慣れてくると人って本性が見え隠れし始めますよね。
前話で一区切りしましたから今話から新展開が始まります。
今話から章管理しましたので少しは解りやすくなっていると思いますので、宜しくお願いします。
グリンベルト魔法学園に入学して二週間ほど時間が流れ、新生活にも慣れ始めると心にゆとりが生まれます。
それは私だけではなく新入生全員に言えることで、平民だろうと貴族であろうと生まれに関係なく平等に訪れます。
この魔法学校は貴族院を兼ねた教育機関なのですが平民も通い、国に役立つ人材を一人でも多く輩出するために生まれに貴賤なく学べます。
ただあくまでも名目上の表向きにすぎないこの平等という制度を鵜呑みにして行動する者は少なく、王侯貴族に対して平民は道を譲り頭を下げます。
新生活、今までそうやって過ごしてきた新入生たちは慣れていないがゆえに今まで通りに対応し、慣れ始めた今頃になると表面上の平等を行い始めるのです。
でもそうするのは平民だけの事で貴族は気位が高い方が多いので、今まで通りに平民を見下す者が多いのです。
この傾向は下位貴族の方が特に多く、上位貴族の方は上手く平等を装って対応されます。
上に立つ人間ほど下に居る者に対してどのように接するべきなのか理解する必要がありますので、小さな頃からそのような教育を受けているかいないかの違いだと思います。
中にはそういう事に一切関係なくある意味平等に接する脳筋貴族さんもいるのですが、あの方は特殊なだけなのです。
そして中位貴族の方になると教育を受けたか受けていないかだけではなく、そもそもの資質や血族の多さで序列が軋轢を生んで下位の者を軽んじる方が生まれやすくなります。
その典型的なタイプに属する人がこの度謹慎が解けて復学する事になっているのです。
さて一体どうなってしまうんでしょうね?と、他人事の様に私は意識のほんの片隅で考えていたのです。
「ちょ、ちょっとあなたね、こんな場所で抱き着かないでよ!」
「ルビーちゃんは小っちゃくて可愛いのです!だからこれは仕方がない事なのですよ!」
「リスティナちゃん、流石に人目に付くところではやめた方が」
「え?ここは室内なのですから問題ないのですよ、チェルシーちゃん」
「ここは教室、教室なのよ!そんな場所で抱き着くとか頭おかしいでしょ、普通!」
「じゃあ、その普通がおかしいのです」
「ええ!?そ、そうなの?」
「騙されないでよ、チェルシー!くっ、なんて馬鹿力なのよ!いいかげん放しなさい、リスティナ!」
「ルビーちゃんが私をリーナお姉ちゃんって呼んでくれるまで放さないのです!」
「呼んであげたらどうかな、ルビーちゃん?」
「チェルシーまで何を言ってるのよ!私、絶対に呼ばないから!」
「本当にルビーちゃんはツンデレさんですねー」
「だからつんでれって何なのよぉおおお!」
本当にちょっとは考えていたのですよ?
「そもそも小っちゃいって言うなぁああああああ!」
「やっぱり気にしてたのですね、ルビーちゃん」
でも、ルビーちゃんの可愛さの前ではどうでもよい事だったのですよ!むはー!
「おい、君たち。いくら昼休みだからと教室では静かにしてくれないか?」
「あ、ごめんなさい」
「いや、ヤグルさんには言っていない。私はそちらの平民たちに言っているんだ」
流石に騒ぎ過ぎたようでして男子生徒が注意しにきちゃいました。
その少年にはチェルシーちゃんが対応してくれたのですが、言い回しからいくとどうやら貴族の子息さんのようなのです。
私は男子に興味ありませんからこの方が何者で何という名前なのか知りませんが、相手は私たちの事を知っているようなのです。
どんな人かと一瞥してみましたが、やはり私の記憶にない方ですからおそらく下位貴族の方でしょうね。
私も男子に興味がないとはいえ、生活する上で知っておかなければならない中位貴族以上の子息さんたちは一応覚えているのですよ。
なぜって地位の高い方ですと色々理不尽な事をされる可能性が高いですからね、要警戒対象なのです。
無警戒だった私はそれで生まれ故郷の田舎の村からこの王都に連れてこられて帰れなくなっちゃいましたし。
でも下位貴族の子息さんでしたら問題なそうそうですから続きをしておきましょう。
ああ、本当にきゃわいいのです、ルビーちゃん!
