19話
「―—ああ。知っている。かつてロデリアにいた姫の名だ。」
ラズリーはどこまでラスティアのことをどこまで知っているのだろうか?ラスティアの話によれば、ラスティアはラズリーの生まれ変わりということである。
だが、ラズリーからしてみれば、自分がラスティアの生まれ変わりと言われたところで、信じがたいということもあるだろう。そのため、俺はラスティアの言ったことはラズリーには伏せておくことにする。
「・・・何かね、夢を見ていた気がするの。」
そう言ってラズリーはぽふっとベッドに座る。
「・・・」
「夢の中でね、私はその姫なの。とても弟思いの優しいお姉さん。」
「・・・」
手にしたお茶を一口飲む。
「それでね、ある日、私がいないときにお母様もお父様もお兄様もお城さえも燃やされちゃって。でも必ず反撃の芽はあるって、皆で再起をかけて。」
「・・・」
「それで、一旦叔母様の嫁ぎ先のエルドリアに退避しようって話になったので。それであの船に乗ったんだけど。」
「・・・」
手にしたお茶を再度一口飲む。
「―ううん、これはきっと夢。ここからがとても変だもの。だってありえない。」
「・・・ラズリー、それは夢だ。あんな船の中にいたんだ。きっと悪夢を見ることもあるだろう。」
「―私、悪夢だなんて一言も言ってないよ?」
俺は少しラズリーから目を逸らす。
「その夢の中でね、私とっっっっても強かったんだけど!それこそ神様と契約できるぐらい!」
「ああ・・・。」
「―やられちゃうのね。でもね?」
そこまで言うと、ラズリーは俺の顔をじっと見つめる。
「やめやめ!!だって・・・、だってありえない!!」
そこまで言うと、ラズリーはコップの中のお茶をぐいっと飲み干す。
「―私、部屋に戻るね?」
「・・・・・・。」
俺はラズリーと目を合わせることができないでいた。
そして、扉を開けて、
「——イシュバーン、ラスティアが貴方に、ありがとうって。」
そうして、ラズリーは自らの唇を少し押さえてこちらをじっと見つめると、そのまま扉を閉めて自分の部屋に戻って行った。
「・・・ああ。」
俺はしんと静まった部屋の中、ラズリーが出て行った扉をしばらくの間見つめていた。




