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3話

「天に住まう神イシュヴァルよ、その名において我は命じる。唸れ!サンダーボルト!!」

バチバチ!

サンダーボルトが発動し、近くのボアに命中する。ボアはシュウシュウ音を出してばたっと倒れた。


休日、俺はダンジョンのほど近く、魔物の住む森に来ていた。


―とてもではないが、ハーヴェルに通用する技ではない。


ハーヴェルとの模擬戦は、合計3回。そのうち、1回目の模擬戦がこれから待ち構えている。何か対策をする必要があるだろう。


通常、魔法学院アルトリウスは貴族の家系にしか門戸を開いてはいないが、優秀な者にはその限りではない。ハーヴェルは平民の出であるが、魔法学院に入学を許されているという点で、その才能は計り知れない。


対して、俺は現時点では侯爵家の跡取りという点でのみ、ハーヴェルに勝るが、戦闘になれば、ハーヴェルに大きく(おく)れをとるだろう。


―剣はどうだ?

今度は、フライングバッド相手に、剣をふるう。が、コウモリを大きくしただけの敵、フライングバットに剣は当たらない。


どうしようもないな。俺はため息をつき、飛び蹴りを食らわせ、フライングバットを片付ける。


―たかが模擬線ごときで体術を披露するつもりはない。


「待てよ?」

俺はあることに気が付く。そもそも模擬戦でハーヴェルに勝つ必要がないのだ。

むしろ、適当に模擬戦をこなし、さっさとハーヴェルに勝ちを譲る。婚約者であるアイリスの俺への評価はますます下がるだろうが、元から嫌われているのだ。

何も問題はなかった。


だが、そうすれば、家での俺の評価も下がるだろう。


「家督へ執着するのもよくないということか。」

要するに、この身ひとつで生きていけるようにすればよい。

少しずつ力をつけ、たとえ一人でも稼ぐことができるようにすればよい。


―冒険者でもしてみるか?


とはいえ、ハーヴェルとの模擬戦のために修行をしておくということは、その結果如何にかかわらず、とてもよいことだと思う。人間、目標があると、努力が(はかど)る。


詠唱省略は、魔法の才能を持ったものが魔法を研鑚することによって習得できる以外に、もう一つ、習得の仕方がある。


単純に魔物を、魔法を使って倒しまくるということである。

―これができるのはハーヴェルという天才に限られる可能性もあるが。


幸い、家にはいくらかマナポーションがある。それらを持ってきてこの辺りで魔法の練習をすることが重要だろう。


また、雷魔法の使用を続けることで、雷属性そのものを鍛えることも可能である。そうすることで、お目当ての魔法、ライジングを習得することができる可能性はある。


現時点で、フライングバットのような速さのある相手に魔法を命中させることは難しい。

そのため、森で隠れ、ボアのような大きな的にサンダーボルトを放射し続けることが最も効果的だろうか。


そうして、俺はボアを相手にサンダーボルトの練習を続けることにした。



「ボアの肉どうっすかなー?」

それなりにボアを狩ったおかげで、ボアの肉が余っている。

剣で切り分けて燻製にするか。


そう決めると、俺は近くの川で血抜きをしてから、ボアの肉をサクサクと切り分けていく。

いっちょ上がり。

剣はサビそうだが、普段俺は剣を使用することがないので、まあ良しとしよう。


落ち葉をかき集め、そこに木と石を使用した原始的な方法で火をつける。その上に木で組んだ棒に肉を刺し、しばらくの間、煙で燻す。



ん~、いい匂いだ。

燻製にするには火の勢いが強すぎたようで、炙り肉になってしまった。

だが、これはこれで美味そうである。


そういえば、こんなワイルドな料理を食べるのも久しぶりだ。

正直、殺風景な部屋で無言の食事をするのは、きついところだった。

どうせ一人で飯を食うのであれば、こんな大自然で食うのが気分も晴れやかである。


そう思い、肉を食い、余った分は持ち帰るのだった。

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