8話
「――どうする?」
ハーヴェルが皆を見る。
魔法剣を連発しないあたり、ハーヴェルといえども、やはり魔力消費は気になるのだろう。
「魔法も通じない、剣も効かないのでは・・・。」
先ほどからガーランドは意気消沈といった感じである。
「でも、このまま閉じ込められるのが一番ダメだと思う。」
レティが言う。
「イシュバーン。お前はどう思っているんだ?」
正直、俺も特に解決法を持っているわけではない。しかし、気になることもあった。
「ハーヴェル。敵の正体が何かは分からないが、もし俺たちをここに閉じ込めることが目的であれば、既にそれは達成されていることになる。レティの言う通り、このまま何もしないでいてはジリ貧だ。せめてその目的くらいは明らかにする必要があると思うが。」
「だが、それぞれが別の部屋に閉じ込められたら・・・。」
「皆ができるだけ同じタイミングで扉をくぐればいいんだよ。」
努めて明るく言うレティ。このような時にこのように振舞ってくれるのは心強い。
しかし、ふとラズリーの方を見ると、ぼぅっとしているようだ。
「ラズリー?どうした??」
「・・・え?」
すると、こちらを見るラズリー。だが、目の焦点がどことなく合っていない。
「気分が悪いのか?」
先ほど幻聴が聞こえてきたと言っていたことが気になった。
「え、ええ。大丈夫・・・。」
特に立ち眩みがしている様子ではない。しかし、状況が状況だけに、何か精神的な影響があるのかもしれない。
「少し休んでいくか?」
「―ううん、大丈夫・・・。心配かけてゴメンね?」
そう言ってこちらを見るラズリー。今はしっかりとこちらを見ている。
―問題ないか?
しかし休憩するにしても、こんな狭い所で休憩するのは酷ではないか?
「休憩をとるか?」
俺はラズリーに確認する。
「ううん、大丈夫。」
そう言うと、わずかに笑うラズリー。
―?
彼女のその様子に少し違和感を覚えた。やせ我慢というわけではないようだが―
だが、休憩するにせよ、しないにせよ、ここで留まっていてもどうにもならないだろう。
「ガーランド、次に探索するべき場所はどこだ?」
俺はガーランドに次に探索するべき場所を確認することにする。
「・・・機関室だ。この船がどのように動いているのか確認するべきだと思っている。」
「じゃあ、できるだけ皆一緒に外に出よ?せーの!」
レティの掛け声とともに、俺たちはできるだけまとまって扉をくぐる!
だが、扉が急に閉まったりすることはなく、懸念していたような事態は起きなかった。
「―特に問題なかったな。ガーランド。機関室はどっちだ?」
俺は先に進みながら、ガーランドに確認する。
・・・
しかし、返事はない。
「―ガーランド?」
振り返って確認すると、ガーランドだけが見当たらない。
―なに?
咄嗟に魔眼を使用して、周囲の様子を確認するが、ガーランドはどこにも見当たらない。
「ガーランド!どこだ!?」
すると、皆一斉に周りを見るが、
「―いなくなってる・・・!」
レティが口を押える!
「そんなはずはない!先ほどまでいたはずだ!!おい!!!ガーランド!!!」
ハーヴェルが大きな声でガーランドを呼ぶが、やはり返事はない。
―どういうことだ?何者かに攻撃されているのか?
だが、俺たちが攻撃を受けた形跡はない。ガーランドが忽然と姿を消した以外は。
「ねえ、ガーランド・・・?」
レティがおそるおそる、といった様子で操舵室に戻ろうとするが、
「レティ!だめだ!」
俺はそれを止める!
すると、レティはビクッとして立ち止まった。
「・・・何者かから攻撃を受けているかもしれない。」
昔、見えない何かが船の中で一人ずつ襲撃して消し去っていくホラー映画か何かを見たことがある気がした。考えたくはないが、それと同じような存在が、今、ここにいるのかもしれない。




