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迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
4部 たゆたう波音 12章 Snow Labyrinth

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16話

そよそよと優しい風が吹く。はて・・・?


「・・・む?」

——眩しい。朝日が目に染みる。いつのまにか眠りこけていたらしい。


ふと頭の後ろに柔らかな感覚を感じる。


目を開けると、こちらを覗き込む大きな瞳が見えた。


「・・・おはよう。」


「・・・うん。おはよう。」


―夢か?

あれを現実と考えるのは無理がある気がするが―


「あー・・・。」

柔らかな太ももの感触がとても心地よい。


「―どうしたの?」


「・・・起きるのがとても面倒だと思ってな・・・。」

もう少しこの柔らかな感触を味わっていたかった。


「ふふ。もう少しこのままでもいいわよ?」

彼女は柔らかに微笑む。


「——ああ。」


―おどろおどろしかった幽霊船も、日が明けてしまえば、何てことはないただの箱舟にすぎないな

穏やかな時間が流れる。



「―ねえ。」


「・・・ん?」


「——いい朝、ね。」

見上げれば、彼女は少し眩しそうに地平線を見つめていた。


「どうして?」


—どうして???

俺が不思議に思っていると、


「・・・どうして助けてくれたの?」


―助けた?

彼女の表現に俺は少し違和感を抱いた。仮に、夢での出来事が実際の出来事だと仮定しても不思議に思う。


「・・・どういう意味だ?」


「・・・前にも言ったけれど、私は、ラズリー。ラズリーは、私。」


―???

つまり、何故ラズリーを助けたのかと、ラスティアが疑問に思っていると?


―いや、違うな。これは、この質問はそういうことではない

このような質問には論理的に答えてはいけないということを、俺は前世の記憶でかろうじて知っていた。


「——君を助けるのに理由が必要か?」

おそらく長い間使い古されてきた言葉であるが、この言葉は今この瞬間に使うものである気がした。


「―まあ。」

そう言って彼女は柔らかく微笑む。



—だが、訂正するべきところは訂正するべきであるだろう


「ラスティア。俺は・・・。俺は、君のことを助けることはできなかった。」


すると、ふるふると首を横に振って、そのまま俺に軽く口づけをする。


「・・・えへへ。」

そして彼女は口を押えて続ける。


「それは、いいの。だって、こうやってまた出会えたもの。一目ぼれ、だったわ。私にとっては生まれて初めての・・・。」

そう言って少し頬を赤く染める。


「・・・ああ。」

揺らぐ彼女の瞳に吸い込まれそうになる。


「だが、俺たちは—」

ラグがあるが、自分の記憶が正しければ俺たちはついさっきまで—。


「——本当、不思議ね。私も分かんない。」

彼女は強く風になびく自身の髪を手で少し押さえた。




「それに、私、諦めてないもの。」

ふいに、そんなことを言った。


「・・・ん?」


「うん・・・。私、ね? あんなになっちゃったけどね?きっと元に戻る方法があると思うの。」


「ラズリーが魂の転生体ではないのか?」

少し気になったことを聞く。


「・・・うん。そうなんだけどね、そうじゃないっていうか・・・。」

そこまで言って彼女は口ごもる。


何となく彼女の言いたいことは分かる気がする。俺自身もこの世界の別の誰かどころか、別の世界の別の誰かであるし。


「・・・まあ、分からないこともないな。」


「ほんと?えへへ・・・。」

彼女は嬉しそうに微笑み、自身の髪の毛をいじいじする。


「―そしたら、お得感、でちゃうね?」


「お得感???」

どういうことだ?


「―この子に、私。きっと二人して貴方を離さないわよ?」


「お、おう・・・。そいつは非常に喜ばしい・・・か?」

やはり彼女の瞳に狂気じみたものを感じてしまうが、きっと俺の気のせいだろう!


「―あ!二股はいけないんだ!」


「おい、君が言い出したんだろう!?」


お互い微笑み合う。

そうして穏やかな時間がすぎていく―――はずだった。








―ふん、魔力の痕跡を辿ってみれば。こんなところにいるとは



——何だ?この声は?フリージア・・・?



―あのような臆病者と同じにされては困るな



「——いけない!!!今すぐここを離れて!!!」

すると、はっとしたような顔をして、ラズリーからラスティアの影が分離する!


「お、おい・・・。急にどうしたっていうんだ!?」

気を失い、俺の方に倒れ掛かって来たラズリーを慌てて抱く。


「いいの!!!私を、よろしくね?」

涙を拭う様子を見せて、



―“揺蕩(たゆた)う者”を見つけることができた。本来ならば、我の魔力を勝手に盗りおったことは万死に値するが―まあよい



「ゲート!!!!」

「お、おい!!!ラスティア!!??」




眩い光に包まれて——





———あ???




俺はいつの間にか、ラズリーを両手に抱えて、元々いた船に転移していたのだった。

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