「おい、聞いているのか、お前たち?」
「いい加減放しなさいよ、リスティナ」
「もうちょっとだけ、もうちょっとだけなのです」
「そんな事を言ってさっきからずっとじゃない」
「もうちょっと」
「いい加減にしろ、平民!」
「あの、マクランさん、穏便にされたほうが」
「何を言っている、ヤグルさん。男爵令嬢であるあなたがなぜ平民を庇う?」
「同じクラスの生徒で友達ですから」
「平民と友達?何を言っているんだ、君は」
「この学校では階級に差はありませんよ。ですから私がお二人と友達になってもおかしくありません」
「そんなのは表向きだ!君はこんなやつらと一緒に居て恥ずかしくないのか?」
「どういう意味ですか?」
五月蠅いとおっしゃるから静かにしてましたのに中々引き下がらない上にチェルシーちゃんに突っかかってますね。
しかも怒りの矛先をチェルシーちゃんに向けはじめましたし、チェルシーちゃんも気分を害したようなので排除した方が良さそうなのです。
それにしてもチェルシーちゃんが怒るなんて初めてみたのですよ。
とっても温和で大人しい美少女さんですからとても珍しい光景なのですよ。
でもそんな表情も可愛いだなんてチェルシーちゃんは最高なのです!
そしてそんな表情を引き出したこの子息さんは排除決定ですが手加減して差し上げるのですよ。
ルビーちゃんを手放すのは寂しいのですが行動開始なのです!
「そこまでなの」
「失礼ですが、どちら様でしょうか?」
「なんだ、平民?今私はヤグルさんと話しているんだぞ、割り込むな無礼者が!」
「礼がなっていないのはあなたではありませんか?」
「何だと!」
「婦女子に対して横柄な態度で接し、初めて会話するのに名乗りもしない殿方。それで礼儀があると言えるのでしょうか?」
「なぜ平民に俺が礼を尽くさねばならない!」
「先ほどあなたがおっしゃったとおり表向きここは平等な場所ですわ。そのような場合の礼儀作法をご存じではありませんの?」
「くっ、調子に乗るなよ、平民風情が!」
「私たちをどう考えようがあなたの自由ですわ。ですがこのグリンベルト魔法学園に通っている限り、規則を守ってこそ貴族ではありませんの?少なくとも最上位であるダンさまはそうされておりますわ」
「ちっ、覚えてろよ、平民。ヤグルさん、付き合いを改めるべきだと私は思うぞ。失礼する」
私が介入する前にルビーちゃんが撃退しちゃったのです。
さ、流石なのですよ、ルビーちゃん!
ちっちゃ可愛いだけじゃなく弁も立つなんてすごいのです!
「ありがとう、ルビーちゃん」
「最初に守ってくれたのはあなたじゃない、チェルシー。こっちこそよ」
「うふふ、お互いさまですね。でも、大丈夫なの?マグルンさん相手に」
「彼はマグルン男爵の次男だったわね、たしか」
「そのように自己紹介されてましたね」
「だったらやっぱり大丈夫よ」
「どうしてですか?」
「何かしてこうようとしたら、彼の家には売らなくなるだけね。権威を傘に着ちゃう事になるけど、派閥の関係で守ってもらえるわ」
「あ、マグルンさんのところは黒の派閥なのですね。そこまで考えてたなんて、ルビーちゃんすごい!」
「そんな事ないわよ・・・って、いい加減放しなさいよ、リスティナ!」
「リスティナちゃんが抱き着いてなかったらもっと恰好良かったのにね」
結局放さなかったのか、ですか?ええ、その通りなのです。
だって私が割り込む前にルビーちゃんが動きましたからね、私は背景と化していたのですよ。
折角背景なのですから自分のやりたいことをやっていたのです!
あ、チャイムが鳴りましたから昼休みが終わりましたね。
「あー、リスティナくん。ちゃんと授業を受けてくれないか?」
「はーい」
「返事したなら放しなさいよ!」
仕方ないですね、ここは先生に免じて次の時間まで我慢しておきましょう。
あ、次は放課後ですからたっぷり時間がありますね、やっふー!
