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パンドラの領域シリーズ  作者: いす投げ小太郎
パンドラの領域
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第二の希望

第二の希望


大統領官邸にて

「どうして大統領がわたし達を招待してくださったのですか。」神女は尋ねた。

「それは奴が大学時代の親友でね、会場の手配もやつのおかげなんだよ。ああ、昔が懐かしい。奴もこんな美しい人と会っちまったら前みたいに求婚しだすかも。」マルサスは笑いながら答えた。

「え、困ります。男の方から、変な風に思われるのは苦手なんです。」神女が言った。

「そうか、ではくれぐれも手を出さないように奴に伝えておかないとなあ。」マルサスは言った。

その頃、森田と笠山は話していた。

「先生は何故、私を教授に指名してくれなかったのですか?」森田は言った。

「それは、神女に将来性を感じたからだ。」笠山は毅然としながら言った。

「ふん、どこがあいつに将来性があるわけあるんですか。わたしだっていろいろ論文もだしているし、日本国内では有名ですよ。」そう、森田は怒りながら言った。

「しかし、君は西都大の教授になれた。その理由は私が頼み込んだおかげなんだぞ。笠山は答えた。

「じゃあなんで、私を東都大教授にはしてくれなかったのですか?」森田は尋ねた。

「君たち2人は仲が非常に悪かったからどちらかがあそこから出て行く必要があった。神女はあの論文で有名になっているから、おそらくぞろぞろと奴に着いていってしまうだろう。それは困った。幸いにして君の勢力は当時最大ではあったものの五人中三人の主任研究員たちの派閥が配下のポスドクとともに団結して歯向かって来たから君がいなく無っても何とかなった。葉山君などは戦う気だったみたいだけど自分の力量が不足していることを認識して神女についた。西都大にもまとまってはいなくてもグノーシス研究者はいた。わたしは両方に教授になってほしかったのだよ。」笠山は答えた。

「そうですか、ところで藤川君と仲佐原君はどうしていますか。」森田は聞いた。

神女は教授就任後、自派だった藤川と仲佐原を助教にした上で彼らがやろうとしていたことが金銭的に自分の研究室では無理だったので

ローマ大に出向させた。彼らは現地では特任研究員になっている。

「ああ、奴らもローマ語を覚えてだいぶ馴染めてきたよ」笠山は言った。

「もう神女の婿養子乗っ取り政策のせいで神女派が形成されてますよ。本人は気づいてないみたいだけどね。」森田は言った。

神女は研究室の予算縮小にあたって、多くの研究員を出向させて帰って来たら、また別の人を送り出すことで実際に研究室にいるメンバーを三分の一まで縮小に成功した。だが、助教になってしまったものや主任研究員までになってしまった者は帰ってこない。しかし、彼らは神女を心酔している為に森田は包囲されている様に感じたのだった。

「お前もやれば良いだろ。」笠山は言った。

「あいにく私の研究室の人数はあちらと違って少ないですしそんな馬鹿騒ぎなどする気もないですしね。」森田は言った。

「お前は、変な対抗心を抱くな。少しは葉山を見習え。」笠山は言った。

「なぜ、わたしが奴何かに対抗心を抱かなければならないのです?わたしは日本グノーシス主義研究者連合会会長で西の雄である西都大教授なんですから。しかも年上です。私の方が優れている。」

「お前なあ、研究者たる者は常に謙虚であるべきだと私は考えている。それもあってお前を東都大教授にはしなかったんだ。」笠山は答えた。

「そうですか…。」急に森田は静かになってしまった。

その頃、葉山は友人の上海大助教の今先と話していた。

「お前、来ていたのか。全然気がつかなかった。」葉山は言った。

「ああ、天下りの教授が学術的な話はわからないからってね。結局、あいつらはお金をもらうだけやって、仕事を何もしない。まあ、それに乗る俺も馬鹿だけど。まだ、国家存在時の弊害が残っているみたいだ。」今先は言った。

