7話
サンダーボルトを魔力を集中させた状態で受けると、しばらく全身に電気が纏わりつくようになる。
―バチバチッ
「キッ!」
襲い掛かってきたフライングバットに対して、特に何もせずとも電撃が直撃する。
俺がすることといえば、電撃が発せられるごとに魔力集中によって電気を回復させることくらいである。
バチバチッ バチバチッ
「キッ!」「キキッ!」
次々に電撃が命中していく。
―何とか指向性を持たせることはできないだろうか?
ちょうど正面から飛んできたフライングバットに対して意識を集中させてみる。
すると
バチバチッ
「キー!」
正面のフライングバットに命中させることができた。
今のは偶然だろうか?
今度は斜め上から飛んできたフライングバットに対して電撃を命中させるように意識を集中させる。
バチバチッ
「キッ!」
やはり命中させることができた。
――こいつはかなり便利だ。
逆に、特定の個体には電撃を発動させないようにすることは?
横から飛んできたフライングバットに対して電撃が飛ばないように念じてみる。
―すると。
ドカッ
「キキー!」
フライングバットがこちらに体当たりし、俺に衝突にすることによって感電した。
こちらには特にこれといった衝撃はない。
―なるほど。つまりこれは魔力集中の応用なのだろう。
魔力集中そのものは魔力を飛ばしたりすることはできない。単に魔力を集中させるだけである。
サンダーボルトに当たることで、集中した魔力が電気に変換され、常に全身に電気を帯びるようになる。
そのまま特に何もしなければ、近くにあるものに向かって電気の特性で電撃が放たれる。
意識すると、今度は逆に魔力の特性によって電気を制御できるのかもしれない。
およそ推測にすぎないが、おそらく間違ってはいないだろう。
―だが。
わざわざサンダーボルトを受けないと魔力を電気に変換できないものなのだろうか?
実戦ではわざわざ魔法陣を描いてサンダーボルトを受ける暇はない。
単純に魔力を電気に変換するというのであれば、魔力集中と同じように鍛錬することによってそれが可能になるのではないだろうか?
近くにいるフライングバットを大体倒したところで、魔力集中を一度解除し、そして再び集中し、電気を帯びたときと同じようにイメージしてみる。
すると。
ブゥゥゥンという音とともに、全身に電気が纏わりつくようになった。
いざ試してみると、とても簡単に実践することができた。
この魔力を変換する過程を文字通り、魔力変換と呼ぶことにしよう。
魔力変換された状態で魔力集中を行うとどうなる?
―試してみよう。
すると、バリバリバリッという音とともに、周囲の電撃の密度が濃くなった。
向こうにある木を意識して電撃を放つイメージをする。
すると。
バチバチッ
サンダーボルトを放つことができた。厳密にはサンダーボルトではない。サンダーボルトとほぼ同威力の電撃である。
ある程度魔力を消費するが、迅雷ほど激しくはない。
―ということは。
今度は手に魔力を集中し、それを電撃に変換し、正面にある木に対して、手から電撃を放出するようにイメージしてみる。
―バチバチッッ
やはりサンダーボルトによく似た電撃を放つことができた。
魔力集中をさせればさせるほど、魔力から電気への変換密度が高まり、蓄積された電気を放出することで、より遠い距離まで電撃を放つことができたのである。
魔力変換は魔力集中と組み合わせて使用することで、非常に応用できる範囲が広い。
しかし、何度か試してみたところ、この魔力変換の技術も万能ではないことが分かった。
まず、電撃は無差別に放出されるが、対象を特定することはできる。
しかし、電撃を放つ対象を制限したり、特定の対象には電撃を放たないように制御したりする場合には、ある程度動いただけで魔力集中が途絶えてしまう。
また、対象を制限しようとしたとしても、自身の魔力の影響範囲を超えると、放出される電撃は魔法とは異なり、電気の特性が強まり、近くにより電気伝導性の高い対象が存在すると、サンダーボルトとは異なり、そちらに曲がってしまうのである。この性質は特に射程が長くするほど顕著だった。
つまり、突きを当てて使用するなど接近戦の場合には、無差別に電撃が放出されたところで敵に命中するので何の問題もない。
しかし、敵が離れていたり周りに味方がいる場合など、電撃を命中させる相手を特定したい場合には、自身の移動が制限される。
更に、自身の魔力の影響範囲を超える距離にいる敵に至っては、自身の移動を制限して対象を特定したとしても、そちらに電撃が向かうかどうかは怪しい。
――日が暮れてきた。そろそろ晩飯の時間だろう。
俺は離れに戻ることにする。
「そういえば、今別邸の方には親父とイシュトがいるんだったな。」
ボアをそのまま丸ごと家に持っていくのは少しまずいだろう。
一旦離れに持って行って、セバスを呼ぶことにしよう。




