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迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
4部 たゆたう波音 12章 Snow Labyrinth

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17話

「「イシュバーン!!」」

周囲を見ると、レティやハーヴェル、そしてガーランドを含め、あの船の探索を行った面々が揃って甲板に集まっていた。どうやら先ほどまで俺たちがいた幽霊船の様子を見守っていたようだった。


「・・・ここは―。ああ、戻って来たのか。」

手元のラズリーを見ると、気を失ったままだった。



「何があった?」

ハーヴェルが俺に問う。


「何?いや・・・。お前たちこそ、どうやってこっちに戻って来ていたんだ?」


あの場所での出来事は、実際に体験した俺ですらそれを把握しているとは言い難いのである。


「俺たちは皆どうやら転移魔法か何かでこちらの船に送り返されていたようだ。」


「・・・それであれば、俺とラズリーも同じだろう。」

最後にラスティアが使用した魔法は間違いなく転移魔法である。


「・・・でも、転移魔法ってダンジョン以外では使うことができないんだって聞いているよ?」

レティが困ったような顔をする。


確かに、そう言った話は聞いたことがある。しかし、実際にはラスティアが使うより前に、おそらくはゼヘラの一員であるだろうあの女が使用しているのを見ている。


「ああ、俺もそのように考えていたが―。」




―なんだ?

何か視線を感じた。


ふと気になって上を見上げると、そこには巨大な目があった。


「!??」


おそらくは、俺の戦慄した表情を見たのだろう、皆上を見上げる。


「―何かあるのか?」

ガーランドがそんなことを言った。


「―お前たちには、アレが見えないのか!??」

明らかに空から見つめる巨大な目。


それがふっと空から姿を消したとき


――雲の合間を幾重もの(いかづち)が駆け抜ける。


少し遅れて豪と雷鳴音が響いた。


ほどなく、ザアッと大粒の雨がふってきた。


「わっ!!雨!」

レティが驚いた声を上げる。


そして再び雲の合間を雷が走る。



「こりゃ、大雨だな。急いで中に入ろう!」

ガーランドがそう言うが―


―嫌な予感がする

俺はその場から動くことができないでいた。


カッ!!!




「・・・イシュバーン?早く―」

船の中に入ろうとしたレティがこちらを振り返る。



一際(ひときわ)大きな閃光が走り、俺はソレを見た。



分厚い黒い雲の中から伸びる一本(いっぽん)の、腕



ぬっと雲の間から伸びてきたそれは、ラスティアの乗る船に向かって伸びていく。


――まさか


「―待て。やめろ。やめてくれ・・・。」


だが、伸びる腕はそのまま爪を立て、




ずぶりっ

それは無情にも船を貫く。




「―待て!!!ラスティア―」


船がバラバラに崩壊していく―


直後、凄まじい轟音が響き、四方八方へ爆散する——


「―ひゃあ!!!」

叫び声を聞く。



ガタガタガタガタガタガタガタガタッ

衝撃波によって俺たちの乗る船が大きく震えた。


―馬鹿な

ラズリーを守るように抱いてその場で立ち尽くす。



「何・・・。あれ・・・。」

振り返ると、レティが呆然としているのが見えた。


俺は、空に現れた目も、雲から伸びた腕も、船を貫いた爪にも心当たりがあった。




――イシュヴァル




「何故だ!!!何故殺した!!!!」

大雨の降りしきる中、叫び声を上げる。



―――ザアアアアアアアアアアアア

大粒の雨音だけが辺りに響く。



「・・・何故だ。」

ぽつりっと呟く。雨に濡れながらその場で立ち尽くすことしかできなかった。






「風邪、ひくといけないから、中に入ろ?」


いつまでそうやっていただろうか?

レティの声に我に返る。


腕の中のラズリーもぐっしょりと雨に濡れているのに気が付く。





「ああ・・・。そうだな・・・。」


俺はもう一度、どんよりと分厚く暗い雲に覆われた空を見上げるのだった。

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