天使のお仕事3
天使のお仕事、天使のお仕事2の続編で完結編です。
よろしかったら前のお話もどうぞ。
天使のお仕事→ http://ncode.syosetu.com/n7631bi/
天使のお仕事2→http://ncode.syosetu.com/n7801bi/
関係者の話を聞いての事実確認は終わった。後は神様の意向だ。話を聞く限り、美里は既に死んでいるようだから、いつもの手続きをしたってかまわないだろう。でも美里は自分の名前を覚えているんだ。その辺りが神様の考えに影響してくるかもしれない。神様って割と面白いことがお好きらしいからな。
——では、神様。美里とやらの処遇はどういたしますか?
——いつも通りにするべきか、それとも何か考えでもおありで?
上司と悪魔の一人がいう。僕やほかの人たちも、それから美里も、一番気になっていたことだ。お二人の神様は顔を見合わせて、それから僕たちに告げられた。
——そなたらは美里の過去をみたかの?
——いいえ、みておりません
——名前を覚えているという時点で、手続きは後回しにいたしましたから。
一番下っ端の僕がこの場で発言するのはどうかと思ったけど、でもこの場にいる中で僕が美里の手続きを中断した張本人だ。僕が答えるべきだろうと思って、天使——もちろん僕よりも階級が上だ、直接の上司ではないけど——に付け加えるように発言した。そうか、と神様がいわれる。手続きを後回しにしたことをおこられるだろうか、神様の聞き方じゃまるで…
——美里はまだ死んではおらぬのだ。
やっぱり。神様の話し方じゃ、まるで美里が死んでいないみたいだったと思ったら、本当だったなんて。死者以外がここに来ることなんてあったんだな…そんな風に静かに驚いていたら、神様はさらに驚くべきことを言われた。
——しかし美里が死に近い状態にあることは否定できん。
「死に近い状態…?」
——眠り続けておるということよ。植物状態とかゆうたか?
そのことを知っていた神様以外のすべてが絶句した。死者じゃないのにここに、あの世にきた。ただし植物状態。僕だって、上司たちだってすごく驚いている。でも美里にとっては、驚きとかそれどころじゃなかったようで、呆然としていた。思わず僕は神様に尋ねた。
——では、美里はどうなるというのですか?
——どうもせぬわ。いや、どうにもできぬといったところかの。
——それは、どういうことで?
——妾たちではどうにもできぬということよ。美里自身がどうしたいか考え、努力するしかなかろうて。
「私は!私は、まだ生きたい!」
呆然としていた美里が話の途中で我にかえったのか、突然叫んだ。その瞬間、光があふれた。僕たちはぎょっとして美里の方を向く。驚いたことに美里から光があふれているのだ。美里自身も驚い多様な顔をしていた。意思の力…と誰かがつぶやいた。神様が叫ぶ。
——美里!驚いている場合ではない!「生きたい」という意志を強く持つのじゃ
「生きたいという意思…そう、私はまだ生きたいの!死にたくなんてない!」
美里が再び叫んだとたん、光はさらに強くなり、僕は目を開けていられずに、目を閉じた。目を閉じている間、何があったのかはわからない。だけど、その間に美里が還ったらしいことは間違いがないようだ。目を開けたとき、そこに美里はいなかった。
美里が還って数日経った。僕の日常はかわらない。今日も今日とて受付業務だ。目の前には長い行列がある。どれだけさばいても減っているようには見えない。それでも僕は僕の仕事をするだけだ。
——はい、次の方ぁー
なんだかんだ、3話も続いてしまいました。
しかも1回1回終わり方があんなのですいませんorz
これで天使のお仕事は、ひとまず完結ですが、ネタというか、アイデアはあるので、また続くかもしれません。いえ、まだなんにも考えてないのですが。
それでは次の作品、もしくは続編でお会いできますように。