エピローグ
「―お頭、どうっだったんです?」
ロンドがあの幽霊船での出来事について聞いてくる。
「分からん。だが、結局最後まで残っていたイシュバーンという没落貴族に聞いても、要領を得なかった。」
―イシュバーン
聞けば、エルドリアのヘイム侯爵家の元跡取りであり、廃嫡されたのだとか。ヘイム侯爵家は弟が現在は嫡男として扱われているらしい。
確かにあの男からはほとんど魔力らしい魔力は感じられなかった。凡庸な男であるというのが最初の印象だったのだが―。
「幽霊船ですかい・・・。俺も乗ってみたかったですねえ。」
「馬鹿を言うな。俺はあんなモノ、二度と御免だ。」
俺たちの他には誰もいないはずであるのに、あの船にいる間は常に誰かに見られているような気がしていた。
――あの船にはきっと俺たち以外にも誰かいたはずだ。しかしソレは尋常ならざるモノだっただろう
「でも残念ですねえ!せっかくロデリアの船に乗ることができたのに、中のお宝を収奪できなかったのは。」
「・・・確かに、内部を探せばまだ見ぬ宝があっただろうな。しかし、あの中に一度でも入ってみばお前も分かるさ。」
実際は探索中に何者かの転移魔法によって飛ばされただけでそれ以上のことはなかったが、きっとあの船の主からしてみれば、俺たちを始末することは簡単だっただろうと思っている。
「―それに収穫が全くなかったわけではない。」
そう言って俺はそいつを取り出す。
「・・・何ですかい、それは?」
ロンドが不思議そうな顔をして聞いてくる。
「虹竜の鱗さ。」
これはあの船を探索中にとある部屋の中で見つけたものだった。今ではほとんどその姿を見かけなくなっており、入手するのがほぼ不可能であるはずのまさに幻の一品。
「虹竜の鱗、ですかい?そんなものどうするんです?」
「ロデリアの王城はゼヘラによって焼き払われている。そのせいか、城や街並みについてはその焼け跡が残るばかりで、具体的に何がどこにあったかということは分かっていない。」
「―でも盗掘ぐらいはされているんじゃ?」
「通常ならばな。だが、旧ロデリア王城跡地は呪いで溢れている。」
「・・・何だか嫌な予感がしてきましたよ?お頭、あっしら、海賊ですよ?」
「何、ちょっと行って、お宝探しをするだけさ。」
「そんなちょっと遠足に行くみたいに言わないでくださいよ~!お頭だけで行けばいいじゃないですか!?」
「お宝が欲しくないのか?ロンド、確かに俺たちは海賊だが、トレジャーハント専門だ。お宝探しに海も陸も関係ないだろう?」
「・・・まあ、うちにはそれに特化したメンバーが揃っていることは否定しませんがね。ですが、商船を襲うのとは訳が違いますぜ?お頭は呪われた地を探索した経験が?」
「いや、ないな?」
正直、俺たちだけでそのような土地を相手にできるかと言えば、かなり難しいと言わざるを得ないだろう。
「ほらあ~。それに、呪いがあるなら、どうやって探索をするつもりですかい?・・・・・・まさか。」
「そう、そのまさか、さ。」
「そんな鱗一つでどうするっていうんです?」
「こいつに、とある野草と、聖なる祈りを掛け合わせると呪いに強い抵抗性を示す薬品ができるそうだ。」
「・・・野草と聖なる祈り?」
ロンドは何を言っているんだこいつはという顔をする。
「何、ちょっと素材の採取をして、ついでに聖女のところに行って有難いお祈りを頼み込むだけの話さ。都合の良いことにどうやら今、聖女がセルペタに滞在していると聞いている。通常我々が聖女に会う事は難しいが、この機会を活かすことができれば簡単だろう。上手くいけば一度に必要なものが全て揃うぞ?——まさに渡りに船というやつだな。」
「そんなホイホイと頼まれてくれますかね?」
「―ロンド、聖女の仕事は何か知っているか?」
「何って・・・。お祈りとか、病気の治療とか、群衆に手を振ることとか・・・。」
「もっと重要なことがあるだろう?」
「——神々の痕跡を探すことですかい? ですがね、あっしは嫌ですよ?ロデリアの民の血で呪われた土地を探索するなんてことは。」
「つべこべ言わず、皆を呼べ。それに、だ。かの地が呪われる原因になったのは、ロデリアではなく、むしろゼヘラの連中が流した大量の血が原因だと言われている。・・・何があったのか、知りたくないか?」
嫌がるロンドにそう言いつけた後、俺は船の会議室に向かうことにした。
迅雷のイシュバーン、第4部 たゆたう波音 編 完結です!
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