「よく言うよ。海外の大学で助教やるなんてこっちに帰ってくれば教授になれるぞ。こっちはあやかりたいところだよ。まだ助教なんだよ、俺。」葉山は言った。

「それであの女先生にプロポーズしたのか、お前?」今先はわざと大きい声で言った。

「ばか!大っきい声で言う奴がおるか。全く相変わらず人の痛い所を突いてくるな。まだできてないんだよ。相変わらず俺小心者だから。」葉山は言った。

「ふん、まあそのうちあの先生は優秀だからその内海外に行くぞ。だからお前は教授にはなれるだろう。でも、早く落とさないとお前の手の届くところから消えちゃうぞ。何だったら俺が手を出しちゃおうかな。だって、良い所しかないだろ。美人で頭よくて、優しい、まさに男の連想する女の理想型だよ。いや、夢想だったか。」今先は言った。

「そうか、俺も勇気出さなきゃな。」葉山は言った。

そこにマルサスと話終わった神女が来た。

「おやおや、何を話しているのかしら、葉山君。そんな、真っ赤な顔して。」神女は言った。

「いや、久しぶりに友達の今先と会ったので会話が盛り上がって、それでつい飲み過ぎちゃって。ちょっと気分悪いので先にホテルに帰っていますから。」葉山は慌てて胡麻化した。

「タクシー、呼んであげようか?」神女が言った。

「いえ、結構です。じゃあ、失礼します。」葉山が急いで出て行った。

「彼は悪酔いをよくしちゃって、なんか変なこと口走ってなかった、今先先生。相変わらず中国勤務なのね。」神女が切り出した。

ここで今先は悪魔の考えがよぎって言った。「なんだか好きな人がいるそうですよ、彼。でもその人が高嶺の花らしくてね。どうしたら良いのか、聞いてきてね。」今先は言った。

「ああ、やっぱりか。なんだか酔っ払ちゃうと、彼はいつも好きな人について話してたわ。でも、わたしも悪酔いするからあんまりその時のこと覚えてないんだ。」神女は言った。

「へえ、ところで海外の大学から誘いは相変わらずくるわけか?」今先は言った。

「まあ、いろいろな所からね。あなたにも来ているでしょ。第二の天才、今先東都大助教さん。」神女は言った。

「おいおい、その名前はやめてくれよ。俺はもう東都大に帰る気はないぞ。俺はあの先生がいたからあの研究室にいたんだ、それにお前には振られたしな。」今先は言った。

「本当にあの時は驚いたわ。でも、私はそう言うことが苦手なの。また、あの頃に戻れたらいいのにね。」神女は言った。

「そうか、確かにあの頃は森田先生いびりを三人でやっていたからね。森田先生も気の毒だったなあ。」今先は懐かしむように言った。

当時、2人は主任研究員の中でも特に優秀とされて助教にいずれはなるのだろうと言われていた。しかし、あまりにも森田は人気がなかったので森田を排除して主任研究員の中から教授候補をあげることになった。そこであまり教授とかめんどくさいことが嫌いな今先は固辞して結局押しに弱い神女が教授候補になり、教授になってしまったのである。森田もなりたかったのだが、今先に諭されて仕方がなく諦めた。その後、今先は突然飽きたと言い出して中国へ言ってしまった。しかし、彼女は戻ってきてほしいと言い続けており、彼は今も助教であくまでも出向扱いになっている。

