11話
夢を見ていた。
阿鼻叫喚
怒号が飛び交う中、次々と騎士がなすすべもなくどす黒い深淵に引きずり込まれていく。もちろん騎士は抵抗するが、彼らの剣は文字通りただ闇雲に向かって振るうのみ。そうこうしているうちに、一人、また一人と闇に呑まれていく。その中には、先ほど知り合ったばかりの気さくな騎士の姿もあった。
——そして、誰もいなくなった
ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィイイイイィイイイイィイイイイ
酷く嫌な音を立てて、ぐらり、と大きく傾く。
―何だ!?
突然の大きな揺れに俺は飛び起きた!
ジリリリリリリリリリリリッ!!
するとけたたましく船内の警報音が鳴り響く。
「・・・いつつっ」
揺れで頭を壁に少しぶつけてしまった。周囲の様子を見ると、さっきまでいた見張りの騎士の姿が見えない。
―どうする?
この船に何か問題があったことは間違いない。
窓から差し込む暖かな日は陰りを見せ、いつのまにか夕闇が迫ろうとしていた。
『様子を見に来ますか?』
・はい
・いいえ
頭の中でそんな選択肢が浮かんできた。もちろん答えは―
——鉄格子が邪魔だな
手に魔力を込め、一閃。
スパンッとそれを切り、外に出る。
外に出ると、冷やりとした空気を感じる。これは俺の緊張感から来るものではないだろう。
―場所はどこだ?
階段を上ってみたが、人の気配はなく、軋む船音が不気味に響くのみ。
「このフロアには誰もいないようだが・・・。」
―もう少し上に登ってみよう
さらに上のフロアに登ると、もはや見慣れた黒い泥のようなものが広がっていた。しかし、これまで見たものとは異なり、尋常ではない量である。
―まさか
嫌な予感がする。
「・・・だが、これをどうする?」
足元に広がる黒い泥。これに触れるわけにはいかないだろう。
―考えろ
この量だ。フライでもない限り、飛び越えていくのはほぼ不可能だ。
―何か良い方法がないか?
「確か、これも魔法の一種ではあるんだよな?」
どういう原理で、どういった属性で構築されたものであるか、詳細はさっぱり分からないが、魔力を元に構築されたものであることは確かだ。
「であれば、こちらから魔力を流してやれば、相殺できるか・・・?」
ぶっつけ本番だが、やってみる価値はあるだろう。
すう~~~~
大きく息を吸いこむ。
そして、右手に魔力を集中させる。
キィィィィィィィ
拳に魔力が纏わりつき、それが鋭く音を立てる!
「はあああ!」
そして、充分に魔力を纏った右拳を思いっきり床に打ち付け、一気に雷撃に変換する!!
ガッガガガガッガッガッガガガッ!
船の床を雷撃が鈍い音を響かせながら伝わっていき、黒い泥を晴らす。
―よし
ぶっつけ本番ではあったが、上手くいった。
——急ごう
床を跳ねるように進み、
扉を開け、甲板に出たところで。
「―光よ!!」
―やべえ!!
俺は思わずその場に伏せる!
だが、膨大な熱は俺の方ではなく、俺のいる方向とはちょうど逆側に放出される!
フィイイイイイイイン
―あれは、聖剣と・・・。勇者か?
いつか俺が見た聖剣を持つ男が、ちょうどラスティアを庇うようにして立っていた。
「小賢しい!」
女の声が聞こえてきた。
見ると、船の上空に、一人の少女が浮かんでいる。そして、俺たちの少し先の、船の先端部分にいるのは―
「・・・サフィラか?」
何であんなところに??
「ヴェリス。聖剣が邪魔。あの女を捕縛するには、あの聖剣が邪魔。まだなの?」
「ベルフィラはせっかちだなあ。」
そう言いながら、魔力を練り込んでいく、ヴェリスと呼ばれた、サフィラの姿をした「何か」。
―どういうことだ?
「―サフィラを返して!!!」
ラスティアが叫ぶ!
「―あはは!気が付くのが遅かったね!」
ヴェリスと呼ばれたサフィラが笑う。
「姫様。もはやこのままではジリ貧です。ご決断を。」
勇者が聖剣を構え、後ろのサフィラに声をかける。
「でも・・・。でも・・・!!!!」
「―光よ!!」
勇者が聖剣を横なぎにして、空に浮かぶ女に魔法を放つ!!
「壁よ。」
すると、同じような光の壁が女の前に出現し、それを阻む。
「―悪いけど、あなたへの対策は完璧なの。」
にっこりと微笑む、ベルフィラと呼ばれた少女。
―同じ属性の魔法に対しては効果が薄いのか!?
「―アイスダンス」
ラスティアが瞬時に魔法を唱え、幾重の氷の槍を少女に向かって射出する!
が、少女はすいすいっと何でもないというように氷の槍を回避する。
「・・・本気?稀代の魔法使いが聞いて呆れる。」
少女はため息をつく。
「あっはっは!ベルフィラ、本気を出せない子にそれは可哀そうだよ!」
「―うるさい。さっさと魔法を完成させなさい!」
「もうできたよ。―アンチセイクリッド。」
サフィラがそれだけ言うと、黒いモヤが聖剣を包み、パキンという音を響かせた。




