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星詠みと流星  作者: 黒崎メグ
二章 北へ
12/31

【5】

 音の滴が落ちてくる。

 青年は瞬きをして、ベッドの上に身を起こした。

 起き上がった拍子に髪結いの糸がほどけ、黒橡色の髪が頬に掛かる。彼はそれを気にするまでもなく、窓の外に目をやった。幼さの残る甘い顏に反して、髪の合間から覗く紺碧の瞳は酷く険しい。

 宿屋の部屋は狭く、ベッドと彼の荷物があるだけで、他に人の気配はない。そもそも人々はすでに寝静まっている時刻である。

 現に彼も疲れた身体をベッドに横たえ、眠りの波に身を任せていたはずだ。

 けれど、その眠りは音の滴に阻まれた。

 いや、音というには曖昧な空気の震えが先程から滴となって落ちてきている。

 アルクトゥールス(この地)に着いてから三日、こんなに天の裂目から音が落ちてくる日は今までなかった。

 枕元に置いた小さな竪琴を手にとり、彼は窓枠に身を寄せた。

 ぽろんっと腕の中の弦を弾けば、空のオーロラがそれに答えるように揺れる。

「流星、何を伝えようとしているの」

 彼は友の名を呼んだ。しかしここに居ない()の友は、答える声を持たない。ただただ、空に輝くオーロラが何かを警告するように赤くゆらゆらと揺れていた。



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