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4話

「お帰り、兄さん。」

「なんだ、イシュトか。」


俺は森から帰ってくると、弟に出くわした。

今の俺は弟に何の感情も抱いていないが、イシュバーンは、弟を嫌っていたし、弟もイシュバーンを嫌っているようだった。


「こんな遅くまで何やっていたんだよ?」


「それはお前が気にすることではないだろう?」


「そんなんじゃ、また父さんの気を損ねるだろう。いい加減にしたらどうなんだよ?」


「ふん、お前には関係ない。」

俺は、実際にイシュバーンであればそうするであろう態度で、イシュトに接する。


「・・・イシュバーン様、イシュト様。お食事の準備ができました。」

メイドが階段から上がって来て俺たちに伝える。


「今行くと伝えてくれ。」

イシュトが冷たくメイドに言い放つ。


「かしこまりました。」


俺以外のヘイム家の人間も、メイドや使用人に対して冷たい態度をとることは知っている。


―そうだ、余りものの肉の炙ったやつを分けてみてはどうだろうか?

もしかしたら、彼ら彼女たちが普段食べているものよりもずっと美味しいかもしれない。



「おまえ、また学院で悪さをしているんじゃないか?」

飯を食っていると、急に親父が問いただしてくる。


「あん?悪さってなんだよ?」

確かイシュバーンは親父に対してもこんな感じで接していたはずだ。


「―姫様に粗相をしたんじゃないのか?」

姫様とは、同じ学年の第三姫・セフィリアのことか。


「別に何もしちゃいないさ。ただ、通る際に邪魔だったからな。」


・・・確か、そんなイベントがあったはずだ。


セフィリアが廊下にその家臣おともだちを従えて、廊下で何やら話していたのを、俺が邪魔だと言ってのけただけ。


イシュバーンの行為は、学院だから、ギリ許される範囲だろうが、俺も冷や冷やする。

親父の気持ちはとても分かった。


「次からは姫様に対してはもっと丁寧に接しろ。」


「分かったよ。」


「兄さんは貴族の何たるか分かっちゃいない。」

イシュトが文句を言ってくる。


「ふん、悪かったな。」

これについては俺もよく分からない。とりあえず、エライ人には気を付けようと思う。



炙り肉を食っていたせいか、すぐ腹がいっぱいになった。

その炙り肉をもって、俺は使用人の部屋へ向かう。


こんこん。ノックをする。

「はい、何か。おや、坊ちゃんではありませんか?」


「夜分悪いな。セバス、これを使用人に分けてくれないか?ボアの炙り肉だ。温めればまだまだ美味く食う事ができるはずだ。」


「はっ?坊ちゃん一体これはどういった・・・?」


セバスは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。

「いいから。これ美味いんだぜ。今日のとれたてだ。」

そう言って俺はボアの肉を一切れ、齧ってみせる。


「これは・・・。ありがとうございます。他の者も喜びましょう。」


「ああ。料理長に言って料理してもらえ。ああ、親父やイシュトには内緒だぜ?」

そう言ってニヤリと笑う。


「・・・かしこまりました。」

セバスは何とも言えない顔をしている。


「ああ。それじゃあ、頼んだ。」

そう言って俺は自室に戻ることにした。




翌日。

「坊ちゃん、昨日はありがとうございました。」

支度をしていると、セバスが声をかけてくる。


「なんだ?もう食ったのか?」


「いえ、料理長に聞くと、まかないに入れて私たちに提供されるようです。私は昨日試しに一口頂きましたが大変おいしゅうございました。あれはどこで手に入れたものなのですか?」


「ああ。あれは俺が森で狩ってきた。」


「坊ちゃんが?森で?」


「気にするな。それよりこのことは親父とイシュトには内緒だ。」


「坊ちゃん、それは・・・。」


「いいから!またボアを狩ってくることもあるだろうしな。」


そうセバスに言うと、俺はそのまま食堂に向かうことにする。

セバスは何ともいえない顔をしたままだった。

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