「先ほど何か揉めていたようですが大丈夫ですか?」
「あ、ラビリオさま」
退屈な授業も終わりましたので早速ルビーちゃんを持ち帰ろうとしたのですがお邪魔虫さんが現れました。
本当にこの人はなぜタイミングを見計らってやってくるのでしょうね、ちょっと不気味なのです。
いくらきゃわいいチェルシーちゃんが大好きといってもここまでくると危ない人だと思うのですよ。
授業中も偶に視線を後ろから感じますしちゃんと授業を受けているのでしょうか、ラビリオさんは。
十字聖教の御子さんなのですから授業の成績が悪いと問題になりますしちゃんと授業を受けた方が良いのですよ?
「問題ありませんわ、ラビリオさま。想定していましたもの、あの程度」
「僕の席からではよく聞こえませんでしたが、彼はチェルシーさんに何を言っていたのですか?」
「そ、その私たちが騒いでいた事に気分を害されたようで」
「む?器量の狭い事ですね。それにいつもの事ではありませんか」
「いつも騒いでいてすみません」
「い、いえ、チェルシーさんを責めている訳では」
「チェルシーちゃんだけが言われていた訳じゃないのです。どちらかと言えば私たちの方が罵倒されていたのですよ」
「しっ、それは言わない約束よ」
「むむむ?ルビーちゃんはいいのですか?可愛いチェルシーちゃんがお邪魔虫さんに狙われても!」
「良くないわ、って、ラビリオさまを何に例えてるのよ、あんたは!それと私を巻き込まないでよ!」
「えー?だって、どう見てもラビリオさんはチェルシーちゃんを狙っていると思うのです。すごい無駄な努力なのですよ。その努力は勉強に当てた方が皆幸せなのですよ!」
「さっきから君たちは何を言ってるんだ!?」
「あわわわわ、わ、私!?」
「チェ、チェルシーさん、僕は別に」
「ご、ごめんさない、私そういうのはまだ!」
「あ、告白する前に振られちゃいましたね!ドンマイなのですよ、ラビリオさん!」
「あなた、すごくうれしそうね」
「うん!」
「なんですか、これは!?なぜ僕は何もしていないのに振られたみたいになってるのだ!?」
残念でしたねラビリオさん。
私たちの可愛い天使であるチェルシーちゃんはあなたには勿体ないので諦めて学業に専念してくださいね。
ちゃんと私が姉として守りますから!
「簡単に言いますと、私たちが平民なのにラビリオさんやダンさんと交流があることが気に入らないのですよ」
「唐突に本題に入ったわね、リスティナ」
「さっきまでのやり取りは必要だったのか!?」
「特になかったのですがチェルシーちゃんは渡しませんという意思表示なのです!」
「だからなぜそのような事をするのですか、リスティナさん!」
「え?だって見ててばればれですよ、ラビリオさん。そうですよね、ルビーちゃん?」
「そうね」
「な!?いえいえいえ、ぼ、僕はそのような」
「そ、そうですよ、リスティナちゃん、ルビーちゃん。ラビリオさまが私なんて」
「ラビリオさん、まさかチェルシーちゃんが可愛くないと言いたいのですか?神の元に赴きたいのですか?お手伝いした方がよいですか?」
「なぜそうなる!?チェルシーさんは素敵な、って、何を言わせるんだ、リスティナさん!?」
「いよいよ混沌としてきたわね。リスティナ、もう良いんじゃないの?」
「あ、そうですね。チェルシーちゃんも落ち着くのですよ」
「リスティナちゃんがそれを言うの!?あとルビーちゃんも何気にひどいと思います!」
「慌てたり照れたりするチェルシーちゃんがきゃわいいのでやっちゃいましたのですよ!」
「そうね、それには同意ね。チェルシー、とてもよかったわよ!」
「ええ!?」
「・・・僕はその為にあんな目にあったのですか」
「あ、それでですね。ちゃんとルビーちゃんが撃退したので問題ないのです」
「さらっと僕の話を流しましたね」
「ラビリオさま、そろそろリスティナの理不尽さに慣れた方が身の為ですわよ」
「それを慣れてしまうと何かを失う気がするのですが」
「この学校の歪さの影響なのですよ。だからこちらもある程度身を守る術はもっているのです」
「失ってでも慣れろ、という事ですか。ん?ちょっと待ってください。何故そのような話がでるのでしょう?どういうやり取りだったのですか?」
む、ごまかせなかったですか。
