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迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
4部 たゆたう波音 10章 波間にたゆとうもの

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12話

「――お頭、あの船なんかどうです?」

双眼鏡を覗く髭面の男が声をかける。


「どれ?見せてみろ。」

お頭と呼ばれた若い男は、髭面の男から双眼鏡を奪い取るようにし、それを覗き込む。


「―ああ、いかにもって感じだな?」


男が見たのは、一隻(いっせき)の大型船である。しかし、見た感じ装備はしっかりしていると感じられるものの、目立った砲台などはなく、客船であることが分かる。


だが、油断は禁物である。この世界には、たとえ砲台がなくとも、魔法という存在があり、下手をすれば一発(いっぱつ)の魔法が船すら沈没させる場合があるのである。


「魔法使いが乗っている可能性は?」

男は双眼鏡を髭面の男に返し、念のため聞く。


「そりゃもちろんありますよ。ですが、虎穴に入らずんば、でしょう?」


「当然だ。旗はどこの国のものだ?」


「旗は—、何ですかね、ここからは良く見えない・・・。ですが、きっといい所の客船でしょうぜ。」

髭面の男が双眼鏡を覗き込みながら言う。


「よし。やるぞ。夜に紛れて襲う。」

男は低い声で、しかし確かな声でそう言う。


「アイサー!」

そう言うと、髭面の男は甲板のドラをけたたましく叩く!


ジャンジャンジャン!!!


すると、下からわらわらと男たちが甲板へと集まって来た。


「どうしたんですかい!?」

下から上がって来た男の一人が言う。


「―ああ。いいカモが見つかったんだ。」

お頭と呼ばれた男はニヤリと笑いながら言った。





「―幽霊船?」

食事時、何やら不穏なことをレティが言い出したので聞くことにする。


「そ!!出るんだってえ?」

手をわちゃわちゃさせながらレティが言う。


「レティ、何だその手は。」

手つきが何やらいやらしい。


「え?何って、お化けだよ?」

何でもないというようにレティが答える。


「レティ、それじゃまるでいやらしいお化けじゃない。」

ラズリーが呆れたように言う。


「そんなものがいれば是非ともお目にかかりたいものだ。」

目を細めて言うのはハーヴェルである。


「やめてよね、幽霊船だなんて。」

文句を言うのはプリムである。


アウグスタはこちらに目もくれず黙々と飯を食っているし、ソフィアは静かに成り行きを見守っている。


今、俺たちは、アルトリウスの皆で集まって夕食を食べているところだった。そして、アイリスの平和な旅ね、という何気ない一言にレティが反応して、幽霊船などと言い出したのだ。


「馬鹿馬鹿しいわ、レティ。本当に幽霊船がいるのなら、こんな航路を通過しないはずよ?」

アイリスがレティを咎めるように言う。


「ボクもそう思うんだけど・・・。見たって言う人がいるらしいんだよねえ。」

レティは特に悪びれもせずそんな風に言う。


「大体、幽霊船なんかに出会いでもしたら、私たちじゃどうしようもないわ?」


「そこは・・・。ラズリーが何とかしてくれるって!」


「―私に何をしろと言うのよ?」


「固定砲台でドカーンって!!!」

手を大きく広げ、どかーんという仕草をするレティ。


「・・・」

ラズリーがちらっと俺の方を見る。が、生憎(あいにく)、俺の魔法はそんな性質(タチ)のものではない。


「まったく、その男に何を期待すると言うんだ?」

ハーヴェルが厭味ったらしいことを言う。ラズリーが俺の方を見たことに気が付いたのだろう。


「―そんなの、やってみなければ分からないじゃない??」

珍しく喧嘩腰のラズリーである。


「だとよ?」

ニヤニヤしながらこちらを見るハーヴェル。


「―フン。幽霊船など、俺のサンダーボルトで海の藻屑にしてくれよう。」

俺は拳を固く握りしめて宣言する。


きっと幽霊船がボアくらいの強度なら可能かもしれない。


「——呆れた。あなた、本当にできると思ってるの?」

馬鹿にするようにして俺に言うのはアイリスである。


「無論だ。」

まったくそんなことは思わないが、あからさまにみくびられるのも癪に障る。


「ねえ、ラズリー様。イシュバーンを護衛にするのはどうかと思うよ?」

プリムがストレートに酷い事を言うが、


「えっとね・・・?。」

困ったような顔をするラズリーだった。

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