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星詠みと流星  作者: 黒崎メグ
三章 オーロラの都と声無き者の使者
18/31

【4】

 では他にどんな手立てがあるというのだろう。

 セラが知る大人はシューレの人々か帝国兵しかいない。

 シューレの民のように強き者に従いその庇護のもと過ごすという選択肢を、セラは選ばなかった。だからこそセラにとって身を守る術とはまさしく武力だったのだ。

 力があれば、兄を迎えに来た帝国兵に悔しい思いをしなくてすんだだろうし、流星を守るために残ることもできただろう。

 帝国兵が村で威張っていたのは、皇帝の威光もあったが、何より彼ら自身が村人を黙らせるだけの力を持っていたからでもある。それを越える力があれば、彼らを退けることは簡単なことだろう。

 けれど、ノズの言葉はそれを違うと言っているようなものである。

「よくわかんないよ」

 ノズの言葉の意図をはかりかねてセラは呟いた。お腹が空いていては頭も回らない。

「こちらにいらっしゃい」

 ノズは焚き火の側にセラを招くと、隣に座らせた。

「力は時に人を傷つけます。だからこそ正しい意思の下で使わなければならない。今のあなたにそれができますか?」

 自身に害をなす者をただ排除するだけの力では駄目なのだろうか。

 ノズやタキスだってセラを傷つけようとしたのだ。その違いがセラにはわからなかった。

 答えを持たないセラを見て、ノズは言う。

「国には国の法があり、人には人の思いがある。それらがあなたと相容れないなら、あなたの心は力でそれらを排除することで満たされますか?」

 ゆらゆらと揺れる火の影が、ノズの顔に陰を落としている。その表情が昨日みた兵のそれと重なって、セラは彼に投げられた言葉を思い出した。

 世間知らずの小娘が、命の危機に晒されているのが自分達だけだと思わないことだ、と。あの言葉の理由(いみ)をセラはまだ知らない。だからこそ、セラはノズの問いに頷いていいのかわからなかった。

「……わかんない。わかんないよ」

 答えを知っていれば、自分は彼を排除しようとは思わないのだろうか。それともそれでも立ち向かっていただろうか。

 ノズの視線に耐えきれず俯いたセラの顔を、ノズの手が包み込んだ。ゆっくりと上に向けられ、ノズの瞳とセラの瞳がかち合う。

 心の奥底を覗き込むように瞳の奥を見つめられ、セラは視線を逸らせなかった。

「わからない、と思うのならば」

 と、セラが逃げないことを確認して、ノズの声音が強くなる。

「国を知り、人を知り、文化を知り、その上であなたが正しいと思う心に従いなさい。あなたにまず必要なのは、その心を見極めるための知識です」

 そう言ってノズの手がようやく頬から離れた。セラは頬に残る熱を感じながら、ゆっくりとノズの言葉を反芻する。

 無知だから、単純に力が欲しいと思った。けれど何も知らず排除するだけの力では、心を守る盾にはならない。

「ノズ、ガレで何が起ころうとしているの?」

 それはノズ達がなぜセラを傷つけようとしたか、ひいては彼らの素性にも関わることだ。触れてはいけない、と頭が警鐘を鳴らす一方で、心が答えを求めている。

 この答えを聞かない限り、兵の言葉に対してセラの心は答えを出せないだろう。

 ノズは深く溜め息を吐くと、お伺いをたてるように、焚き火越しに向かいに座る若様を見やった。若様が同意するように頷いたのを見て、ノズは静かに語り始めた。



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