「おやおや、これこれは2人の天才がそろいにそろって。また、私をいびり出す気かな。」森田は如何にも不愉快そうに言った。

「いやいや、もうあなたなど眼下にはありませんよ。最近まで論文何本出したんですか、森田先生?」今先は言った。

「君!いい加減にしろ。相変わらず君たち三人は挑発的な奴らだ。もっと君たちをしかるべきだった。」森田は怒りながら言った。

「まあまあ、落ち着いて下さい。みっともないですよ。今先君もいい加減にして。」神女は必死に止めようとした。

「ふん!お前なんかに言われなくても分かっている。お前も図に乗るな。」森田は言った。

「先生もひどいですなあ。彼女は無関係ですよ。あのバッシングの首謀者は僕ですから。葉山は鈍感だからすぐに乗ってくれたし、神女はさすがに先生の研究員に対する扱いは酷すぎると思ってかなり抑えめで批判しただけですよ。そのくせ、負けたら森田を引き抜いて神女に復讐したし本当に大人げない。」今先は言った。

すると森田は今先を殴ろうとした。

「ヘイ、ストップ。ドゥユゥアンダースタンダード?(ちょっとやめなさい。場所をわきまえてるんですか?」突然外人の男が話し始めた。

「ハイ、ヤメテクダサイデスネ。プラジデント(大統領)を怒ラシタラマズイデスヨ。」マルサスは言った。

「(英語で)大統領閣下、申し訳ありません。私の友人の今先がご無礼をおかけしまして申し訳ございません。全て私の不徳の致すところでございます。すみませんでした。」神女は謝った。

そこで大統領が言った。「(英語で)いいんです。なたの様なお美しい方には優しくしますよ。貴方は独身ですか?」

「(英語で)いえ、恋人がいるので、すみません。」彼女は嘘をついた。

「(英語で)そうですか、非常に残念です。」大統領は言った。

そして去っていった。その後、マルサスと大統領が話し始めた。

「ダカラ言ッタデショ。相変ワラズ、女タラシダナ。お前ハ。」マルサスは英語で言った。」

「フン、オ前コソ未婚ダッテ言ッテタデショ。ドウイウ事デスカ?」大統領は英語で言った。

「オ前コソモウ大統領夫人ガイルダロ。アンナヤマトナデシコ二恋ヲスル前に子ズクリデモヤレバ。」マルサスは英語で言った。

「フン、アンナブストカ。無理ニ決マッテイルダロウ。オマエコソヤレバイイダロ。」マルサスは英語で言った。

「オマエコソ。」

「イヤオマエコソ。」

「すみませんね。こんな事に巻き込んでしまって。あとでマルサス先生に叱っておくよ。」謎の男が言った。

「西沼お祖父さん、いや先生いらしていたんですね。お久しぶりです。かなりたちましたね、あれから。」神女は言った。

「ああ、君の父神女純一郎君がなくなってからな。我が娘も非常に悲しそうだった。君は良いのかね、西沼家に入らなくて。」西沼は言った。

「はい、母は西沼家に戻りましたけど私はこの姓に愛着を感じているので。」神女は答えた。

彼女の母の実家は西沼家で旧華族の直系で、この人は彼女の祖父である。父のいた研究室、沖野小路オリエント史研究室で父は助教で母は主任研究員だった。徐々に恋に落ちていった。西沼家は家柄に厳しいのだが幸いな事に神女家も外人の血が混じっているとはいえ旧華族だったおかげで嫁ぐことができた。

あのような事故で父を亡くした後、母は悲しみながらもこの子を守らねばと思って実家に連れて帰った。

そこで母は西沼姓に戻ったが神女はわがままを言って西沼姓に変えなかった。

彼女がグノーシス主義に興味を持ったのも祖父が本を見せてくれたからである。

だから彼女は祖父を慕っている。

「相変わらずだな。それで、良い人見つかったかね。私は君のお父さんからの遺言で絶対に君の家の血筋を閉ざさないでくれと頼まれているんだ。しかも、わしの息子は結婚しようとしないし。君にはなんとしてもひ孫を生んでくれ。」

