3話
合同ダンジョン探索から戻ってきて、これからのことについて考える。
―ショートステイか。それも、騎士学院コルティス
騎士などとは本来無縁であるが、こういった話もラズリーの護衛をしていてこそであろう。
―もしかするとハーヴェルもパーティメンバーに選ばれるのかもしれない
おそらく、何人か魔法学院アルトリウスから向かう者がいるだろう。そして、その中に魔法学院きっての強者であるハーヴェルが選ばれないというのは考え難いことだ。
―とはいえ、ハーヴェルが選ばれたからといって特別何かあるわけじゃあない
ハーヴェルやそのパーティメンバーには、極力近づかないようにしている。仮にハーヴェルが参加することになったとしても問題はないはずである。
エルドリアの外にどのような世界が広がっているのか実際に目にしたことがほとんどない上に、また俺の性格上、このような機会でもなければ国外にわざわざ出かけたりはしないだろう。
―っと。あのダンジョンを抜けた先に行ったことがあったんだっけか
忘れかけていたが、一度だけ、ダンジョンの中を潜り抜けてエルドリア国外に出たことはあったのだった。次のイベント前に、あの場所へ一度は行っておくべきだろうか?
「確か、魚が美味いと言っていたよな?」
おそらく短期留学までにはまだ時間があるだろうから、その前にあの場所へ行き、その魚を以て、ヘイム家の使用人を労うのもよいかもしれない。
「——よし、決めた。魚をとってくるぞ。」
とはいえ、魚をあの場所から運ぶためには、何か工夫が必要である。できれば固形の保冷剤などがあればよいのだが。
「婆や、いるか??」
俺はその週の休みの日に、いつもの金物屋に来ていた。
「―おや、イシュバーンかい。今日は何の用事だい?」
「ああ。醤油と保冷剤を探していてな。」
「ショーユと保冷剤ねえ。確か・・・。」
そう言って婆やは帳面を見る。おそらく仕入れ台帳だろう。
「保冷剤はあるけど、ショーユはないねえ。」
「醤油を知っているのか?」
「もちろんさ。魚でも獲ってくるつもりかい?」
「ああ。ちょうど魚を獲る予定があるんだ。」
本来は炊き込み飯のためにソフィアから依頼されているものであるが、魚を獲る予定があるので丁度良い。
「ちょいとお待ち。保冷材は・・・確か・・・。」
そういうと、婆やは店の奥に行ってしまった。そしてしばらくしてまた戻ってくる。
「―ほら、保冷剤。いくつ必要なんだい?」
「五つぐらいあれば足りると思う。」
「五つね。・・・大銅貨五枚だよ。氷冷庫に入れると、何回か使えるはずさ。」
氷冷庫とは、魔石で動く冷凍庫のことである。離れにもあったはずだ。
「醤油の方はいつぐらいになる?」
「ヒッヒッヒ・・・。来月までには取り寄せることができるだろうさ。」
「分かった。醤油の方も取り寄せを頼むよ。」
そう言って俺は銀貨三枚を婆やに渡す。
「それじゃ、また来とくれよ。」
俺は保冷剤を受け取り、金物屋を後にする。
離れに戻って来た俺は、氷冷庫の状態を確認するが、どうやら魔石が設置されていないようだ。
「魔石は、あのジャイアントスネイルから取ってきた物があったよな?」
俺は自室へ行き、棚を開ける。ダンジョンで収集した魔石は自分の部屋の棚の中にしまっていたのだ。
「―さて、これで動くかどうか。」
氷冷庫の形は見慣れた冷蔵庫とあまり変わらないが、コンセントがない。代わりに、裏におそらくは魔石を入れる場所であろう部分が存在し、またスイッチらしきものがある。
俺はその部分に魔石をセットしてみるが、どうも魔石はぴったりとははまらないものの、その部分に入れることができる大きさではあるようだ。
―スイッチをオンにすると
スイッチのようなボタンを押してみると、ブンっという音が聞こえた。氷冷庫の起動に成功したらしい。俺は少しの間、氷冷庫の中に保冷剤を保管しておくことにした。




