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迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
4部 たゆたう波音 11章 幽霊船

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4話

しかし、イシュヴァルが存在した、あるいは存在したとされる時代の本が実際に残っているわけではないだろう。この本は、おそらくはイシュヴァルについての神話ないし伝説が描かれた本と考えるのが妥当である。


「ラズリー、この本の文字が読めるか?」

ラズリーに聞くと、彼女は小さく首を横に振る。


「この本の文字を読める者はいないか?」

ガーランドとハーヴェルにも聞くが、二人ともこの本に書かれている文字は分からないようだった。


―持って帰るか?

だが、先ほどガーランドの言ったことが引っかかる。


念のため、その本に魔眼を使用してみると、何やら怪しく輝くモノが本の間に挟まっているのが見えた。


―なるほど、きっと良からぬモノに違いない

本には触れずに正解だったかもしれない。




それから少し先に進み、俺たちは別の船室の中に入ることにする。


ガタンッ


「―扉はこれで大丈夫。」

レティがこちらに振り返って言った。


部屋の中は先ほどの部屋と同じような作りで、簡単なベッドに簡単な机があるプライベートの空間である。揺れても動かないように椅子と机は固定されているようだ。


そして、椅子の上には、ボロボロの上着が無造作にかけられていた。

この部屋も先ほどの部屋と同じく、かなり長時間の間使用されてはいないようだ。


しかし―


「―妙に生活感があるな?」

どうにもこの船は、使用されなくなった後にうち捨てられたものではない気がする。


「ボクも同じことを思っていたよ。まるで―」


「ある日突然、人がみんな船から消えたような・・・。」

ラズリーが少し声を震わせながら言った。


「怖いことを言うなよ・・・。」

ハーヴェルがそんなことを言う。奴がそんなことを言うのはかなり珍しいことだ。


「―先に進もう。」

ガーランドが短く言い、部屋から出る。その表情は険しい。



ギィィィイ

相変わらず船の軋む音が周囲に響く。ガーランドは先ほどから俺たちに聞こえるか聞こえないかの声で、ブツブツと何事かを呟いているが、船の音に搔き消されはっきりとは分からない。


その部屋から出て、少し廊下を進むと、


パリン!

何か食器のようなものが割れるような音がした。


「ひゃっ!」

レティが小さな悲鳴を上げた!


―何かいるのか!?

俺は咄嗟に魔眼を使うが、しかし、見えるものは無機質な船内の様子だけだ。


皆固まって周囲を見渡すが、特に先ほどと変わった様子はない。薄暗い船内には丸い窓から差し込む光が見えるだけである。


「どこからだ・・・?」

ハーヴェルが剣に手をかけて周囲を警戒しながら言う。


「もう少し先の方だと思う・・・。」

レティが怯えた声で、廊下の先を見ながら言う。


ラズリーの方を見ると、小刻みに震える手で、何もいない廊下に向けてスティックを構えている。


「・・・」

ガーランドは相変わらず黙っていて、その表情はこちらからでは明らかではない。


ギィィィィィィィィイイイ


―まずいな

皆、この船の雰囲気に呑まれ始めている。


「ガーランド、どうするんだ?」


「・・・」

返事はない。


「おい!ガーランド!?」


「・・・先に進もう・・・。」

ぽつりと呟く。この船に乗り込む際に見せた威勢の良さは感じられないものだった。


もう一度魔眼を使用するが、敵影はどこにもない。


「―俺が先頭に立つ。」

本当は今すぐにでも引き返したかったが、外に続く扉が謎の力によって塞がれているので、他の出口が見つかるまでは一旦(いったん)は先に進むしかないだろう。


俺は俯くガーランドに代わって先頭に立って先に進むことにした。



そうしてしばらく進むと、突き当りを曲がった所に、これまでのものに比べて少し大きめの扉が見えた。この先から何かが割れるような音が聞こえてきたようだ。


―何がある?

魔眼を使用するが、やはり人の気配は存在しない。見えたのは、大きめの長机と、十個以上はある丸椅子である。


―食堂か

先ほど割れた物は食器か何かだろう。


俺は少し扉を開け実際に中を確認するが、思った通り食堂のようだ。


「――この先はどうやら食堂のようだ。」

俺は振り返って皆に声をかけた。

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