「はいはい、分かっていますよ。由緒ある信濃藩西沼五十万石宗家なんですからね。」神女はいやそうに言った。

「君だって由緒ある都の陰陽寮寮長の直系だろ。確か村上源氏流だっけ。」彼女は全くと失望したかのように言った。

「まあ、もしも良い人が見つかって子供が四人生まれたら一人を先生の家に里子に出してあげますよ。」彼女は言った。

「好きにしろ。もう私はそんなには長くない。肺がんだって医者は言ってた。タバコのすい過ぎだよ。まあ、後三年ぐらいは生きれるらしいからそれまでにひ孫を見せてくれたら良いな。本当に君の若さはうらやましいばかりだよ。もうちょっとで私は大学を辞める。後任はもう決めてある。それも信頼できる人間だ。後一年くらいは好きな釣りでもやって過ごすさ。くれぐれもわしが死んだ後は君があの子を支えてあげてくれ。頼む。」西沼は懇願するように頼んだ。

「分かっていますよ、それぐらい。じゃあ、いつ帰ってくるんですか?」彼女は聞いた。

「しばらく休暇をとっていてね。この後日本に一度帰る。その数週間後にいったん戻って後任と入れ替わる形で日本に帰る。分かってくれたかな。」彼は言った。

「じゃあ日本に帰ったら一緒にお墓参りをしましょう。四人で。」彼女は言った。

「三人だな。ばあさんはお前ばかりかわいがっていると叱られるからな。でも、お前の成長した姿をきっと喜んでいるよ。お前のお父さんは。」彼は言った。

「そうだといいです。」彼女は言った。

そう言うと西沼は去っていった。

「今の人誰何だよ?知り合いか?」今先が唐突に聞いてきた。

「知り合いも何も私の母方の祖父で西沼って言うの。」彼女は答えた。

「もしかしてメガロポリス大助教の西村小次郎先生か?」彼は聞いた。

「ええ、そうよ。」彼女は答えた。

「おいおい、なんでそんな事言わなかったんだよ。」彼は言った。

「他の人から特別扱いされるのはいやだったの。でも、一様元々同じ研究室の笠山先生には伝えといたわ。」彼女は答えた。

「へえ。相変わらず謙虚なやつ。もっと、エゴをだせよ。」彼は言った。

その頃、笠山と西沼は話していた。

「君には、全く失望したよ。最後まで責任もってくれると言ったのに。」西沼は言った。

「そう怒るなよ、同じ研究室の出身同士だろ。」笠山は言った。

「いや、全く発掘調査と文章研究は全く違う。でも二つとも研究室の手の中にあったからこそ成果が出たのだよ。まあ、そんな事はどうでもいい。お前に孫の子守りは頼んだはずだ。それをローマなんぞに逃げおうって。」西沼は怒りながら言った。

「何を?お前は自立という事を知らないのか。あの子はもう大人なんだぞ。」笠山は言った。

「もういい!あの子はもっと信頼できる人に頼んである。」西沼は言った。

「それがマルサスなわけか。まあいいんじゃないか、参謀役にあいつはお似合いだ。だが、一つだけ言っておくがあの子の人生はあの子の物だ。お前の物ではない。分かっているよなあ、それぐらい。」笠山は言った。

「もう分かっているよ!でも私はもう良子やサエを悲しませたくないんだ。あの子の父親が死んだ時、律子はすごく悲しんだしサエなんて今でも夫が死んだ時間に教会に毎日通っている。不安なんだよ。もうわしは2人が悲しむ姿を見たくない。分かってくれるだろ。」西沼は言った。

「分かったよ、その代わりにまた会える機会が増えるからみっちりしこんでやるさ。また、いつか釣りやろうな、友よ。」笠山は言った。

「ああ、友よ。これで思い残す事はない。頼むぞ、神女の事。」そう言って彼は姿を消した。

数分後、晩餐会はお開きになった。


東都国際空港到着ゲート前


「神女先生、葉山先生お久しぶりです。おや、この人誰ですか?」山田は尋ねた。

「この人は私の祖父でメガロポリス大助教授の西沼先生。今まで一度も紹介してなかったからね。分からなくても無理はないわ。」神女は言った。

「お前なあ、研究員に対してはもっと厳しく接しないとダメだぞ。それにな、お前の研究室にはどうして骨のある奴がいないのだ。骨が少しはあると思えたのはお前とお前の友人とやらの今先とか言う小僧ぐらいだぞ。」西沼は言った。

