2話
「知っての通り、隣のクラスで事件があった。これについては現在調査中だ。しばらくの間、隣のクラスは立ち入り禁止だ。いいな。」
簡単に経過が報告される。
「今日は手短にするぞ。休暇明けに試験がある講座もあるだろう。各自長期休暇に何をすべきかは既に把握しているな?対策を怠らないように。」
「休暇中、図書館が本来は生徒に開放される。だが、今回に限っては運営方針を教員で検討している。仮に運営され利用できるということになったとしても、できる限り休暇中は学院には来るな。いいな?」
「あと、イシュバーン。お前はこのあと教務室に来るように。」
意外にすぐに呼び出しがかかったようだ。クラスルームが少しざわつく。
「了解だ。」
俺は短く返事をする。
「それではこれで解散。」
俺はその後、教務室に向かうことにした。
教務室の前まで行くと、予想していたことだが、既にセフィリアとラズリーが待っているようだった。
「お前たちも呼び出しか。」
俺は二人に声をかける。
「イシュバーン。貴方もなのね。」
ラズリーが少し疲れた様子だ。
「何かあったか?」
「―ええ。何があったか色んな人に聞かれてちょっと疲れちゃった。」
そこへ、俺のクラスのホームルームの担当がやって来る。確か名前は―。
「ガレリア先生。」
セフィリアが俺のクラスのホームルーム担当に声をかけた。
―そうだ、名前はガレリア。思い出した。
「こっちだ。ついて来い。」
そう言うと、教務室から離れ、廊下を歩いていく。俺たちはガレリアの後を歩いて行くが、辿り着いた先は。
―学院長室
ここの学院長は名をレグルスといい、魔法王国の宮廷魔術師をしている。早くからハーヴェルの才能を見抜き、ハーヴェルを勇者として推薦する重要人物である。もっとも、当然のことだが、イシュバーンがレグルスと会話を行う場面などは原作にはない。
コンコン
ガレリアがノックをする。
「入れ。」
扉の内側から声がした。
ガレリアが扉を開け、セフィリアとラズリーと俺に中に入るように促す。
「「―失礼します。」」
セフィリアとラズリーがそう言う。
俺はというと、イシュバーンであればこういった場面では何も言わないだろうと判断し、特に何の挨拶もしないことにする。
「―やあ、来たか。」
原作でも見覚えのある、モノクルをかけたやや長身の男。それがレグルス。学院長と言うにはかなり若くみえる。
レグルスについては、原作でも魔法王国エルドリアの宮廷魔術師で、魔法学院アルトリウスの学院長をしていることぐらいしか情報がない。
そのため、実際の年齢は魔法を使用することにより、あえて若く見せている可能性や、あるいはエルフやハイエルフといった長命種の可能性もある。
いずれにせよ、「魔法王国エルドリア」のゲームではイシュバーンがレグルスと関わることがない以上、レグルスについては情報があまりなかった。
などと考えていると、
「はあ。イシュバーンよ、挨拶ぐらいせんか。」
ガレリアがため息まじりにそう言った。
「―よい。ガレリア。」
すると、レグルスの方からガレリアに待ったをかける。
「君がイシュバーンか。話は聞いている。想像していた通り、ユニークな人物のようだ。」
褒めているのか褒めていないのか分からないが、まあ多分後者だろう。
「ああ、すまない。何分このような場には慣れていなくてな。」
俺は素直に詫びを入れることにする。
「構わないよ、イシュバーン。それで、さっそく本題を聞かせてもらおうか。事件について一番よく知っているのが君だったね、ラズリー。詳しく話を聞かせてもらえないかい?」
レグルスはある程度の事件の概要は把握しているようだったが、もう一度ラズリーから直接聞きたいようだった。
「―はい。学院長。実は―」
そう言って、ラズリーが当日の状況を話し始めるのだった。




