21話
翌日、俺は再び森へやって来ていた。
「さっそく試してみるか。」
サラマンダーを切り分けたときは小刀を使用した。しかし、今回は道具を使用せずに、というお題があるのだ。小刀を使うわけにはいかない。
だが、あのときとは異なり、今の俺には魔力変換がある。あのときは無理やり小刀に魔力を通していたが、魔力変換を使うことであたかも小刀を使用したときと同じような状態が再現できないだろうか?
―物は試しだ
俺は魔力集中から魔力変換を行い、それを刀の形に変化させようとする。
バチッ・・・バチッ・・
拡散しようとする電撃を一定の形に保つのはそれなりに難しいが・・・。
――できた
右手に電撃の短剣が出現する。今の俺ではこの程度が限界だが、今回試すものとしてはこれで十分だろう。
以前、小刀に魔法を集中させて無理やり電撃を通したときに比べれば、こちらの方が魔力効率がかなり良い。今はまだ電撃の短剣を作るまでにかなり時間がかかるが、瞬時に作成できるようになればこれもかなり有効な武器になるかもしれない。
「雷切とでも名付けておこう。」
俺は厨二な名前を付けることにする。
雷切と言うには小刀程度の大きさではなく、もう少し大きな刀の格好が欲しいところだ。
俺は雷切で丸い岩を切りにかかる。
ブゥゥゥンっと最初岩に雷切がかき消されるが、継続して岩を切ろうとすると、少しずつかき消されていた刀剣が復活していく。
――そして。
「届いた!」
ついに雷切の刀剣が岩にまで達する。
ジュゥゥゥゥと音を立てて岩に切れ目が入っていく。
―この岩を切ることができるのか。
改めて俺は雷切の可能性を知る。
確かに本来の迅雷や、魔力変換に闘気を合わせた全力の突きや貫手に比べれば威力は劣るかもしれないが、少しでもリーチを長くすることができるのはありがたい。
また、何よりも攻撃のレパートリーが増えることがよい。もっと長くすることができれば、例えば相手が炎を纏うような、それこそフレイムサラマンダーのような相手であったとしても、こちらの攻撃を通すことができるかもしれない。
「―また鍛錬するべきものが増えたな。」
俺は人知れずニヤリとする。
ゆっくりゆっくり岩を切っていく。その際に岩が俺の魔力を削るようで、ちょうど半分くらいまで切れ目を入れたところで俺の魔力が尽きた。
「・・・ふう。」
俺はマナポーションを飲む。念のため持ってきておいて正解である。
「―さて、やるか。」
気合を入れてもう一度。
バチッ・・・バチバチッ・・
―やはり短剣の形まで持っていくのにある程度の時間がかかるな。
しばらくして、雷切として使える形にまで持っていく。
そして、先ほどまでと同じようにゆっくり岩を切っていく。
そうしてしばらくの間、岩と格闘して、
―ペキッ
そんな音が聞こえ、ペキペキペキッと割れ目が大きくなり、パカンッと岩が半分に割れた。
「おお、割れたぞ!」
戦闘をしたわけでもないが、ちょっと嬉しい。
―ほう。やりおったか。
少し遠くから巨大な白蛇はこちらを見ていたようだ。
「ああ、やったぞ。約束通りほうびをくれ。」
―よいだろう。・・・ほれっ。
「?」
特に何も変化がない。いや、視力がよくなったか?
―魔眼をくれてやったわ。汝の妙な技。目を開けた状態で使えるだろう。
「なに?」
俺はレーダーを、目を開けた状態で使ってみる。すると、目を開けた状態で、少し奥の場所や、茂みの奥のボアの様子を見ることができた。
「・・おお。これは凄い。」
―汝、テレジアの娘と知り合いか?
――ラズリーのことだろうか?
「ラズリーのことか?彼女なら知り合いだ。」
―また機会があれば連れてくるとよい。
「おまえ、やっぱり公爵家と何か関係があるのか?」
―それではな、また会おうぞ。
俺の質問には答えずに、蛇はびゅんっと飛び、去っていった。
「・・・どっか行きやがった。」
俺はしばらく蛇の行った方を見つめた後、離れの館に戻るのだった。
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