「私の研究室に口出しをしないで。先生は先生、私は私。そうでしょ。」神女は言った。

「そんなこと言うなよ、わしは心配なんだよ。お婆が愚痴るし、サエは国際電話をよくかけてくるしな。少しは安定した生活を送っていると思ったらろくな奴がいないじゃないか。本当に頼むよ、もっと大人になれよ。」西沼は言った。

「そんな事分かっているって。でも、私はやっぱり私なの。分かって、おじいさま。」神女は言った。

「そんな事は分かっているよ、でもわしはお前を放っておけない。お前は一週間後に東都大教授を辞任、それでメガロポリス大助教になる。もう、教授会にも報告済みだ。東都大の方も学部長が友人で伝えたところ、がんばってきなさいと言っていたよ。」西沼は言った。

「ええ、メガロポリス大助教!それってローマ大教授とあまり変わらないじゃないですか。世界一の大学ですよ、すごいじゃないですか、先生。」山田は言った。

「はあ、もう俺の届かない所に行ってしまうのか。俺じゃあ、ついていくのは無理と思っていたけどこんなすぐにか。」葉山は思った。

「いやです、第一に東都大の私の研究室はどうするんですか。」神女は尋ねた。

「ああ、それだったらね、あの今先とか言う小僧を学部長に対して教授に推挙して承認されて、奴も辞令を受け取ったからすぐに日本に帰ってくるよ。」西沼は言った。

「相変わらず、どれだけの交友関係があるんですか、想像がつかない。分かりました、でもこちらから一つ要求します。」神女は強い口調で言った。

「なんだ、分かってくれたか。じゃあ、それぐらいやってやろう。何だね?」西沼は聞いた。

「葉山助教のメガロポリス大への主任研究員としての出向です。いいですよね?」神女は言った。

「まあ、あまり勧めはしないがいいだろう。マルサスに言っておくよ。これでわしの老後も安心だ。あと三年ぐらいしかないがな。じゃあ、明日の朝の九時にお墓で待ち合わせな。じゃあな。」そう言うと西沼は帰っていった。

「まさか、こんなおみあげを買って帰ってくるとは。しかも、何つう人を祖父に持っているですか。やっぱり普通の人とは違いますね。本当にすごい。」山田は言った。

「それより、早く研究室に帰って後任について電話しないと。」神女は言った。


東都大神女グノーシス研究室にて


「私は二週間後に退任します。よって後任を発表します。教授は今先東都大助教兼上海大助教に就任して頂きます。そして今先助教は教授就任後上海大助教を退任します。次に助教は葉山君と藤川君と仲佐原君に決定します。藤川君には帰国を要請してあります。仲佐原君はまだ研究が終わっていないらしいので出向扱いにします。葉山君は二週間後にメガロポリス大の主任研究員に出向します。最後に主任研究員を発表します。斧田君と山田君と•••。今までありがとう、いやまだ二週間は研究室に来るからよろしく。」神女は言った。

「よっしゃあ、やっと主任になった!これで教授になれる可能性が出てきた。」山田は言った。

「いや、あの人が教授になったらもっと研究量増えるじゃん。最厄だよ。」斧田が言った。

「いや、温厚な藤川先生が押さえてくれるよ。」山田は言った。


東都特別市文区本宮3ー5−4(慶長寺)


「久しぶりだな、みんなでここに来るのも。」西沼は言った。

「ほんまやなあ。しかも良子がこんなにも大人になって。母さん、うれしいわ。」西沼サエが言った。

「それよりもさあ、お線香あげよう。」神女は言った。

線香と南無阿弥陀仏という声があがった。

神女は父が笑ってくれているように感じた。

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