5話
「セルペタ??」
いつものように屋上で俺たちは飯を食っている。最近少し肌寒くなってきたかもしれない。
「ああ。実はな、オルビス都市国家群セルペタのコルティスという騎士学院まで短期で留学するのはどうか、という話があるんだ。――ラズリーがな。」
「なんだ、イシュバーンは関係ないんじゃないか。」
ルディが、もそもそとサンドウィッチを食べながら呟く。
「そりゃあな。だが、ラズリーが招待されるということは、俺はそのおこぼれに預かることができる。」
俺は胸を張る。
「・・・イシュバーン、それ胸を張って言う事なのかよ?」
呆れた様子で言うルディ。その口からはサンドウィッチのかけらがポロポロとこぼれている。
「そりゃあな。俺の日頃の行いというものだろう。」
「―はいはい。でもレティと一緒に行くことになるのかあ。いいなあ。」
「ルディよ、お前にはエミリーがいるではないか。何を言っているんだ。」
おかげで前の合同ダンジョン探索ではエライ経験をした。
「エミリーとは仲良くやっているよ。」
ルディはつまらなさそうに言う。
「何だよ、また何か問題があるのか?」
「・・・おっぱい。」
ルディがぼそりと呟く。
「・・・」
確かに、レティは身長の割には素晴らしいものを持っているとは思う。
俺はルディの顔をまじまじと見る。
「・・・何だよ、イシュバーン。」
ルディがジト目でこちらを見る。
「・・・いや、その目をしたいのは俺の方だ。」
だが、俺の記憶が正しければ、エミリーもそれなりのものを持っているはずである。
「おまえ、巨乳好きだったのか?」
逆にジト目でルディを見る。
「そ、そそ、そんなことはない!」
大きな声で否定するルディ。
「まったく、お前の頭の中はどうなっているんだ。煩悩で満ち溢れているではないか。」
「イシュバーンはおっぱいが嫌いなのかよ!?」
「・・・まあ、嫌いではない。」
俺もまたルディと同じようなものであった。
ということが昼にあり、俺は思わずといった様子で深く呟く。
「―煩悩に満ち溢れた二人であった。」
「はあ???」
ハーヴェルが言う。その顔には何を言っているんだコイツは、と書いている。
「いや、何でもない。」
俺は遠くを見つめて言う。
「ハーヴェル、気にしちゃダメよ。イシュバーンはいっつも変なんだから。」
プリムが呆れたように言う。
「おっと。いつの間にか現実逃避をしていたようだ。」
放課後、さて帰るかと準備をしているところに、ハーヴェルたちに呼び止められたところである。
「まったく、何が悲しくてお前たちと話さねばならんのだ。」
「しょうがないだろう。お前も短期留学に参加するのだろう。」
ハーヴェルがそう言って何かの書類を渡してくる。
「ねえ、ハーヴェル。早くして。こんなところに居たくないわ。」
さりげなく酷い事を言うアイリス。
「・・・これは何だ?」
俺は書類を手に取って言う。
「面倒なことに、レグルス学院長にこれをお前に渡すように言われたんだ。」
ハーヴェルから手渡されたものはなんて事はない、手続き申請書である。
「こんな書類ぐらい、ガレリアに渡しておけばよいものを。」
ガレリアとは俺たちのクラス担任のことである。
―レグルスも回りくどいことをやる。何か意図があるのだろうか?
「俺もそう思ったんだが。学院長からは妙なことを聞かれたよ。」
「妙な事??」
「ああ。模擬戦で魔法剣を外したようだが、それは意図したことか、とな。」
―ああ、そういうことか
俺はレグルスの意図を何となく察する。
「それで?お前はなんて答えたんだ?」
「確実に当てたと思ったが、わずかに外してしまったようだ、とそのまま答えたよ。次は外すつもりはないと言うと、頑張れだとよ。あのレグルスという学院長もふざけた奴だ。」
不機嫌なハーヴェルだった。




