6話
そして、再び俺はダンジョンにやってきていた。
なんとなく、ダンジョンというのはもっと広く、冒険者が大人数で探索している印象があるが、ここはそういった意味でダンジョンといえるのだろうか?
改めて中に入るとそれなりの広さはあるものの、冒険者が大人数で探索することは広さ的にかなり難しい。そういったことも、このダンジョンに人の気配がない理由かもしれない。
俺はカンテラに火をつける。
―行こう。
俺はダンジョンに入っていく。
今日の荷物は、いつものポーション1つとマナポーション2つの入ったポーチの他に、ポーションの大瓶と蛍石の入った上等の袋を持ってきている。
先へ進んでいくが、今日はフライングバットの気配は感じられない。
―何かいるのか?
経験上、フライングバットのようなありふれた魔物がいない場合、強敵が徘徊している可能性が高いのだ。
先に進んでいくと、道が二股に分かれていた。
―どうする?
今日はまだ一度も戦闘をしていないので、ここで引き返すとわざわざダンジョンに来た意味がない。
「念のため蛍石を置いて、とりあえず右の通路を進むことにするか。」
カンテラだけを使用しても見通しは悪い。
俺は魔眼を発動させる。
やはりカンテラと魔眼があれば、かなり鮮明に周囲を見ることができるようだ。
もしかすると、魔眼も鍛えていけば、魔眼だけで暗い場所でも鮮明に見ることができるかもしれないが、これは今の俺には難しい。
―すると。
少し先の方に何かがいるのが見えた。
「・・・カタツムリ?」
魔眼で見えたのはでっかいカタツムリである。
基本的に魔物は「魔法王国エルドリア」の知識があるので、大体はどのような魔物がいるのか知っているが、あんな魔物は見たことがない。
―もう少し近づいてみるか。
カンテラで見える距離まで近づいてみたが、やはりでかいカタツムリだ。
このダンジョンにはウルフもいるのだ。そんな中、ででーんと居るのは何かしらの戦闘力を持っているからだろう。
・・・だが、知らない魔物だとあえて攻撃してよいかどうか悩むな。
とりあえず、魔力変換を使って挨拶がてら、電撃を打ち込むことにする。
―バチバチッ
だが、電撃を放った瞬間、ひょいとカタツムリは殻の中にこもり、殻に電撃がはじかれてしまう。
「―む?」
そのままカタツムリは殻から出てくる気配がない。
―どうする?
あえてこんなところで魔力を消費するのも馬鹿馬鹿しいか。
俺はカタツムリの横を素通りしようとする。
だが、まさにカタツムリの横を通り抜けようとしたそのとき!
ビチャアッ!!
今度はカタツムリはひょいと殻の中から姿を現し、こちらに何かを吐きかけて来た!!
「―迅雷!!」
俺はすんでのところで回避する!
―なんだありゃあ??
先ほどまで俺のいた場所に何かの粘液がかかり、ジュウジュウと嫌な音を立てている。
―なるほど、溶解液か!
不用意に近づきすぎた!
きっと普段は殻の中に閉じこもり、獲物はあの溶解液で溶かしてから、後でじっくり食らうのだろう。
―だがどうする?魔力変換による電撃は効かない
より電撃を高圧にすることもできるが―
「幸い周囲に他に魔物はいないな・・・。」
―あれを試してみよう
バチッ・・・バチバチッ・・
俺は魔力集中から魔力変換を行い、それを短剣の形にする。
―やはりまだまだ時間がかかるな
これをできれば数秒で、もっといえば、瞬時に形作ることが理想だ。
「・・・こいつを実際に魔物に使うことは初めてだな。」
どんな結果になるか。
「迅雷――」
俺は着地と同時に魔力を切り替え、手に持った雷切をでかいカタツムリに突き刺す!
――すると
バリバリバリッ!!!
雷切はカタツムリの殻を貫通し、内部に突き刺さったようで、カタツムリが感電している!
―随分と長い時間感電しているな?
やがて、巨大なカタツムリは黒焦げになり、やっと雷切の効果が切れたようだ。
―これは予想外だ
自身の手を離れても雷切はしばらく形を保ち、そのままそこから放電されるようだ。
「であれば・・・。」
俺は雷切の別の使い方を思いつく。次同じカタツムリの魔物がいれば試してみよう。
俺はマナポーションを補充することにする。




