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星詠みと流星  作者: 黒崎メグ
三章 オーロラの都と声無き者の使者
19/31

【5】

「そう尋ねるということは、シューレでも既に目に見える形で変化が起こっているということですね?」

「ここ数ヵ月、皇帝からの命令が増えたせいで、多くの星詠みが亡くなっているの。それと関係があるのね?」

 ずっとセラが感じていた異変と兵の言葉は繋がっている。

「ええ」と肯定を示したノズに、ごくりっとセラの喉が鳴った。

「ガレとドレナの間で戦が起ころうとしています。いや、既に小競り合いは起こっている。その戦局をよむために皇帝はシューレを利用しているのです」

「なんで……」

 そんなことにシューレの民の命が失われなければならないのだろう。いやそれだけではない。その争いのなかで兵達の命もまた失われているのだろう。彼らもまた仲間の死を嘆いているのだと、セラはようやく答えを得た気がした。

「戻らなくちゃ」

 このまま黙って命が奪われて行くのを見過ごすわけにはいかない。知ってしまった以上、セラはいてもたってもいられなかった。

 勢いよく立ち上がったセラの腕を、ノズが座したまま掴む。

「待ちなさい」

「このまま放っておけというの!」

「いいえ、ご心配はもっともです。ですが、今は耐えてください」

「なぜ?」

「……我々がいます」

 言葉と共に握られた腕に一層力が込められ、セラは動きを止めた。

 それは戻ったセラから彼らの情報が漏れることを心配しての言葉なのだろうか。初めはそうであったかもしれない。けれどセラが垣間見たノズの人柄は、思い浮かんだ可能性を否定するには充分だった。

 その言葉を素直に受け止めるならば、ノズ達は解決の糸口を掴んでいるのかもしれない。

「ノズ達を信じて何が変わるっていうの?」

「変わります。いえ、変えてみせます。我々の目的は戦を止めること。そのためにここにいるのですから」

 そのためには、いったいどれだけの人の心を動かさなければならないのか。国を敵に回したも同然だ。きっと敵も多いだろう。

 それでもそれが本当に成せるとしたら、それに賭けてみる価値はあるのではないか。そんな淡い期待がセラの脳裏に浮かんだ。

 その期待を後押しするように、若様の声が響く。

「セラ、僕にはまだすべてを守るための力はないけれど、僕を、僕達を信じてくれないか」

 ノズ、タキスは言葉に重なるように力強く頷いている。

 本当に信じてみてもいいのだろうか。セラ自身が一人では成せないことでも、彼らと共になら成せる気がする。そんな風にして、信じたい気持ちは膨れ上がっている。だがセラにはまだ迷いがあった。

 ガレが戦に向かっているというのなら、やはりシューレに残した流星が気がかりだ。

 若様はセラの迷いを感じ取ったのだろう。火を回り込むようにしてセラの側に寄り、昨夜からその素顔を覆い隠していたマントのフードをゆっくりとおろした。


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