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迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
4部 たゆたう波音 10章 波間にたゆとうもの

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17話

そうして、いよいよ海賊船と思われる船と、問題の救難信号を発し続けている船が、俺たちの乗る船の航路の先までやってきた。


俺たちの船は、それらの船の航路と重ならないように、あえてそのスピードを下げていたようだ。問題の船は俺たちの船の航路の先に当たった時点で、停泊し、海賊船と思われる船もそれに続いて同様に停泊した。


そのため、俺たちの船の目の前に、問題の船、その後ろに海賊船というように並び、いずれも大海原の真ん中で停泊し、ただ波に揺られているという奇妙な状態にある。




「―やっぱり変だね。」

レティがその様子を見て、声をだす。この三隻が止まって少し経つが、俺たちは皆、いや、この船の乗客は皆このような状況に困惑しているようだ。


問題の船はともかくとして、海賊船まで動こうとしないのはどういうことだろうか?


「ああ。海賊船であれば何か動きがあってもおかしくないはずだが。」


「―ううん、イシュバーン、違う。確かにそれもあるけど・・・。」


「レティ、どう違うんだ?」

俺はその意味を確認することにする。


「あの船がもし海賊船だったとしても、静かすぎると思わない?」


「俺たちが乗り込んでくるのを待っているのではないか?」


「ううん、それにしても、甲板に誰もいないのはおかしいと思うんだ。」


「・・・確かに。一人ひとりぐらいはこちらに助けを求めるようなふりをする者が甲板にいてもおかしくはない。」


「じゃあ、あの船は一体何なの・・・?」

ラズリーが自分の腕をさするような仕草をする。


「分からない。けど、あんな不気味な船に・・・。それを調べに行くのはボクは御免だ・・・。」

レティは、目の前で不規則にただ揺れるだけの船から目を背けた。




「―お嬢様、お待たせしました。」

振り返ると、ソフィアが戻って来ていた。


「ソフィー、どうだった?」

ラズリーが少し上ずった声で言う。


「船員に聞いても、やはり分からないようです。はっきりしているのは、あの船からは今もまだ救難信号が発し続けられていることぐらいのようです。」


「・・・そう。でも、見た感じ、人気(ひとけ)がしないわ。何か聞いている?」


「―はい。救難信号だけ発せられていて、人の気配がしないということは、船員も気が付いていたようです。あんな奇妙な船は見たことがないと申しておりました。」


そして、更に不気味なことに、遠くから見た時には、船に明かりが灯っていたように見えたが、今はその船に明かりは灯っていないようだった。俺たちが目にするのは、一隻(いっせき)の真っ暗な船が不気味に海に揺れる様子だけである。


「・・・アレ、さっきまで明かりが灯いていたよね?」

レティがそのことに気が付く。


「―ああ。少なくとも、俺たちの船に接近する時には明かりが灯っていたように見えたが。」


―そうだ、魔眼を使ってみよう

あまりのことに圧倒されており、自分にはその内部をある程度探る手段があったことをすっかり忘れていた。おそらく今は、俺の魔眼の射程距離の範囲のはずだ。



「・・・」


しかし、どれだけ魔眼で確認しても、問題の船からは人の反応を示す反応はない。つまり、仮に俺の魔眼の射程距離の範囲外でなければ、あの船に何の生命体もいないことになる。


そして、むしろ、その後ろにある海賊船と思われる船からはかなりうっすらとであるが、人の反応がいくつかある。おそらく距離が遠いためにぼやけて見えるだけで、これについてはもっと近づけばかなりはっきりと反応を見ることができるだろう。



―ということは

あの問題の船には実際に人が一人もいないということになる。


つまり、誰も乗客のいない船が救難信号を発しながらわざわざここまで航行し、そして俺たちの航路の目の前で船を停止させたということになる。



「・・・幽霊船・・・なのかしら?」

ラズリーが声を震わせる。


それは俺たちが薄々、その可能性があるのではないかと思い始めていたことだった。

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