正直、この手の話題をラビリオさんに伝えると面倒な事になりそうなのですよ。
意識高い系なのに平等主義者な御子さんですからね、ラビリオさんは。
あの子息さんに関しては黒の派閥の方ですから私やルビーちゃんにひどい事はできないので、このまま放置したかったのです。
それにチェルシーちゃんの実家であるダグル男爵家はヤクトワルト伯爵家の庶家ですから男爵の子息さんでは手が出せないのです。
そのような状況なのにラビリオさんがなんが絡んでくると厄介ごとが発生する確率がすごく高いのです。
何故かと言いますと御子さんなラビリオさんは絶対に話を大きくしちゃいますからね、この手の話題は。
乙女ゲームでもラビリオさんはヒロインが悪役令嬢たちから苛められたり、他の貴族から貶められると係ってくるキャラクターだったのです。
そしてその絡み方がすごくって大事になるのが常だったのですよ。
例えば女神さまに誓った裁判沙汰とか学園全体を巻き込んだ討論会など起こしちゃうのです。
なので非公式でラビリオさんはトラブル拡大器と言われていたのです。
あ、前世の私もそう当然思っていたのですよ。
ね?こんな男の子を美少年だからって好きになる訳ないと思いますよね?少なくとも私は思わないのです。
その前に男子に一切興味がありませんでしたが。
「なるほど、そういう事でしたか」
結局子息さんとのやり取りを詳しく説明することになったのですがラビリオさんは右手を顎に添えて考えだしました。
見た目は美少年ですからとても絵になる姿で乙女ゲームのスチルでも何度も見かけた光景なのです。
少し周りの様子を窺ってみると何人かまだ教室に残っているようでして全員こちらを注目してます。
御子であるラビリオさんが話し掛けたのですから注目はされるでしょうが女の子たちはラビリオさんの立ち姿に釘付けなのです。
男の子たちは何というか私たちを睨んでいる気がするのです。
平民が御子に声を掛けられやがって!とか思っているのでしょうか?
本当に小っちゃい人たちなのですよ。
「あ、ラビリオさん。下手に介入しないでくださいね」
「何故ですか、リスティナさん?彼はあなたにも侮辱したのでしょう?」
「悪口を言われたと思っていないのです」
「そうね、あんなものよね」
「ルビナスさんまで何をおっしゃっているのですか?明らかに階位を傘に着た暴言ではありませんか」
「口に出すか出さないかの差でほとんどの貴族の方がそう思っていると思うのですよ」
「私はそんな事」
「あ、チェルシーちゃんは別なのです」
「チェルシーは思っていないでしょうね。そうじゃなければ私たちに友達になろうとか言わないわよ」
「流石、チェルシーさんですね。素晴らしいお考えです」
「そうなのですよ、チェルシーちゃんは優しくて可愛いのです!最高なのですよ!むはー!」
「お人よ、いえ、そうね、チェルシーは優しいわ」
「あわわわわわ、ほ、褒め殺しに合ってます!?」
「そうだ、ラビリオさん」
「なんでしょう?」
「女神さまの信仰よりもチェルシーちゃんの可愛さを世界中の人達に布教しましょう!」
「ええ!?な、なんでそうなるのですか、リスティナちゃん!?」
「地上に降りた博愛の天使チェルシーちゃん!うん、行けます、萌えちゃいます!」
「て、天使!?」
「・・・天使」
「そうなのです!チェルシーちゃんは私の可愛い妹天使さんなのですよ!やっふー!」
「やっぱり妹は外せないのね」
「うん!」
「もう訳がわかりません!」
「ところでラビリオさま。ちょっと心を揺さぶられてませんか?」
「はっ!?いえいえ、そ、そんな事ありませんよ。僕の信仰は揺るぐことはありませんよ!ええ、そうですとも!」
「なんですか、ラビリオさん。まさかチェルシーちゃんが可愛くないと言いたいのですか?やっぱり逝きますか?」
「言ってませんよ、一言も!チェルシーさんはとても可憐、って、なぜそのような話に!?」
「今本音が漏れたわね」
「そうですね、やっと白状したのですよ」
「あわわわわ、わ、私!?」
「チェ、チェルシーさん、僕は別に」
「ご、ごめんさない、私そういうのはまだ!」
「「あ、また振られた」」
「う、うわあああああああああああああ」
「「あ」」
とうとう耐えきれなくなったのかラビリオさんが駆け出しちゃいましたね。
室内で走ったら危ないのですよ?
