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1話

「イシュバーン、大丈夫だったか?」

クラスに戻って来るや否や、心配そうなルディ。


「ああ、ルディ。正直、ハーヴェルがあれほどの魔法を使うとは思わなかった。」

これは俺の素直な感想である。結界があったとはいえ、あんなものを直接くらえば、命がどうなるか分かったものではない。


「しかし、イシュバーン。お前、どうするんだ?ハーヴェルに負けちまった以上、婚約破棄と廃嫡は免れないんじゃないか?」


「それはしょうがないだろうな。人生山あり、谷ありだ。」


「イシュバーンってその辺り、本当にドライだよな。」


「気にしてどうする?」

そう言って俺はニヤリと笑った。



「いい気味ね、イシュバーン。」

声をかけてきたのはアイリスである。


「ああ、ハーヴェルは強かったぞ?」


「―あなた、悔しくないの?」


「今は俺の実力が足りぬだけだ。そのうちハーヴェルくらい簡単に追い越すことができるだろう。」


「呆れた。あなた、そうやって、いつも何もしようとしないじゃない。」

アイリスは少しイライラしているようだ。


「ふっ。今に見ているがよい。」


「イシュバーン、格好悪いよ。まだその態度、続けるつもり?」

今度はプリムか。こういったやり取りが続くのは予想していたが、実際かなり面倒くさい。


「俺は、俺の態度を崩すつもりはない。これが、俺の普通だ。ザ・日常だ。」


「また訳の分からないこと言って。そんなんだから、ルディくらいしか友達がいないんだよ?」


―イシュバーンの心は9999のダメージを受けた。

たまにこのプリムというやつは、無自覚に痛いところをついてくる。


「全く、プリムよ。お前はお前の心配をしてればよいではないか?」


「私も一応、おじ様からイシュバーンのことを頼まれているのよ。」


・・・まったく、親父め。余計なことを。


「まったく親父殿にも困ったものだな。」


「またそういうこと言う。」


ガラン、ガランとベルが鳴る。これは講義の10分前を知らせるベルだ。


「そろそろ時間だろう。講義に行ったほうがいいんじゃないか?」


「あ、そうね。急がないと。行こう、アイリス!」


「ええ、そうね、プリム。こんなやつに構っているほど暇じゃなかったわ。」


そう言ってアイリスとプリムは去っていった。



「次の講義、俺たちはどうするんだ?イシュバーン。」


「そうだな、たまには講義を受けてみるのも悪くはないな。」


「お前にしては珍しい。少しは心を入れ替えたのか?」

そういってニヤニヤしているルディ。


「ああ、そろそろ少しは単位を取らんといかんからな!進級することは非常に重要だ。」


「・・・はあ。まったく、おまえというやつは。」

そう言って大きくため息をつくルディ。


すまんな、ルディ。人間そんなに変わろうと思って変わるものでもない。



そして、俺たち2人は講義室に入る。


講義室に入るとき、少しばかり周囲がざわめくのが聞こえたが、すぐに講義が始まる。


今日の講義は、魔法陣について。

魔法には魔法陣を使用することで、規模の拡大や、特殊な効果をつけることができる、というものらしい。


いつだったかの魔法演習で、何か華やかな氷の魔法を披露していたのを思い出す。あのときラズリーは魔法陣を展開していたよな、と思った。


ちなみに、俺とルディは大体講義を取るのも同じだ。なぜならばそれは、互いに、単位の取得が楽なものを選択する、という確固たる信念があったからである。


とはいえ、どんなに楽な講義でも試験というやつがある。その試験には何としても合格する必要があるのだ。


試験の形式は筆記であったり、実技であったり、時にはその両方である。


俺とルディは、そんなに実技が得意なほうではない。普通の魔法については、俺はサンダーボルトしか使用できないし、ルディも俺よりは使える魔法が多いとはいえ、数個程度のものだろう。


要するに、進級するためには、筆記の学習を怠らないようにする必要があるのだ。


この世界で魔法というものはかなり体系立てられて成立している。


まず、詠唱。どんな魔法でも基本的には詠唱することが必要である。詠唱短縮という特殊な技能もあるが、それでも魔法名の詠唱は必要である。魔法の初歩の初歩である。


次に、属性。魔法というのは、各種属性がある。火、水、風、土のいわゆる四大属性の他に、特殊属性として、聖、光、雷、木、氷、金、暗、闇といった属性がある。


特殊属性の方が多いんじゃないかと思うかもしれないが、これは四大属性に比べて発現できる者が少ないからである。要するに、数の問題である。


時には、それ以外の属性を発現する者もいる。特にハーヴェルは、3属性以上を扱うことができ、それらを組み合わせることで、あの魔法剣のような、爆裂魔法という固有の属性を使用することができる。さすがは物語の主人公だな。


特殊属性はそれぞれ個性的だが、聖と光は、聖光属性といって一纏めにされることが多い。パフや回復に使用される聖属性、攻撃魔法に使用される光属性。あるいは暗と闇の属性も似たようなものだ。デパフに使用される暗属性、攻撃魔法に使用される闇属性。


他に、金属性だけは、いわゆる錬金術として、別枠として扱われることが多い。彼らは物品の鑑定ができる他、錬金術という特殊な魔法により、金属を武器にしたり、時には土くれから金属の武器に変形させたりすることができるらしい。


以上が、魔法に関する基本的な理解である。


だいたい、これまでの復習をさらっと概説し、魔法陣の講義は進んでいくのだった。

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