4話
ダンジョンに滞在した時間はわずかだった気がしたが、離れに戻る頃には日が暮れようとしていた。
玄関の前を見ると、メイドがバスケットを持って立っていた。
「―すまん、少し出かけていたんだ。」
俺はメイドに礼を言う。
「イシュバーン様、とんでもございません。こちらお夕食です。」
そう言うと、メイドはバスケットをこちらに渡してきて、一礼をして去っていく。
離れの中に入ると、俺は家の灯の明かりをつける。家の大きな灯りは魔石を使うタイプのものが備わっていた。これらの魔石もダンジョンにいる魔物を倒すことで手に入ることがあるらしい。俺の家の灯は、その魔石に蓄えられている魔力にはまだ余裕があるようだ。
それ以外にはお決まりの燭台と蝋燭。だが、俺はよく鍛錬を行うので、空気を振動させることがあり、これによって蝋燭がこけてしまうと危ないので、蠟燭を使うことは寝る前以外にあまりない。
飯を食いながら、今日のダンジョンのことを振り返る。
まず何と言っても魔眼の有用性だろう。やはり目を開けたまま使用できるので、ポイントを絞って使用する分には問題はない。ダンジョンで使用すると、わずかばかり視界がよくなるというメリットもあるので、ダンジョンアタックをする際には必要に応じて、無理のない範囲で使って行こう。
あとは、ダンジョンの敵について。ダンジョンでは森にいないような魔物がいるだろうと思っていたが、さっそくウルフと遭遇した。ウルフは魔物の中では素早く動くので対処が難しいと聞くが、俺にとっては何の問題もないようだ。
―次はもう少し奥まで行ってみても問題ないだろう
そのためにはもう少し準備を整える必要があるかもしれない。ダンジョンに持っていくものを整理してみよう。
まずはカンテラ。これは周囲をよく照らすために必要なものだが、魔眼を使用したとしても少ししか明るく見えないので、次回も持っていく必要がある。
そして、蛍石だ。こちらの蛍石は魔力を通すと、長時間じんわり輝いてくれるというシロモノである。今回、俺の探索するダンジョンはほとんど真っ暗といってもよいようなダンジョンなので、帰り道が分からなくなると困る。探索する際は迷わないように、ところどころ、この石を配置し、帰りはそれを回収しながら戻ることで、出口にまで戻ることができる。
あとはポーション。いつも持ってきているが、今回はもう少し買い増しする必要があるかもしれない。
蛍石やポーションはいつも行く金物屋では売られていない。これらは別の店で調達する必要がある。ポーションは道具屋にあり、蛍石は魔法店に行けば見つかるだろう。
そんなことを考えていると、飯を食べ終えていた。
腹が膨れたので、これから鍛錬の時間である。
鍛錬するべきものは、もう一つ新たに手に入れた俺の技、雷切である。
鍛錬場で、俺は魔力集中から魔力変換を行い、手に纏わりつく電撃を慎重に刀の形に変化させる。
バチッ・・・バチ!
―できた。
大体、雷切を形作るのに必要な時間が一分程度である。
一度作ってしまえばその形を保つのは容易いので、まず鍛錬するべきはその形を作るのに必要な時間を短縮させることだろう。
長さを変えるだの、より強力で使い勝手のよいものにするだの、改良を加えるのはその後だ。雷切を作るまで一分もかかっていたのでは、実戦で使い物にならない。
俺は今形作った雷切を一度解除して、再び雷切を慎重に作っていく。




