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迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
4部 たゆたう波音 11章 幽霊船

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5話

ドアを大きく開けると、そこはやはり食堂である。長い机と丸椅子がいくつかあり、机の上には何も置かれてはいない。床を見ると、一枚(いちまい)の割れた皿が転がっていた。


そして、その正面には――


「これは・・・。」

あの聖杯と蛇の紋様の書かれた旗である。古くなっているが、絵柄がはっきりと見え、朱色の背景に金色の詩集によって精巧に作られていることが分かる。


「・・・ロデリア聖王国。」

ガーランドが呟く。


「ロデリア聖王国?」

ハーヴェルが怪訝な顔をする。


―聞いたことがない国だ

というか、最近原作で知らないことだらけで、俺の知っているゲームの世界とこの世界がそもそも同一の存在のものかかなり怪しく思えてきている。


「・・・ああ。百年も以上も前に滅び去った国だ。」


百年以上も前!?


「―そんな国があったとは知らなかった。だが、百年も経てば、いくら頑丈な船であれ、海の上で彷徨うのはおかしな話だ。何かの間違いではないのか?」

いくら金属製の船だとしても、百年以上も海を漂っているとはとても信じられない。


「・・・そうだ。だから、それを調べに来た。今まで君たちに言わなかったのは、俺も確信が持てなかったからだ。」


―そういうことか

確かに、そんな国の船であれば、財宝が積まれている可能性もあるし、海賊としては追跡しない理由がない。どうやら俺たちの船に遭遇したのは、その途中でのことだったらしい。


―しかし、気になることがあるな?


「・・・この船、救難信号を発していたって聞いたよ?」

レティが怪訝な顔をする。


そう。この船が本当にロデリア聖王国の船だったとしよう。しかし、百年以上も前のそんな船に、誰かが乗り込んでいて、そいつが救難信号を発するというのは、一体(いったい)、どういう状況だろうか?


「ガーランド。海賊船から救難信号が発せられたのはいつだ?追跡する前から出されていたのか?」

俺はガーランドに確認する。


「――いいや。俺たちが追跡した後のことだ。」


「・・・つまり。」

ハーヴェルが顔をしかめる。


「そうだ。少なくとも一人(ひとり)は、俺たち以外の誰かがこの船にはいるはずだ。」


「・・・だから、戦力が欲しかったのね。」

ラズリーがぽつりと言った。


「・・・申し訳ないとは思っている。しかし―」


ガーランドとしては、調査の名目で俺たちを連れ出し、そこで内部を確認し、誰かが乗っていたのならば、それを俺たちに保護させる。そして、俺たちがこの船から去った後にゆっくり時間をかけて海賊団で探索し、財宝の類を自分たちの船に積み込む予定だったのかもしれない。


仮に、その誰かが他の海賊のような相手だったとしても、こちらは皆、魔法使いだ。きっとガーランドは、ラズリーやソフィアと同じように相手の魔力を推測することができるのだ。そして、ガーランドの見立てでは、この船に乗る者は魔力の無い者。その計算では十分すぎる戦力を用意したつもりだったのだろう。


「誰かがこの船にいる様子はない・・・。」

レティが青ざめた顔で言う。


「その通りだよ、レティ。これじゃまるで、御伽噺の幽霊船のようだ・・・。」

ガーランドは顔を曇らせた。


「―ど、どこかに隠れている可能性は?」

ラズリーが少し声を震わせながら言う。


「・・・もちろん、その可能性も否定できない。だが、さっきからいくらトレースしても、足跡一つないんだ。」

先ほどから何やらぶつぶつと呟いていたのは魔法を使用していたということらしい。


「・・・トレース?」

聞き慣れない言葉だ。何だろうか?


「・・・特殊な風の魔法だ。特定の足跡などを追跡することができるんだ。」

風属性の魔法は、その効果は多岐に渡り、攻撃魔法以外にも様々な効果を持つ魔法を含む。


「・・・そんなこと私たちに教えて良かったの?」

ラズリーがガーランドに訊ねる。船の軋む音に紛れるように小声で呟いていたのは、あえてその詠唱を分かりにくくさせるためだろう。


「状況が状況だからね。それに俺の使える魔法の全てを話したわけじゃないさ。」

ガーランドは努めて明るく言うが、やはりその顔は冴えないものだった。

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