7話
ここでマナポーションを補充するのは少しもったいない気がしたが、雷切の新しい使い方を検証したかったのだ。
あのカタツムリは確かに強敵といえるかもしれないが、距離をとって戦えば大した相手ではない。俺の鍛錬の相手としては好都合だ。
カタツムリを倒した地点に蛍石を配置して、
「先へ進もう。」
―そういえば、ダンジョンにはお宝が存在するという話だったな
「魔法王国エルドリア」の世界では、ダンジョンにはアイテム類が存在したはずだ。宝箱であったり、マップ上に光る点として表示されていたり、どのように存在するかは一定ではないが、とにかくそういった類のものが存在した。
―ここもダンジョンという話だから、もしかしたら何か見つかるかもしれない
それから少し先へ進んだところに、広い部屋のようなものが見えた。
俺はその部屋に進む前に、魔眼を使用する。
すると、その部屋には複数のあのデカいカタツムリがうごめいていた。何も知らず不用心に部屋に入ると、溶解液でアウトだっただろう。
「―だが、今は好都合だ。」
俺は少し離れた位置で時間をかけて雷切を作る。
バチ・・・バチッ
―よし。
「さて、効果のほどは如何に。」
ちょうどおあつらえ向きに正面に1匹デカいカタツムリがいる。
俺は雷切をそのまま振りかぶって投擲する!!!
―ビュンッ
雷切はそのままカタツムリに向かって直進し、直撃する!
―バスンッ!
――バリバリバリッッ!!
巨大なカタツムリが感電する!
しばらく感電した後、黒焦げになって動かなくなった。
―この雷切も恐るべき技かもしれない
これは高い防御力を誇る相手に対しても、その防御を無視できる可能性がある。
これを使えば、例えば、分厚い装甲を持つ相手に対しても戦うことができるだろう。
―ただし、
「―これも基本的に人には使えないな・・・。」
雷切を使用する場合、迅雷と同様、またしても殺傷能力が高すぎるのである。また、そもそも作成するのにかなりの時間がかかる。
とはいえ、それが鍛錬をしない理由にはならない。あまり考えたくはないことだが、ゼヘラのような強敵を相手にしなければならない際には、是が非でも自在に使いこなせるようにしておきたい技であることは確かである。
俺はカタツムリが倒れるのを見て、離れに戻ることにした。帰りは蛍石を配置しているので、問題なく戻ることができるだろう。
離れに戻ってくるときには既に夕暮れになっていた。
そんなにダンジョンに長居したつもりはないが、それなりに時間が経過していたようだ。
―もう少し長い時間探索するには、やはり携帯食料品が不可欠だろうか
離れの前にセバスが立っているのが見えた。
「お帰りなさいませ、坊ちゃん。」
その手にはバスケットを持っている。
「わざわざすまないな、だが何か用か?」
特に用事がなければメイドに持ってこさせるはずだ。
「―ええ。一昨日の件ですが。」
イシュトとローズのことだろう。
「それがどうかしたか?言っておくが、俺をここから他に移動させたいのなら、力づくでやってみろというのは変わらないぞ?」
「―ええ。承知しております。実はその、申し訳ないですが、もう一度ボアを取ってきて頂くことはできないでしょうか?その・・・。イシュト様とローズ様がボアをひどく気に入ったご様子でして。」
―ぼあ。ぼあってあの?
「―おまえは、人のことを一体全体、何だと思っているのだ。」
さすがの俺も呆れてしまう。いつの間に俺はボア取り名人になったのだろうか?
「・・・申し訳ございません。ですが、そこを何とかお願いできないでしょうか?」
もしかすると、親父殿からセバスにプレッシャーが加えられているのかもしれないな。
「―しょうがないな。セバスや使用人には世話になっているからな。」
ボアを取ることはそんなに大変なことではないので、俺の立場を考えると、ポイント稼ぎをしておくことは悪くないだろう。
「ありがとうございます、坊ちゃん。こちら本日の夕食です。」
そう言うと、セバスはバスケットをこちらに渡してくる。
「ああ、すまないな。で、ボアはいつまでに必要なんだ?」
「二週間後までには準備して頂きたいのです。」
―次にローズが泊りに来るのが二週間後ということか
「分かった。ではそれまでに用意しよう。」
「ありがとうございます。それでは、私はこれにて失礼致します。」
そう言うと、セバスは別邸の方へ戻って行った。
―ボア取り名人か・・・
だが、むしろ自分で言い得て妙だと思った。




