表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迅雷のイシュバーン ~転生した悪役貴族は覇道を目指す (悠々自適にスロ―ライフを送りたいだけなのだが!)~  作者: ねこまじん
4部 たゆたう波音 10章 波間にたゆとうもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

196/210

10話

ボーーーー


汽笛の音が聞こえる。辺りには潮風の香りがふんわりと漂い、海へ来たのだと実感する。


今、俺は港へとやってきていた。



今いる場所は、ベリーズ港である。この港は、山岳部に囲まれているエルドリアの西にあり、そこだけがちょうど海に接している。エルドリアから他の大陸や島に渡る場合、この港から船を使うことがほとんどであるようだった。


今回のショートステイについては特に引率などはないが、船は一般的にエルドリアから出るものと同じものを使うらしい。


―海を渡るのは初めてだな?

俺にとって、海を渡るのも、エルドリア国外へ出るのも初めてのことである。



「――イシュバーンは海を越えたことがあるの?」

ラズリーがそよそよと風になびく髪を押さえながら、声をかけてくる。


「いや、ないな。海を渡るのも、エルドリア国外へ出るのも初めてのことだ。ラズリーはどうなんだ?」


「私は今回で二度目かしら。ソフィーも二度目よね?」


「はい、お嬢様。」


公爵令嬢の割には少ないと思ったが、逆に公爵令嬢だからこそであるのかもしれない。



「——みんな、準備はいいかな? もうそろそろ乗船できるって!」

そう言うのはレティである。つい先ほどまで、船員に皆の分の船のチケットを見せていたところだ。


「・・・ハーヴェルが見えないようだが?」

今回のショートステイには、魔法学院の推薦によってハーヴェルが参加することになっている。おそらくは、プリムとアイリスも参加することになるだろう。


「あれれ?さっきまでいたはずなんだけどなあ?」

レティは辺りを見回して、


「あ!いたいた!おーい、ハーヴェル!」

どうやら、前から見た船の姿を見るために、俺たちがいる乗船場から、すこし離れた船の前方に回っていたらしい。



そして、アルトリウスからは、ハーヴェル以外にももう一人、魔法学院から推薦されて参加する者がいる。


「・・・」

何を言うでもなく、船を見上げている男と、その付き添いのメイドが二人。


―こいつは、何を考えているのかよく分からない所があるからな

その男はチラッとこちらを見て、再び船を見上げる。


そう、アウグスタである。

この男が喋るところを俺はほとんど見たことがなかった。


「さあ、船に乗りましょ!」

ラズリーが声をかけてくる。いつの間にか乗船時間が来ていたらしい。


「―ああ。行くか。」

そうして、俺たちは船の中に乗り込むことにした。



乗り込む船の名前は、メリー号という船である。ありふれた名前であるが船はかなり大きく、内部は豪華な造りになっているようだった。


客室もそれぞれの人数に応じた個室が設けられているようである。ラズリーとソフィアは少し大きめの二人部屋、俺とレティは少し狭い一人部屋の個室、ハーヴェルとアウグスタはそれぞれ三人の大部屋のようだった。


あまり他人の関係については興味はない。しかし、男女同部屋ということは、もしかすると既にそういう関係であるのかもしれない。



船に乗り込むと、ひとまずそれぞれの部屋に行くことにする。今回は個室ということもあり、俺の宿泊する部屋は、ラズリーとソフィアの二人部屋の隣というわけではないようだった。


―ガチャ

自分の部屋の扉を開ける。


すると、大きな窓から見える外の景色が目に入って来た。ちょうど桟橋を見下ろす形である。出発すれば大きな海をここから眺めることができるだろう。部屋についても手狭であると聞いていたが、特にそんな風には思わない広さである。


「・・・これは、少し楽しみではあるな。」

思わず独り言が出る。


今回は船の中で二泊ほどするらしいが、それなりの部屋で、しかもこのように大きな窓から外を見ることができるとなれば退屈はあまりしないだろう。


部屋の中に入って、まず持ってきた自分の荷物をチェックすることにする。

今回持って来ているのは、いつものポーションとマナポーション、そしてお決まりのズタ袋である。


ズタ袋の中には、退屈しのぎの本や、水袋に茶葉、そして今回特別に持ってきた秘密のスペシャルアイテムが入っていた。このスペシャルアイテムを使うことはないだろうが、備えあれば何とやら、と言うからな?


俺はどことなくウキウキとした気分で、秘密のアイテムを装着することにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