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迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
4部 たゆたう波音 11章 幽霊船

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3話

―――ギィィィ

軋む音が船内に響く。


「やっぱり人の気配はしないね?」

レティが呟く。


「ガーランド。調査といったが、どういったことを調べるつもりだ?」

ガーランドは調査というが、さすがに漠然(ばくぜん)としすぎている。


「―分かること全てだ。俺たちの船が動かない原因は間違いなくこの船にあると思うが、それが何なのかは俺にも分からないさ。」


船内は見かけによらず広い。

とりあえず、俺は通路に面した扉の一つを開けてみることにする。


―キィ

扉は特に問題なく開いた。が、中に入るのは躊躇われる。ハーヴェルの魔法剣が通用しないとなれば、俺の迅雷でも微妙だ。


「・・・扉は普通に開くようだが、中に入るのは躊躇われるな。」


「だが、イシュバーン。そんな弱気では調査などできないぞ。」

ハーヴェルが言う。こういうときにあえて強気に出るのは、さすがは物語の主人公だが・・・。


しかし、そんなハーヴェルをラズリーが注意する。


「イシュバーンの言う通りよ。何があるか分からないわよ?」



「・・・扉、とっちゃえばいいんじゃないかな?」

レティは扉を見ながらそんなことを言った。


―なるほどな?

内部の扉は木でできているようだ。レティであれば、問題なく扉を取り外すことができるだろう。


「レティ、頼めるか?」


レティは任せて、と言い、そっと扉に触れると、扉がガタンと音を立てて外れた。よく見れば、金具の接触部分が崩れている。すると、次第に扉は朽ち果てて言った。


「無詠唱か。」

ハーヴェルが少し目を見開く。


「—これくらいならね?」


ウィンクをしてレティはそう言うが、無詠唱は一般的に高度な技量を必要とする。実際のところ、魔法学院の中で最高峰とされる魔法学院アルトリウスですら、無詠唱を使用できる者は極めて稀であった。


「――腕を上げたね、レティ。」

ガーランドが目を細める。


「驚いたわ、レティ。貴女、無詠唱が使えたのね?」

同じクラスのラズリーでさえ、知らなかったようだ。


レティの属性は木。そして、無詠唱魔法の使い手である。敵として出てきたときには、ハーヴェルが苦戦させられていたのを思い出す。


「・・・キミは驚かないんだね?」

こちらを静かに見据えるレティ。


「もちろん驚いているさ。」

俺は少しおどけたような仕草をする。


「――ま、いいや。さ、中を調べよう?」

すると、レティが先頭に立って部屋の中に入った。


部屋の中は窓はないが、船室のようである。ベッドの上には古びた本があった。


ハーヴェルが何気なくそれを手に取ろうとするが――




「直接触れるな!」

ガーランドから鋭い声が聞こえてきた。


ピクッとハーヴェルの動きが止まる。


「―どういうことだ?」

ハーヴェルがガーランドに向かって怪訝な表情をする。


今は部屋に閉じ込められる心配はないのだから、本に触れるくらいは問題ないのではないか?


「・・・いや、どんな魔法がかけられているのか分からないからな。」


確かに一理(いちり)あるが、さすがに警戒のしすぎではないだろうか?


「ガーランド、そこまで警戒する必要があるのか?こんな本でも何か手がかりになるかもしれないではないか。」


「「「・・・・・・・」」」


しかし、皆その本に近づこうとはしない。開いているページを見る限り、何かの小説だと思われるが。



ふうっと小さくため息をつき、俺は朽ち果てたベッドに近づき、上から本を眺める。


「―知らない文字だな?」

少なくともエルドリアで使われている言葉ではない。


「見せて?」

レティが本を覗き込むが、


「うーん、ボクもこんな文字は始めて見たよ。」


俺はちょうど開いてある部分に描かれている挿絵が気になった。そこには、城壁に囲まれたどこかの都市と、その数倍はあろうかというほどの竜である。


それを見つめていると、


「これは・・・。竜・・・?」


「ああ、そのようだ。」

そして、俺はその竜が何であるかを知っていた。


「これはどういう場面なのかしら・・・?」

ラズリーが本を覗き込んで不思議そうな顔をする。


しかし、俺にとってこの竜はある程度は馴染みのある存在である。



――イシュヴァル

かつて、天上に住まい、その咢でもって地を食らったという。古代の人々にとって、それは畏れの象徴たる存在であった。

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