておきましょうか、えい。
ちなみにこの魔法はかなり有用でして、音を出来るだけ立てないという上流階級のテーブルマナーなんかでも、食器がぶつかった時の音が消えますから少々不慣れでもごまかせちゃうのです。
ささ、これで安心して食事ができますね、ルビーちゃん。
あれ?食べないのですか?もしかして、私に食べさせて欲しいのですか?もう、仕方ないですね。
本当ならこういう人がいっぱいいると所では控えた方が良いのですけど、私が食べさせてあげますね、お姉ちゃんとして!
姉が妹に甘いのはどこの世界でも共通事項だと思います。
それも可愛い妹なら当たり前だと思うのです。
だって、きゃわいいは正義ですから!
はい、あーん。
ルビーちゃんと食事を仲良く取った後、大浴場で楽しい楽しい入浴なのです。
でも、残念でした、可愛い美少女たちの入浴シーンはカットなのです。
だって、こんなご褒美なイベントは独りじ、けふけふ、乙女の秘密ですからお見せできないのです。
ですからみなさんも私と一緒に妄想で我慢しておきましょうね。
私はかなりリアルに妄想できますけど、むはー!
さてさて、これで後は自室のベッドで眠るだけなのですが、やっと長かった学園生活一日目が終了です。
久しぶりにローズお姉さまと再会しましたが、相変わらずお綺麗で、とても可愛い美少女だったので、未だに興奮が治まりません。
ああ、早く姉妹の契りを結んで、心の中だけじゃなく、ちゃんと声にだしてお姉さまとお呼びしたいのです。
でも、さすがは最強の悪役令嬢なローズお姉さまなのです。
これは一筋縄では行かないと思わせる鉄壁ガードでした。
なぜリーナはあのローズお姉さまに勝てたのでしょう?
あ、リーナと言っても私ではなく、ゲームの主人公の方ですよ?
私はローズお姉さまと勝負して勝てるとは思えません。
だって、あのスタイル、お顔、声、聡明さ、能力、どれをとってもヒロインが勝てると思えないほど素晴らしい美のチートなんですもの。
やっぱり攻略対象である4人の美少年は諦めましょう、私が興味ないというのもありますけど。
だって、可愛い美少女たちと清く楽しい時間を共有して愛でたいですからね!
今日は上手くいきませんででしたが、明日から本格的に攻略を開始するのです!
と、固く決意し眠りに付くのでした。
出来ましたら、お姉さまたちを愛でる夢が見れますように!
それではみなさん、おやすみなさーい。
お読みくださってありがとうございました。
連載するにあたって、ある程度まとまった所で投稿というスタイルで行こうと思いますので、おそらく毎回1万文字ぐらいになるはずです。
ですので更新はかなりゆっくりになりますので、ご了承ください。