兎も角ミッションコンプリートなのです!むふー!
「あんた、本当に悪魔ね」
私が悪魔ですか。
確かに母は沢山の男性たちを魅了する小悪魔ちゃんな美少女ですからその子でしかもとってもそっくりな私は悪魔かもしれないですね。
ではその悪魔の力できゃわいい娘さんたちを魅了してお姉さまと妹を量産しちゃうのです。
まずは目の前の可愛い子羊さんたちからなのです!むはー!
「ひっ!?なんだかリスティナちゃんの目が狼さんのようになってます!」
「割といつもの事じゃない、そんなの」
「その目がルビーちゃんにも向いてますよ?」
「ぐっ、そうだったわね」
大丈夫なのですよ、チェルシーちゃん、ルビーちゃん!
私は食べたりしないのです。
あくまでも愛でるだけなのです。
あとちょっと抱き着いて頬ずりしたりくんくんしたりして堪能するだけなのですよ!
さて、お邪魔虫さんが走り去ってしまいましたから安心して私たちも教室を後にしました。
ラビリオさん以外には誰も絡んできませんでしたからそのまま無事に寮に到着し、それぞれの部屋でお着替えなのですよ。
私とルビーちゃんは同室ですから当然同じ部屋で着替えているのですが、襲ったりなどしていないですよ?
何度も言いますが私は可愛い娘さんを愛でたいのであって恋人になりたい訳ではないのです。
「ところでリスティナ」
「・・・じー」
「リスティナ?」
「むはー!」
「ひっ!?って、なんでいつもいつも私の着替えを見て興奮してるのよ!やっぱりリスティナってそういう趣味なの?」
「違いますよ、私は百合ではないのです」
「ゆり?」
「女の子同士なのに恋人になりたいという思考の持ち主の事を指す隠語なのですよ」
「なるほど、よく知ってるわね。って、やっぱりそうなの!?」
「ちなみに男の子同士の場合は薔薇と言うのです。男同士なのに薔薇だなんて花に失礼なのですよ!」
「何でそんな事知ってるのよ!それとある意味男性に失礼よ!」
「ルビーちゃんはそっちの趣味だったのですね。私は個人の趣味は尊重しますから安心してくださいね」
「どういう意味、って、違うわよ!全然興味ないわよ!私はノーマルよ!」
「またまたぁ、素直じゃないですね、ルビーちゃんは。流石ツンデレさんなのですよ」
「信じなさいよ!あとつんでれって何よ!?」
「ところで何ですか、ルビーちゃん?」
「ぐっ、また私の発言は無視するのね」
「もしかしてお邪魔虫さんの事ですか?」
「そうよ、って、私をさらっと巻き込まないでよ!ごほん、なんでラビリオさまを遠ざけたのよ?」
やっぱりルビーちゃんは気が付いていたようですね。
チェルシーちゃんは人が良いですから気が付いていなかったようですが、流石は王都一の菓子屋の娘さんなのです。
そしてルビーちゃんもさり気無くラビリオさんをお邪魔虫さん認定しているようですね。
流石ルビーちゃんは小っちゃ可愛い妹なのですよ!
