エピローグ
翌日。いつもの習慣で朝早く起きる。
ラズリーもセフィリアもまだ起きてはいないようだった。
セフィリアは昨日からずっと寝ているが、息はあるようなので、問題はないだろう。
俺はラズリーとセフィリアを起こさないように、いつものランニングに向かい、帰って来たところで、メイドから3人分の朝食を受け取った。
水風呂にさっと入った後で、二人を起こしに向かう。
ちなみに、ラズリーとセフィリアには同じ部屋を割り当てていた。
「起きているか?」
ガチャッとドアを開けるが、二人ともまだ寝ているようだった。
「おい、起きろ、ラズリー、セフィリア。」
俺は二人を起こすことにする。
「う・・・ん。あと少し・・・。」
ラズリーが寝ぼけまなこで言う。―少し可愛らしい。
「おい、朝だぞ。」
ゆっさゆっさ。どことは言わないが、揺れるくらいのちょうどいいサイズである。眼福である。よきかな、よきかな。
「ん。・・・おはよ。イシュバーン。」
ラズリーが先に起きた。ここまではいい。
今日はさすがに昨日から寝ているセフィリアを起こす必要があるだろう。
「おい、セフィリア。起きろ。」
ゆっさゆっさ。眼福が許されるのはラズリーまでだ。セフィリアのそれを見ないように注意して体を揺する。
「はっ!」
―なんか凄い起き方をした。
ちなみに、ラズリーは館にあった寝間着に着替えさせたが、セフィリアはまだ着替えてはいない。
不思議なことに、何故かは知らないが、館に女物の着替えと下着があったのだ。前の住人の趣味が特殊なものでなくてよかった。
「あれは・・・。あれはどうしました!?」
セフィリアがこちらに聞いてくる。
「ラズリー、説明を頼む。俺はたまたま通りがかりにお前たちが倒れているのを見ただけだ。それでこの館に一旦案内したにすぎん。」
「・・・分かったわ。」
ラズリーが頷く。
「それじゃあ、俺は朝飯の準備をしてくるよ。」
扉を開けて、二人の部屋を後にした。
しばらくすると、二人が階段から降りてくる。
「おはよう、イシュバーン。」
「・・・おはようございます。イシュバーン。」
「おはよう。二人とも。飯の準備はできているぞ。さっさと食って学院に向かおう。」
ラズリーがどういう風にセフィリアに言ったかは知らないが、上手く説明できていることを願おう。
「・・・イシュバーン。もしかすると、貴方には後で公爵家までご足労願うことになるかもしれないわ。」
ラズリーが物騒なことを言う。
「待て。何で俺が。」
「・・・しょうがないのよ。貴方は私たちを見つけただけだけれど、それでも話を聞かないわけにはいかないと思うわ。迷惑をかけるのは・・・ごめんなさい。」
その表情はラズリーの感情が伝わってくるものだった。
―しょうがないか。
「グラウスもいなくなってしまいましたし。」
何故かセフィリアの表情はサバサバしている。
「セフィリア、悲しくないのか?」
「悲しいですわ。でもそんなことばかり言ってられないでしょう?」
―そう簡単に割り切れるものなんだろうか?
「なぜ公爵家なんだ?」
「王宮に呼ぶより、きっと公爵家の方が良いと思ったからよ。」
ラズリーが口にする。
―気を遣ってくれたのかもしれないな。
「―分かった。だが、別に何か新しいことが分かるわけではないぞ?」
再度念押しを行う。
「ええ。分かっているわ。」
ラズリーが答える。
そして、二人をクラスルーム前に送ったが、ラズリーのクラス前は騒然としていた。
べっとりとした血の海があたりに張り付いていたからだ。
建前ではこれを誰がやったか、俺は知らない。そういうことにしろとラズリーと約束している。
―面倒なことにならなければよいが。
そして俺は自分のクラスに入る。
当然ながら、俺のクラスの学院生のかなりの数が隣のクラスの野次馬になっていた。
適当に机にカバンを置くと、向こうから一人の男が近づいてきた。
「イシュバーン。少しいいか?」
その男、ハーヴェルは言った。
「――俺ともう一度模擬戦をしないか?」
迅雷のイシュバーン、第1部 転生した悪役貴族 編 について完結です!
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