6話
水分は補給したし、どうしようか?
状況から俺が今いる時間は、おそらくは過去の時間だろう。
「・・・何か、今の俺にできることは?」
だが、何かの事件が起きるとして、それがいつであるのか見当もつかないことだ。
「とりあえず、ラスティアがいたあの部屋に行ってみるか。」
確か、あの部屋は階段を下って行った先にあったはず。初めの方の探索では見つからなかった場所であるが、迷いそうな場所でもない。あの船はダンジョンと化していたので、元々の構造を変えていたのだろう—
そう思い、階段を下り、覚えている道を辿っていくと、その先に続く部屋はなかった。
―おかしい。道を間違えたか?
だが、ここまで来るのに辿った道に間違いはないはずだ。
「・・・ここは別の船か?」
俺は腕組をしながら独り言を言う。
確かにその可能性もある。同じタイプの船が量産されていてもおかしくはないだろう。
―何か目印になるものは・・・
「そういえば、サフィラとラスティアの秘密基地なんて部屋があの船にはあったな?」
―行ってみるか
あの部屋は確か、船の外縁部にあったはず。
一度廊下から外に出て、少し船の後ろの方へ移動し、下を見ると、同じ場所に部屋の扉があるのを見つけた。
廊下をわざわざ降りるのも面倒だな?
「よっと。」
俺はその場から下の階へするっとジャンプする。
―ここに間違いないな?
扉を開けてみようとするが、どうやら鍵がかかっているようだった。
「こんなときは―。」
俺は魔眼を使用することにする。
すると、部屋の内部の様子が分かる。その部屋は、俺の記憶にあるあの部屋とほとんど同じものが置かれているようだった。
―ということは
「やはり、この船はあの船と同じと考えてよさそうだが。」
しかし、それが分かったところでどうする?
一応、食料も水もあるので、しばらくこの船の上でいることもできるが、せめてどこかの陸に上陸しないことには話にならないぞ?
一旦食堂に戻るか。
食堂に戻り、どうしたものかと考えることにする。
これまでにも似たようなことは何度かあった。
きっかけは分からないが、いつも突然妙な場所へ飛ばされ、そして気が付いたときには元の場所に戻っているのだ。
「ということは、今回もまた急に、元の場所に戻る可能性があるな。」
戻った先もきっと同じ船の上だが、あの船にはラスティアがいる。
「・・・勘弁してくれ。」
せっかく船に乗るのだから、今いる船のように、心穏やかな気持ちでゆっくりと船旅を楽しみたいものだ。
「今のうちに何か食料を補給しておくべきだろうな。」
正直、消耗が激しく、酷い空腹である。腹が減っては何とやらという。
幸い、奥の食糧庫には、保存食と思われるものがそれなりの量準備されているようだった。
俺の携行用の保存食はいつものズタ袋の中で、今この場にはない。
「さて、どれにするか・・・?」
海の上というだけあって、海魚の干物や、缶詰なんかが豊富に保存されているようだった。
「海魚か・・・。これにするか。」
干物の一つを拝借し、一口頬張る。
―うまい!
やはり、補給しておくべきときに補給するべきなのだ。
「そういえば、これだけ大きな船だ。探せば釣り竿の一つや二つ、見つかるんじゃあないか?」
であれば、魚の一匹や二匹、釣ってみるのはどうだろう?
そうして自分の釣ったやつを同じように干しておくと、完全に同じものというわけにはいかないが、数的には同じか、それ以上にはなる。
干物を齧りながら、食糧庫の奥を見ると、何やら可愛らしいバッグがそこにあった。
「何だ、ありゃ?」
何故だか俺はその中身が気になった。
中身を調べてみると、そのバッグの中はたくさんのお菓子だった。
魔法王国エルドリアでも菓子は販売されているが、そのどれもがエルドリアでは見たこともないものである。
―甘いものが多そうだな?
クッキーの形をしていたり、他には飴などもあり、どんな味をしているのか予想することは容易い。
がさごそとそれらを取り出そうとしていると、
「・・・何、してるの?」
後ろからそんな声が聞こえてきた。




