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星詠みと流星  作者: 黒崎メグ
一章 命降る夜
5/31

【5】

 セラは言葉の意図がわからず目を瞬かせる。

「どうして?」

「兵達がそれを許さない。きっと命を狙われるだろう」

 セラは僅かに肩を震わせ、昼間の兄との遣り取りを思い出す。何もせずに受け入れることを、セラは決して望まない。他に方法があるにも関わらず、それをせずに黙って受け入れるようでは、村の大人たちと同じになってしまうからだ。

 今こそ考えを行動で示す時だろう。

「私、やる!」

「命が惜しくないのかい?」

 怖くないと言ってしまえば嘘になる。それでもセラには強い決意があった。

「端からあんなやつらにくれてやる気なんてないわ。私は私の未来のために行動を起こすの」

 セラは決意を音にして、繋がれた手にぎゅっと力を込める。その途端、セラの耳をついたのは軽快な笑い声である。

「乙女、君は母様が言っていた通りの人物のようだ」

「母様? 星にも親がいるの?」

「もちろん。君に両親や兄弟がいるように、俺にも肉親はいるよ」

「でもなぜ、あなたの母親は私のことを」

 知っていたかってこと?――と、流星は言葉尻を奪うと、苦笑いを浮かべるように目尻に皺を寄せた。

「それは考えるまでもないことだよ」

 彼が星であるなら、親も星なのだ。セラは流星が口にした言葉の意味を悟った。彼らは空からすべてを見ている。確かに尋ねるまでもないことだ。セラはそれ以上そのことには触れず、言葉を続けた。

「ねえ、流星、あなたは自由に生きられる場所を知っている?」

「なんでそんなことを聞くんだい」

「もしこの村にいられないなら、私はそんな場所に行きたいもの」

「それがどんなに困難でも?」

「ええ」

 はっきりと答えたセラに、流星は何かを思案するように険しい表情になった。

「君ならあるいは……」

 流星の呟きは本当に小さくて、セラは最後まで聞き取ることができなかった。教える気がないのか、それとも最初からそんな場所など存在しないのか。もし存在しないというなら、それはセラにとって悲しむべきことだ。それでも流星の次の言葉は、セラの気持ちを幾分か浮上させる。

「わかった。俺が君の望む場所まで導こう」

「本当にいいの? 兄さんのことでもお願いを聞いてもらったのに」

「いや、元々あれは、誰かが言わねばならない言葉。そのために誰かが死ぬのは見たくはない」

 セラはふっと気持ちが軽くなった。誰かが死ぬのは見たくない――という言葉が自分の思いと重なる。それは流星を信頼するには十分な言葉だ。

 きっと兄に死が迫ることはないし、セラ自身も自由な場所を手に入れられるだろう。

 不安は薄れ、セラの中では期待が生まれつつある。

「行きましょう、流星」

 返事の代わりに流星は、力強くセラの手を引いた。


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