20話
「―ふう。」
湯船に浸かっているいると、ガラリと浴場の扉が開く。
誰かと思えば、ハーヴェルだった。
―そういえば、今日がエミリーのイベントだったな
あんな訳の分からないオッサンと戦っていたため、本来の起きる予定の出来事が何であったかをすっかり忘れるところだった。
ゴブリンソルジャーはあのオッサンに一刀両断されていたが、別のゴブリンソルジャーがいないとも限らない。
「誰かと思えば。ハーヴェルではないか。」
俺は湯船からハーヴェルに向かって声をかける。
「その声は・・・。やはりお前か、イシュバーン。」
ハーヴェルがこちらを振り向いて言う。
俺自身は特にハーヴェルに用事があるわけではないが、向こうはそうでもないらしい。
「まさかお前が参加するとは思わなかったよ。お前のような男が何の用があるというのだ?」
相変わらず嫌味な野郎である。だが、それは向こうも同じように感じていることだろう。
「貴様には関係ないだろう?」
「——お前程度の男が公爵令嬢の護衛など。ふざけたことをせずに帰ったらどうなんだ?」
「生憎と、仕事なものでね。」
「ひどい事件に巻き込まれたのは可哀想だが、それでもただ通りがかった男に護衛を任せるとは、更に気の毒な話だ。」
「ならば俺ではなく、ラズリーに言ってやったらどうだ?」
「ふん。あの御令嬢は俺の話は聞かんだろうな。」
「くく。天下のハーヴェルでも公爵令嬢には相手にされんか。」
「馬鹿を言え。あの御令嬢に見る目がないのだ。」
確かに、ハーヴェルは更に強くなるが、俺も負けてはいないはずだ。
俺自身については何を言われようが特に気にはならない。しかし、何故かは知らないが、今のハーヴェルの台詞は聞き捨てならなかった。
「―ぬかせ。俺がお前程度に負けるとでも?」
俺は風呂から立ち上がる。
「やるつもりか、イシュバーン。―受けて立つ。」
俺とハーヴェルは正面を向き合って対峙する。
だが、俺はハーヴェルのある一点が気になった。
勝ち誇ったような顔をするハーヴェル。
だがしかし!
「―フッ。」
俺はある一点を見つめてニヤリと笑う。
俺のも平均的なサイズで必ずしも大きくはないが、ハーヴェルのよりは少しばかりご立派なはずだ。
ナニが、とは言わない。
「―貴様!!!!」
ハーヴェルがさっと両手でその場所を隠し、顔を赤くする!!
だが、そんなナリであれば、たとえ俺がサンダーボルトしか使用できなかったとしても、ハーヴェルに勝つことができそうである。
「・・・そんなモノではアイリスやプリムを充分に満足させることはできないのではないか?」
「う、うるさい!!俺と彼女たちとは、そそそ、そういう関係ではない!」
「そうか?違うのか?なら本人たちにそのように伝えておくとしよう。」
「——ち、違う!!!」
「まあ、どっちでも構わんが。―そろそろのぼせそうだ。俺は出るぞ?」
「ま、待て、イシュバーン!!」
浴場を出ようとした俺にハーヴェルが後ろから声をかける。
「―なんだよ?」
俺は振り返ってハーヴェルに言う。
「——この卑怯者め!」
「・・・聞こえんな?」
そう言ってサムズアップをし、俺はニヤリと笑った。
カンカンカン!!!
ゴングの音が響く。どうやらハーヴェルとの第三試合も俺の勝ちのようだ。
そのまま俺は宿の自分の部屋に戻って来た。
―ポカポカしていい気分だ
やはり大きな浴場でゆっくりと体を温めるということが、昨日の傷を癒すようだった。
「―さあ、もうひとふんばりだ。」
まだ本来のイベントが残っているかもしれない。
「―ていうか、アレがまだあの場所にいる可能性があるのか。」
すっかり失念していた。あんなものがこの世界に解き放たれてしまうと、どんな影響があるか分かったものではない。
―とはいえ、元の世界に帰ってくれと言うか・・・
『——良かろう。では力ずくで参れ。』
などと言われた日には、途方にくれてしまうだろう。
「はあ・・・。まったく、どこの誰だよ・・・・」
―あんなものを呼び出したのは




