【7】
「ノズ、わたし何も知らずただ守られているだけは嫌よ」
守るという言葉は、セラに皇帝を思い起こさせた。皇帝から与えらる仮初めの安穏を、村人は守られていると称していた。
それを受け入れているのが嫌で嫌でたまらなかったはずなのに、自分一人ではまだ何ひとつ成せないのか。そんな葛藤がセラの中に生まれている。
ノズの好意もわかっているので、セラはいたたまれずに、ごめんなさいとか細く付け足した。
「いや悪いのはこちらだ。シューレの民である君にノズの発言は失言だった」
ノズは気の聞いた言葉が見つからなかったのだろう。困ったように眉を寄せた彼に代わり、若様は怒るでもなく優しく答えた。
「わたし、ノズが言いたいこともわかるの。わたしは外界を知らない。何が危険で何が安全かも。自らで身を守る情報すらもたないもの」
自由を求める選択をした自分は、シューレの皆とは違う。一種驕りにも似た感情が自身の中にあったことに、セラはこの時初めて気がついた。
けれど一歩外に出てしまえば、自分はあまりにも無知でちっぽけだ。
「お願い、わたしに身を守る術を教えて」
足りないものを学ばなければならない。それは進むための一歩だ。そのために頭を下げるのは苦ではなかった。セラは深々と頭を下げた。
 