「ラビリオさんは御子さんですからね、係ると話が大きくなるのですよ」
「十字聖教が介入してくると思ってるの、リスティナは?流石にあそこもここには手を出さないんじゃないの?」
「国に介入しているのと同じですからね、そうはならないと思いますよ」
「じゃあ、なんでよ?」
「ラビリオさんは平等主義者、いえ正義感がちょっと強すぎる男の子ですからあのままだとあの子息さんに何か言うと思うのですよ」
「確かにそんな感じよね、ラビリオさまって。でもそれだと個人の問題、あ、そういう事ね」
「そうなのですよ。教皇の血筋である御子に何かあったら流石に十字聖教も黙っていないのです」
女神さまを信仰している十字聖教は全ての国で王権神授を認めますが政治には不介入を貫いているのです。
この世界はファンタジー世界ですから宗教国家があってもおかしくないのですがなぜかありません。
たぶん女神さまがそういう国があると面倒になりそうだから作らなかったのでしょうね。
考えるのが面倒なだけだったかもしれませんが。
そんな十字聖教ですが女神さまの教えの一環として信者に対してすべからく優しく、もし何か害が与えられたら信者一同でそれに対処するおーるふぉあわん・わんふぉあおーるな精神なのです。
しかも教皇という十字聖教のトップの血族なラビリオさんに何かあった場合、絶対に絡んでくるのですよ。
下手をしたら王族まで介入してくる可能性が出てきますからぶっちゃけやめて欲しいのです。
なお乙女ゲームでのラビリオルートでこの手の事で王族まで介入に発展した場合、バッドエンドになっちゃいます。
「そうなったらとても厄介ね。ところでなんでチェルシーにラビリオさまを近づけさせないのよ?悪い虫が付くのは問題だけどラビリオさまなら大丈夫じゃない?」
「今のままのラビリオさんなら大丈夫だと思うのです」
「だったら何でよ?ん?今のまま?」
「普段は平等主義者なラビリオさんですが本質はドSさんですからね。チェルシーちゃんには近づけちゃダメなのです」
「ドSって、そうなの?」
「自分の知識に絶対の自信がある人ですからね。今はチェルシーちゃんのやさしさに触れて丸くなってますが慣れてきたら出てきちゃうと思うのです」
「癒しの天使ってところね、チェルシーは。ところで何でラビリオさまの性格をそこまで把握してるのよ、リスティナは?」
あ、流石に言い過ぎちゃいましたね。
前世の知識です、とか電波な事は言えないですし、どうしましょうか?
「えっと、魔法でちょいちょいと」
「そんな魔法があるの!?」
「無いですよ」
「嘘なの!?」
「歴史の最初の授業から始まったあの時のやり取りから推測なのですよ」
「あ、そうね。確かにあの時のラビリオさまを見る限り可能性はあるわね」
「そ、そうなのですよ。ですからチェルシーちゃんにはこれ以上近づけさせないのです!」
「理由は解ったわ。そうね、それだたっら私も納得だわ」
「ふぅ、なんとかルビーちゃんをごまかせたのですよ」
「何か言った?」
「何も言ってないですよ?」
「何故に疑問形?それよりもラビリオさまの事もそうだけどこれから面倒な事に巻き込まれそうね、色々と」
「大丈夫なのですよ。ルビーちゃんとチェルシーちゃんは私がちゃんと守るのです!だってお姉ちゃんなのですから!」
「あなたが一番の面倒ごとよ!」
そうなのです、ラビリオさんも面倒なのですがもっと面倒なのは平民を見下して当たり前と考えている貴族さんたちなのです。
こちらの対応が問題なければ表向きは普通に接してくれる上位貴族さんたちは大丈夫なのですが、プライドだけは高い下位貴族さんたちが問題なのです。
平民なのに目立つのはどうやっても気に食わないと絡んできそうですし、利用価値が高そうだからと絡んできそうですし、本当に面倒なのですよ。
軍事部門の中心であるヤクトワルト伯爵家の庶家でダグル男爵家の令嬢のチェルシーちゃん。
王都一の菓子屋で王家御用達のお店マドリードの娘のルビーちゃん。
私の情報はまだほとんど漏れていないと思いますが、そんな二人と付き合いがある私ですから絡まれる可能性は高そうなのです。
それに私の目的であるお姉さまと百人作るという野望を達成するためには大人しくしている訳にもいきませんし、どうしても衝突は避けられないのです。
ですから邪魔な下位貴族の子息さんたちとは断固戦うのですよ!
まじかる美少女天使リーナちゃんの活躍にこうご期待なのです!
お読みくださってありがとうございました。
理不尽な貴族に対して平民のリーナが立ち上がる!
さあ、ピンク髪のぱわーを見せてやるのですよ!
なお話しがしばらく続きますので、宜しくお願いしまーす!




